「実体経済」って何? 経済アナリストがわかりやすく解説

年始から日本の株式市場は好調で、日経平均株価はバブル崩壊後の高値を更新し、史上最高値を記録しました。今年から新NISAがはじまったこともあり、メディアでも投資を推す内容の報道が増え、SNSや動画でも投資によって資産が増えた人の報告を目にします。しかし、株式市場が好調なのに生活実感が向上した印象はなく、実体経済と株価が乖離しているという指摘も多く見ます。そもそも実体経済とは何か。今回はその点を学んでいきましょう。

日経平均株価とは?

よく「株価が好調なのに生活実感は向上していない」という指摘を目にします。そもそも、日本人が株価という場合、日経平均株価を指していることが多くあります。では、日経平均株価とはどのような指標なのでしょうか。

総務省が発表した「令和3年経済センサス-活動調査」を見てみると、2021(令和3)年6月1日現在の企業等の数は約368万企業、民営事業所数は約516万事業所、従業者数は5,795万人となっています。日本取引所グループのデータに基づけば、2024年2月末時点で証券取引所に上場している会社数は3,930社です。そして、東京証券取引所プライム市場に上場している会社から選定された225社の株価から算出しているのが日経平均株価なのです。上場企業の中から225社を選ぶ際には市場流動性の高さや、業種のバランスなどが考慮されますが、ざっくりと言えば、上場している企業の中のオールスターと考えてもいいかもしれません。そして、株価というのは各社の将来的な業績予想に基づいて市場で決まっていくものです。

つまり、日経平均株価の調子が良いというのは、日本企業のオールスターの業績に対する投資家の期待が高まっていることといえるでしょう。

日本株が強い理由

年始から日経平均株価が20%近くも上昇している理由はいくつかあります。1つ目は、日本が長年苦しんできたデフレ経済から脱却するかもしれないという期待感です。株価は業績への期待と書いたばかりですから、経済の話は関係ないと思われるかもしれませんが、そもそも企業がビジネスをしていくうえでの前提条件となるのがマクロ経済です。ここが改善されることは、日本企業の業績には追い風となるのです。

2つ目は、やはり日本企業の業績が拡大していく期待感です。なぜ業績が拡大していく期待感があるのかというと、円安によって多くの輸出企業の業績が押し上げられたり、値上げの浸透によって売り上げが伸びていくことが期待されているからです。

3つ目は中国経済の調子が悪く、あわせて株式市場も軟調であることが挙げられます。日本の株式市場には関係がないように思うかもしれません。しかし、グローバルに運用している機関投資家からすれば、アジア地域に振り分けようとしている投資資金のうち、中国から引き上げた資金は同じくアジア地域のどこかに投資をしようと考えます。経済規模で見ても中国の次は日本ですから、中国が不調になったことが結果として日本への海外資金の流入を加速させたともいえるのです。

実態経済の現状

さて、日経平均株価の意味と日本の株式市場が好調な理由を見てきました。それでは、その株価と乖離しているという実体経済とはどのようなものでしょうか。実体経済とは自分を含めた自身の周りの経済環境でしょうから、自分や周りの生活が豊かになっているかどうか、という判断によるものでしょう。

とはいえ、自分がどう思うか、というのはあまりにも属人的な話となってしまいます。そのため、経済指標を確認することがよさそうです。それでは、まず給料に関する指標を見てみましょう。厚生労働省が発表した2024年1月の「毎月勤労統計調査」によれば、物価の変動を反映した実質賃金は前年同月比-0.6%と減少しています。実質賃金がマイナスとなるのは22ヶ月連続です。つまり、かれこれ2年近くは給料の伸びが物価の上昇速度に追い付いておらず、実質的には生活が苦しいということです。

実際に総務省が発表した2024年1月の「家計調査」によれば、2人以上の世帯が消費に使った金額は物価の変動を反映した金額が前年同月比-6.3%となり、11ヶ月連続でマイナスとなりました。減少率は2021年2月以来、2年11ヶ月ぶりの大幅な落ち込みとなっています。たしかに絶好調な株価とは真逆の印象を受けますね。

政府の役割とは?

ここまでの話をまとめてみましょう。日本人がいう株価とは日経平均株価を指すことが多く、その指標は日本の企業のオールスターの業績に対する期待が表れるものと説明しました。一方で、実体経済は自分や周りの生活状況を表すものと説明しました。つまり、そもそも株価と実体経済は比較するものでもなく、乖離をしていたとしても何もおかしくはないということです。

3月の参院予算委員会で、日経平均が初めて4万円を超えたことに対してマーケット関係者が政策をポジティブに評価していると岸田総理が述べていますが、私はこの認識は間違っていると思います。企業業績を向上させて、結果として株価を上げていくのは経営者の仕事であって、実体経済を改善させていくことが政府の役割です。

これまで見てきたように、株価が好調で実体経済は不調という相反する現状を見るに、政府は株高を誇らずに、実体経済が不調であることに責任を感じるべきでしょう。

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