2024年の賃金・物価・経済成長率はどうなる?経済アナリストが今年の動向を予想

2024年が始まりました。石川県能登地方で大震災が発生し、羽田では航空機事故が起き、中東では米国と英国がイエメンの反政府勢力フーシ派の拠点を空爆するなど、年明けから国内外で多くのニュースが流れています。今年は世界中で選挙も行われるため、激動の1年となるでしょう。それでは、経済の観点から昨年を振り返りつつ、2024年がどのような年になるかを考えていきましょう。

スタグフレーションか、デフレか

2023年の日本経済を一言で総括するのであれば「物価高」とする方が多いかもしれません。これまで日本は他国に比べて物価が上がらないと考えられていましたが、そんな日本でも1年間で4%近く物価は上昇しました。あまり経済に興味関心がなかったとしても、多くの方が日常生活の中で物価高を実感したのではないでしょうか。

2024年も相変わらず物価高は続くと予想する専門家は多いですが、私は物価上昇は収まると予想しています。正確に言うと、2023年ほどの物価上昇率は記録しないものの、景気が良いわけではないのに物価だけが上がる「スタグフレーション」が続くと予想します。

しかし、2024年に政府が誤った財政政策をとったり、日本銀行が誤った金融政策をとったりすれば、スタグフレーションの後に再びデフレに回帰する可能性までも視野に入れるべきと考えています。世界的にインフレが問題になっているなか、日本がデフレに回帰することはないと思う方は多いかもしれませんが、すでにその気配は出てきています。

日本の企業物価指数は、執筆時点の最新の値で前年同月比+0.3%まで伸び率が縮小していますし、最大の貿易相手国である中国ではすでに生産者物価指数も消費者物価指数もともにマイナスの伸び率を記録しています。

冒頭に触れたイエメンに対する空爆を受けて原油価格は少し上昇しましたが、それでも空爆前は1バレル=70ドルを割る寸前まで価格が下落しています。仮に日本銀行が金融緩和を解除する一方で、米国FRBが利下げをして両国間の金利差が縮小することで為替が円高方向に動けば、それもまた日本にとっては物価下落の圧力となります。

賃上げは期待できるが課題もある

2023年のもう1つの経済的なトピックに「賃上げ」が挙げられます。厚生労働省が発表した2023年「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によれば、賃上げ率は3.60%となっており、1994年以来の3%台を記録しました。

年明けに行われた経団連を含む経済3団体の会合においては、すでに多くの大企業が2023年を超える賃上げを表明しています。2024年の春季労使交渉において、経団連は2023年の大手実績である3.99%を超える賃上げ水準をめざしています。円安を背景に利益を伸ばした大企業にとっては、2023年以上の賃上げを実施することは可能でしょう。

賃上げは日本経済にとってはプラスですが、課題もあります。それは中小零細企業が同様の賃上げを出来るかどうか、ということです。中小零細企業も昨年は大企業同様に賃上げをした会社は多くありました。しかし、価格交渉力がないためにエネルギー価格や素原材料の価格高騰をうまく価格転嫁できないなかで人件費を上げたことにより、体力を奪われてしまった企業も多くありました。一方、人件費を上げないという選択をすれば、今度は人が抜けていってしまうという展開が待ち受けています。

帝国データバンクの発表によれば、人手不足の影響による2023年の倒産件数は前年に比べ86%も増加したということです。労働者の7割は中小零細企業で働いているため、いかに無理なく中小零細企業も賃上げの波に乗れるか。ここが1つの大きなポイントになるでしょう。

政策が重要になる局面

2024年は日本経済にとっては非常に重要な1年になると思います。前述のように政府と日本銀行が政策を誤らなければ、悲願のデフレ脱却を達成し、賃金も幅広く上昇していくという他国では普通の光景がようやく日本にも戻ってくると思います。しかし、このタイミングで国民の負担が増えるような増税の実施や、控除などを減少させるような財政政策、拙速な金融緩和の解除からの利上げという金融政策がとられてしまえば、前述のようにスタグフレーションからのデフレ回帰という最悪なシナリオも見えてくると考えます。

今年は台湾、米国などをはじめ、多くの国で選挙がある人類史上最大級の選挙イヤーです。世界中で多数の人が有権者として国のリーダーを選ぶことになりますが、当然そのなかで多くの政治的なイベントも起きるでしょうし、未だに終戦の兆しが見えないロシア・ウクライナ戦争やイスラエル・ハマスの戦争もあり、中東においては戦火が拡大していく可能性もあります。

このように、外部環境が不透明であるからこそ、せめてコントロールが可能な国内の政策においては、誤った判断をすべきではないのです。

経済成長率の見通しは不透明

昨年、政府が来年度予算案の前提となる経済成長率の見通しを持ち回り閣議で了解しました。それによると、物価の変動を除いた実質ベースで前年比+1.3%程度の成長を見通しているということでした。内訳を見ると個人消費が1.2%伸びるとなっていますが、私はこの点についてはやや懐疑的です。

厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査によると、実質賃金は前年同月比-2.5%となっており、かれこれマイナスの伸びが20ヶ月も続いています。総務省が発表した家計調査を見てみると、実質消費支出は同-2.9%となっており、すでに消費も9ヶ月連続でマイナスとなっています。

私自身もスーパーで買い物をしていると、プライベートブランドや値引き品ばかりが売れている印象を持ちます。日本の国内総生産(GDP)の半分は家計の消費によって構成されているため、この消費が弱くなるということは経済全体の下押し圧力となります。

前述の通り、今年は物価上昇は落ち着くと考えていますから、やはり政策で個人の負担を軽減すれば、消費を下支えすることで経済成長を後押しすることが可能かと思います。今年は経済指標というデータだけではなく、経済政策にも注意を向けるようにしましょう。

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