【ARUHIアワード12月期優秀作品】『本当はダメなサプライズ』梶原匠平

そして妻に渡して「私と結婚してくれてありがとう。ロマンチックな場所じゃなくてごめんね」と言った。
妻は驚いていた。実は妻はいわゆるサプライズと言うものが苦手なのだ。サプライズで何かをされたときにきちんとリアクションが取れないから相手をがっかりさせてしまう、と前に言っていたことがあったので、私もサプライズは控えていた。
だが今日は結婚記念日なんだからこれくらいは許されるだろうと思い「苦手って言ってたサプライズでごめんね。受け取ってほしいな」言った。すると妻の目から涙が流れてきた。え?そんなに嫌だったの?と思いどうしようかと思っていると「こんなのもらえるなんて思ってなかった。ありがとう」と言ってきた。
続けて「リアクション取れないからサプライズは苦手だって言ったのに」と私に言ってきた。なので私は「その涙が何よりのリアクションだよ」と返した。
妻は自分が泣いているということに気づいていなかったかのように驚いた顔をしていた。
私は「ちなみにキキョウの花言葉は「永遠の愛」だよ。結婚記念日にはぴったりでしょう?」と言った。
すると妻は泣き顔なのに笑いながら「私だってキキョウがなくても永遠にあなたを愛してるんだからね」と言ってきた。
今日はいい結婚記念日になったな、なんて思いながらお会計を済ませて帰ることになった。
家に着くと妻がキッチンのあたりで何かをしている。なんだ?と思い「どうしたの?」と聞くと妻は「なんでもないからリビングで座ってて」と言ってきた。妻の行動を不思議に思いながらも言われた通りリビングで座っていると妻が何かを持ってきた。ん?と思っていると妻が「私からの結婚記念日祝いだよ。ケーキを作ってみたの」と言った。
えぇ?ケーキ?確かに結婚記念日なんだから祝い事ではあるけど・・・なんて思っていると妻が「私からの日ごろの感謝の気持ちだよ。一緒に食べましょ?」と言ってきた。なので私は「あ、あぁ」と力のない返事をして妻の持ってきたフォークを手に取り、ケーキをいただくことにした。ケーキを食べてみるとおいしかった。
さすがにおいしいくらいは言わないと失礼だよな、と思い妻に「すごくおいしいね」と言うと妻が笑顔で「良かった。ケーキなんて初めて作ったから味は少し心配だったの」と言ってきた。
なので私は意地悪く「あれ?今日はチャレンジはしないんじゃなかったっけ?」と言ったら妻が「それはさっきあなたが回転寿司屋で言ったんでしょ。私は言ってないもの」と返されてしまった。そりゃそうだけどさぁと思いながらもまぁおいしいんだから良いか、と思い「そうでしたね」と笑いながら返した。すると妻は私を見て「あなたはサプライズ苦手じゃないものね。これは私からのサプライズでした」と言ってきた。
確かにサプライズを苦手だとは言ってないけど・・・と思い妻に「どうだった?ちゃんとリアクション取れてたかな?」と聞いてしまった。
すると妻は笑いながら「ほっぺたに生クリームつけてそんなこと聞くの?」と笑ってきた。そう言われて慌ててほっぺたに触れると生クリームがついている。妻が続けて「そんなことに気づかないくらい夢中だったんでしょ。それだけで十分なリアクションだよ」と言ってきた。これはやられたな、と思った。
そんな感じでケーキを食べながら談笑していると妻が「あ、そうだ。そういえば回転寿司屋さんで私何か変じゃなかった?」と聞いてきた。変なことなんて別に何もなかったよな?と思いながら色々考えていると一つ思い当たったことがある。
あ、そういえば最後の方で回転寿司食べるのを止められたなぁと思い妻に「もしかして・・・最後の方のこと?」と聞くと妻は「そうなの。あなたが腹八分目だって言った時私が食べるの止めたでしょ?」と言ってきた。
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