これからマイホーム購入・売却を考えている方にとって、住宅地の価格動向は気になるところでしょう。毎年3月には、一般の土地の取引価格の指標となる「公示価格」が発表されます。今回は「東京」の住宅地の価格動向を、発表された公示価格から確認してみましょう。
土地の取引価格の指標となる「公示価格」
まず、「公示価格」とはどのようなものか、確認しておきましょう。
地価公示は、地価公示法に基づき、「一般の土地の取引価格の指標等」として公表されているものです。国土交通省の土地鑑定委員会が選んだ標準地について、毎年1月1日時点の調査を行い、価格を判定し、公表しています。2024年の調査では、全国で約2万6,000 地点、東京都では2,602地点が対象となりました。
東京都の住宅地の公示価格は、3年連続上昇
では、東京都の公示価格の動向をみてみましょう。
東京都全域でみると、住宅地については、図表1のように対前年比4.1%と値上がりしていることがわかります。もう少し細かく見てみると、島部はわずかに低下していますが、区部・多摩地区ともに増加しており、特に区部は前年比5.4%と変動率が大きくなっています。
さらに、過去5年の区部・多摩地区の変動率を見てみると、2021年には新型コロナウイルス感染症拡大に伴う経済活動の低下などから区部・多摩地区ともに公示価格の変動率はマイナスになりましたが、その後は、どちらも上昇が続いています。変動率は、多摩地区よりも区部のほうが大きく、年々その差は大きくなっています。
区部と多摩地区、島部で価格には大きな差
そもそも、「東京都」といっても、地域によって住宅地の価格は大きく違い、購入層も違うので注意が必要です。
図表3は、区部、多摩地区、島部のそれぞれについて平均価格をまとめたもので、それをもとにグラフ化したのが図表4ですが、都心5区の平均価格は1平方メートルあたり約166万円と桁違いに高く、続いて「その他区」は約58万円/平方メートル、「北多摩」約30万円/平方メートルと並び、平均価格にも大きな差があることがわかります。
今後の住宅地の売買の参考にするなら、より対象地域に近い地点を探し、価格や変動動向を確認されるとよいでしょう。
次に、区部、多摩地区の地価の変動の動向を確認してみましょう。
区部では、通勤便利な地区の地価が上昇
区部でもっとも地価の上昇率が高かったのは、豊島区(7.8%)。中央区、文京区がこれに続きます。新型コロナウイルス感染症への対応が緩和されて経済活動が正常に戻りつつあり、通勤に便利な地域の地価が上昇していることがうかがえます。
また、都心区やそれに隣接する区では、富裕層を中心にマンション需要が旺盛で、価格の上昇が続いています。区部の高上昇率の標準地の上位は、13%以上の上昇率となり、港区や新宿区、目黒区などの容積率の高い土地※がとなっています。都心部のマンション等の人気がうかがえます。
※容積率の高い土地…容積率とは土地の面積に対する延床面積のことで、地域によって規制されている。容積率が高い土地には、高層マンションなどの延床面積の大きい建物が建築可能。
多摩地区では、住環境が向上した地域などが上昇
一方、多摩地区では、区部ほどの伸びではないものの、「再開発事業及び区画整理事業等により住環境が向上した地域、駅徒歩圏内の接近性が優る利便性の高い地域(令和6年 地価公示価格(東京都分)の概要)」で、上昇傾向が続いています。
経済活動の正常化で、通勤便利・住環境のよい地域の地価が上昇
このように、東京都全域でおおむね地価は上昇傾向にあり、特に区部では、2023年から2024年にかけて、上昇率が高くなっています。新型コロナウイルス感染症への対応が緩和され、経済活動が活発になってきて通勤便利な住宅地の人気が高まる一方、テレワークが続く方は比較的広い住まいへのニーズがあり、住環境のよい地域の人気があるようです。
住宅地の地価が上昇傾向とはいえ、価格帯も上昇率も、東京都内でも大きな地域差があります。これから住宅購入を考える方は、今後の働き方、暮らし方を考えて、「これから住む場所」を選び、公示地価などから、おおまかな予算を考えていかれてはいかがでしょうか。