2024年1月1日時点の土地価格である地価公示価格が発表されました。2024年の住宅地の公示価格は全国平均で2.0%と3年連続の上昇で、バブルが崩壊した1992年以降最も高い伸び率となりました。
マイホームの購入や売却を考えている人にとって、土地価格の上昇は気になります。ここでは、全国の住宅地の土地価格の傾向について、過去5年間の公示価格の推移をもとに解説します。
公示価格とは
公示価格とは、毎年1月1日時点における全国の土地取引などの指標となる価格のことです。国土交通省土地鑑定委員会が毎年3月下旬に発表し、令和6年は全国2万6,000地点で実施されました。
公示価格は公平性の観点から以下のようなポイントで価格を決定します。
① 特殊な事情が取り除かれた自由な取引で通常成立する1平方メートル当たりの価格
特殊な事情とは、土地の形や面積といった土地の形状や利用方法、住み替えやローン返済による売り急ぎなどがあげられます。
② 更地評価の価格とする
建物が建っていると、築年数や建築費用の違いなど、価格の評価が複雑になります。そのため、公示価格はすべて更地価格で評価します。
③ 1地点について2人の不動産鑑定士が別々に現地を調査して評価を行う
現地調査から最新の取引事例や地点間、地域間のバランスも考慮したうえで各々の鑑定士が評価し、最終的に、国土交通省の土地鑑定委員会が価格を決定します。
こうして決定した公示価格はマイホームを購入、または売却をするときの土地取引の指標となる価格です。
過去5年間の住宅地の公示価格の推移は?
2024年の公示価格は全国的に高い伸び率となりましたが、近年の土地価格の推移はどのようなものだったのでしょう。
下のグラフは過去5年間の住宅地における公示価格の推移を表したグラフです。
新型コロナウイルスの影響で、経済活動が止まってしまった令和3(2021)年こそ地価が下がったものの、令和4(2022)年以降は全国、三大都市圏、地方圏、地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)、東京都いずれも3年連続で価格が上昇しています。
令和6(2024)年の公示価格は、東京都が4.1%、三大都市圏が2.8%の上昇と利便性の良い都市部や住環境に優れた地域の住宅需要が堅調で、地価上昇が継続しています。また、地方圏では伸び率こそ前年と同率であるものの、1.2%の上昇となり、全国平均では2%の上昇率と、昨年の1.4%を上回る上昇率となっています。
さらに、注目すべきは札幌市、仙台市、広島市、福岡市の地方四市の上昇率です。2023年1月1日時点で8.6%、2024年1月1日時点も7.0%と大幅な伸び率となっています。
上昇した土地の理由は?
では、なぜ地価は上昇を続けているのでしょう。中でも上昇率が大きかった地方四市の中の札幌市と福岡市を例にもう少し詳細に見てみましょう。
下のグラフは札幌市と福岡市の公示価格の推移です。
札幌市は2023年1月1日時点では15.0%と大幅な上昇率でした。上昇の要因としては、2030年以降に北海道新幹線が札幌駅までつながることから、マンション用地と商業施設の競合が激しくなっていることや、通学や通勤、医療といった住環境や利便性が良好な地域に人口が集中しているといった事情があります。
札幌市中心部の地価上昇は、割安だった周辺地域にも影響してきましたが、2024年1月1日時点では地下鉄駅徒歩圏など利便性の良いマンション用地の需要は底堅いものの、郊外の戸建て住宅は需要が落ち着いており、上昇幅は15.0%から8.4%に縮小しました。
福岡市は2023年は8.0%の上昇でしたが、2024年は上昇幅が拡大し9.6%の上昇率となりました。早良区など中心部の希少性が高い住宅地の上昇が、周辺の割安感を残す地域に波及し価格が上昇していることや、好調なマンション販売に対しマンション用地の供給が少ないことなどが要因です。
札幌市や福岡市に共通する要因としては、買い物や医療、交通といった生活インフラが充実した地域に集中して暮らす、コンパクトシティ化です。地方四市をはじめ、地方であっても県庁所在地など、その地域の中で利便性が高い中心都市の地価が上昇する傾向にあり、これが東京だけでなく、全国の地価を押し上げている一因ともいえるでしょう。
都道府県別の上昇率は?
全体として公示価格は上昇していますが、都道府県別、地域別で見るとどうなっているでしょう。
下図は2023年と2024年の都道府県別の公示価格の変動率を色分けした図です。
2023年、2024年とも三大都市圏や地方四市がある都道府県の上昇率は高く、オレンジ色になっているのがわかります。特に2023年1月1日時点では北海道が、2024年1月1日時点では福岡県が5%以上の高い上昇率となり、ピンク色となっています。
しかし、逆に変動率がマイナスの県も2023年1月1日時点では22県、2024年1月1日時点では17県あります。住宅地で価格が下落した地点は東京圏では5%、地方四市では2%とごく少ない地点でしたが、地方四市を除く地方圏では42%と格差があります。日本全体では3年連続で地価上昇が続いているものの、都道府県別やさらに詳細な地域別で見ると地価の格差が広がっている印象です。
地価の二極化が進んでいる
新型コロナウイルスの影響が薄れ、通勤や通学に便利な東京圏をはじめとする全国の大都市圏では地価の上昇が顕著になっています。特に中央区や港区などマンション用地の需要が高い東京都心部では7%を超える上昇率となっています。しかし、戸建て需要が強い江戸川区や葛飾区、足立区といった地域の上昇率は4%台でした。同じ23区でも都心部や駅近など利便性が高い土地の伸び率は大きく、マンションに比べ駅からの距離が遠いことが多い戸建てのエリアは価格が落ち着きを見せてきています。
地方圏のコンパクトシティ化はさらに顕著です。行政が子育て施策に力を入れている、ショッピング施設や保育施設が充実しているといった地域では地価が上昇し、そこから取り残された地域の価格は逆に下落しています。より住みやすい土地に人口が集中している結果と言えるでしょう。
2024年は全国平均で2%と30年ぶりの大きな公示価格の上昇となりました。しかし、今後は、日銀によるマイナス金利政策解除が住宅ローン金利に影響を及ぼせば、同じ価格でもローンの返済額がアップしてしまい、購入を躊躇する人が出てくる可能性もあります。これ以上値上がりしないうちに購入してしまおうと慌てたり、購入しておけば将来値上がりするだろうと安易に考えたりせず、購入を検討している地域の公示価格の推移を物件選びの参考の1つとして、検討してみてはいかがでしょう。
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