住宅ローンの返済負担を軽減するために、借り換えを検討している方も多いのではないでしょうか。住宅ローンの借り換えをすることで、総返済額の軽減や完済までの期間を短縮できるなどのメリットが期待できます。
しかし、手数料や住宅ローン控除などの細かい点までシミュレーションしないと、最終的に後悔する可能性があるため注意しましょう。
本記事では、住宅ローンの借り換えを行うメリットとデメリット、具体的なシミュレーション結果などを解説します。
住宅ローンの借り換えとは?
住宅ローンの借り換えとは、現在契約しているローンから、他の金融機関が提供しているローンに切り替えることです。「A銀行から、金利が低いB銀行へ借り換える」など、返済負担が軽減できる見込みがあるときに、住宅ローンの借り換えを検討するケースが一般的です。
住宅ローンを借り換えることで、返済負担の軽減や返済期間を短縮できるメリットが見込めます。しかし、安易に借り換えをすると結果的に損してしまう可能性もあるため、注意が必要です。
住宅ローンの借り換えをするメリット
まずは、住宅ローンの借り換えをするメリットから具体的に解説します。
現在契約している住宅ローンよりも有利な条件を提示している金融機関がある場合は、借り換えを検討してみてください。
総返済額を減らせる可能性がある
現在の住宅ローンよりも低い金利に借り換えることで、総返済額を減らせるメリットがあります。一般的に「ローン残高が1,000万円以上・返済期間が残り10年以上・借り換えるローンとの金利差が1%以上」の場合は、借り換えたほうが得をする可能性が高いです。
総返済額を減らせれば、生活にゆとりが生まれます。また、借り換えによって生じた資金を教育資金や老後資金に回すことで、人生の三大支出に備えられるでしょう。
返済期間を短縮できる可能性がある
借り換えの条件次第では、住宅ローンの返済期間を短縮できます。月々の返済額を増やせば返済期間を短縮でき、結果的に総返済額を抑えることが可能です。
住宅ローンの金利負担は、返済期間が短ければ短いほど軽くなります。家計にゆとりがあり、月々の返済を増額できる余力がある場合は、借り換えを検討する余地があるでしょう。
なお、場合によっては借り換えよりも、繰り上げ返済を行ったほうがよい可能性があります。残債や借り換えに関する手数料などを鑑みて、よりよい方法を選択しましょう。
固定金利に借り換えると金利上昇リスクを負わずに済む
変動金利から固定金利に借り換えると、金利上昇リスクを負わずに済みます。固定金利では、市場金利の変動に関係なく月々の返済額が固定されるため、金利上昇局面でも安心感を得られるでしょう。
「今後は金利が上昇する」と見込んでいる方は、固定金利に借り換えることで返済負担が増える懸念を払しょくできます。
ただし、同じ時点で変動金利と固定金利を比較すると、通常は変動金利よりも固定金利のほうが金利は高いです。そのため、市場金利が上昇しなかったら「借り換えて損した」という事態が起こりうる点に留意しましょう。
団体信用生命保険を手厚くできる可能性がある
住宅ローンの借り換えに伴って、団体信用生命保険の保障を手厚くできる可能性があります。金融機関によって、団体信用生命保険の保障内容が異なるためです。
団体信用生命保険は、契約者の死亡・高度障害に備えるのが基本です。しかし、金融機関によっては、がんの診断を受けたときや一定の障害状態に該当したときに返済が免除される保障が含まれています。
借り換えに伴って、団体信用生命保険の保障範囲を拡大できる点はメリットと言えます。場合によっては、現在契約している医療保険やがん保険を解約して、保険料負担を軽減できるケースも考えられるでしょう。
住宅ローンの借り換えをするデメリット
住宅ローンにはさまざまなメリットがある一方で、デメリットも存在します。借り換え後に後悔しないためには、メリットだけでなくデメリットも把握することが大切です。
手数料がかかる
住宅ローンを借り換える際には、一般的に数十万円程度の手数料がかかります。新しく住宅ローンを締結し直すにあたって、事務手数料や印紙代などが必要となるためです。
必要となる手数料は金融機関によって異なるため、借り換えを検討している場合は比較することが大切です。借り換えによって軽減できる返済額よりも手数料のほうが高い場合、借り換えを行わないほうがよい可能性があります。
あらためて審査を受ける手間がかかる
住宅ローンの借り換えは新しい契約を締結することなので、改めて審査を受ける手間がかかります。健康状態や収入状況によっては、審査に通過できないケースや現在よりも条件が不利になる恐れもあります。
他にも、審査や抵当権設定に必要な書類を用意しなければなりません。手間と時間がかかること、審査次第では希望通りの条件で借り換えができない可能性がある点には留意しましょう。
住宅ローン控除が受けられない可能性がある
借り換えの条件次第では、住宅ローン控除が受けられない可能性があります。例えば、住宅ローン控除が適用される条件の一つに「10年以上にわたり分割して返済する方法になっている新築等のための一定の借入金または債務があること」という項目があります。
借り換えた住宅ローンの借入期間が10年未満の場合、住宅ローン控除は受けられないため注意しましょう。
総返済額が減るとは限らない
住宅ローンを借り換えたとしても、必ず総返済額が減るとは限りません。例えば、固定金利から変動金利に借り換えた場合、金利の動向次第では総返済額が増える可能性があります。
また、総返済額を軽減できたとしても「諸費用を含めて計算すると損していた」というケースもあります。安易に借り換えを行うと結果的に損をしてしまう可能性があるため、事前にシミュレーションすることが大切です。
住宅ローンの借り換えで後悔しないためのポイント
結果的に損をしてしまう可能性があるため、住宅ローンを安易に借り換えるべきではありません。
以下で解説するポイントを意識して、借り換えを行うべきか熟考してみてください。
金利差をチェックする
現在契約している金利と借り換えを検討している金利の差は、必ずチェックしましょう。借り換えを行って得をする可能性が高いのは「ローン残高が1,000万円以上・返済期間が残り10年以上・借り換えるローンとの金利差が1%以上」というケースです。
例えば、借り換えによって金利を0.2%下げられたとしても、手数料などを含めて考えるとトータルで支払う金額が増える恐れがあります。
また、よりよい条件で借り換えるためにも、複数の金融機関を比較検討することが大切です。
今後のライフプランを考える
今後のライフプランを考えて、無理なく返済できるかどうか検討しましょう。総返済額を抑えるために月々の返済額を増やした結果、家計が圧迫されるのは問題です。
例えば、住宅ローンを借り換えたタイミングと子どもの結婚式費用を援助するタイミングが重なると、家計が苦しくなる可能性があります。
日本FP協会によると、結婚費用で必要となるお金は約304万円です。いくら援助するかは各家庭によって異なりますが、住宅ローンの負担次第では思うように援助できない可能性があります。
借り換えを検討する際には、家族構成や家族の年齢を鑑みて、大きな支出が発生するタイミングを把握することが大切です。借り換え前後の返済シミュレーションを比較して、家計に問題が発生しないか検討してみてください。
住宅ローンの残年数・残額を確認する
現在契約している住宅ローンの残年数と残額を確認しましょう。ローンの借り換えは、残年数が長く、残高が多いほど総返済額を軽減する効果が高まります。
また、前述したように借り換えの条件次第では住宅ローン控除が受けられなくなる可能性がある点にも留意しましょう。ローンの残年数が短く残額が少ない場合は、借り換えないほうがよいケースもあり得ます。
固定金利と変動金利のリスクを理解する
金利の型を変更する場合は、それぞれのリスクを理解することが欠かせません。例えば、固定金利は返済額が変わらない安心感があるものの、当初の金利は変動金利よりも高くなります。
一方で、変動金利は当初の利率は低いものの、返済額が変わらない保証はなく金利上昇局面において支払い額が増加する特徴があります。
それぞれに一長一短があるため、メリットだけに着目するのは避けましょう。メリットとデメリット、自分の返済能力などをトータルで考えて、適切な金利型を選択してみてください。
住宅ローンの借り換え結果をシミュレーション
具体的に、住宅ローンの借り換えによる具体的な効果をシミュレーションします。
【現在の借り入れ状況】
● 住宅ローン残高:2,000万円
● 借入金利:1.0%
● 残りの返済期間:15年
【借り換え後の条件】
● 住宅ローン借入額:2,000万円
● 借入金利:0.5%
● 返済期間:15年
上記の条件(金利が0.5%低くなる)で借り換えた場合、諸費用を含めると総返済額は10万円~15万円程度軽減します。
【借り換え後の条件】
● 住宅ローン借入額:2,000万円
● 借入金利:0.5%
● 残りの返済期間:10年
上記の条件(金利が0.5%低くなり、かつ返済期間を5年短縮)で借り換えた場合、諸費用を含めた総返済額の軽減効果は35万円~40万円程度です。
【現在の借り入れ状況】
● 住宅ローン残高:2,000万円
● 現在の借入金利:1.5%
● 残りの返済期間:15年
【借り換え後の条件】
● 住宅ローン借入額:2,000万円
● 借入金利:0.5%
● 返済期間:15年
上記の条件(金利が1.0%低くなる)で借り換えた場合、諸費用を含めると総返済額は約90万円~95万円程度軽減します。
借換え後の返済期間を短縮するほど、借換え後の金利が低くなるほど軽減できる総返済額は大きくなることがわかります。
まとめ
住宅ローンを借り換えることで、総返済額の軽減や返済期間の短縮など、返済負担を軽くできるメリットがあります。「ローン残高が1,000万円以上・返済期間が残り10年以上・借り換えるローンとの金利差が1%以上」に該当する場合、借り換えを検討するとよいでしょう。
一方で、借り換えに際して手数料が発生する点や、総返済額が減るとは限らない点には留意する必要があります。
借り換えによるメリットを享受するためには、複数の金融機関を比較検討し、事前にシミュレーションを行うことが大切です。よりよい条件で借り換えるためにも、こちらの記事を参考にしながら、自分に合っている借り換え先を探してみてください。
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