2023年11月29日、政府の2023年度補正予算が成立しました。一般会計の歳出総額は13兆円超で、そのなかに、「子育てエコホーム支援事業」が盛り込まれています。子育て世帯などが住宅を取得する場合は100万円の補助金、中古住宅をリフォームする場合には最大で60万円の補助金が出るため、ぜひ注目しておきたいところです。
予算切れに対応した新たな支援策の実施
2023年度の補正予算に盛り込まれた「子育てエコホーム支援事業」。実は2023年度の本予算で実施された「こどもエコすまい支援事業」の後継事業でもあります。その「こどもエコすまい支援事業」は、2050年のカーボンニュートラル実現を推進するための施策で、当初1,500億円の予算でスタートし、その後1,700億円余りに増額されました。
注文住宅や新築分譲住宅の購入に対しては1戸あたり100万円の補助金、中古住宅を購入してリフォームする場合には、最大60万円まで補助するという制度でした。住宅購入検討者にとっては魅力のある補助金制度で人気が高く、2023年9月末には予算枠に達して受付が終了してしまったのです。このままでは、消費者の住宅取得意欲、リフォーム意欲がそがれてしまうということで、業界を挙げて支援策の継続を要望していました。
その結果、2023年度の補正予算に継続が盛り込まれ、「こどもエコすまい支援事業」という名称を「子育てエコホーム支援事業」に改めて、再スタートすることになったという経緯があります。名称は変更されていますが、内容がそう大きく変わったわけではありません。
国土交通省も早めの申請を勧めている
-
「子育てエコホーム支援事業」の対象期間は下記の通りです。
契約日の期間
不問
対象工事※の着手期間
2023年11月2日以降
交付申請期間
2024年3月中下旬~予算上限に達するまで(遅くとも2024年12月31日まで)
※対象工事
注文住宅の新築・新築分譲住宅の購入:基礎工事より後の工程の工事
リフォーム:リフォーム工事
国土交通省では、今回も希望者が殺到することを予想し、制度の告知において「予算上限に達した時点で受付を終了します。お早めに申請をおすすめします」というコメントをつけています。交付申請期間は「2024年3月中下旬~予算上限に達するまで(遅くとも2024年12月31日まで)」とされています。
2023年度補正予算のなかに組み込まれた今回の「子育てエコホーム支援事業」の予算は2,100億円で、前回予算切れとなった「こどもエコすまい支援事業」より増えています。しかし前回が予想以上の申し込みが殺到して打ち切りになったしまったことを考えると、多少予算が増えたからといって安心はしていられません。住宅の購入やリフォームを考えている人は、この支援策を利用できるうちに、早めに行動を起こしたほうがいいかもしれません。
予算がなくなれば、2024年度予算などで追加策が継続される可能性もあります。しかしその実施までには、制度のない空白の期間が生じて、補助金を受けられない期間が発生する可能性があります。十分に注意しておきたいところです。
少子化対策が支援策の最大の狙い
この人気の補助金制度は、具体的にはどんな制度なのでしょうか。まずは、図表1を確認してください。
「子育てエコホーム支援事業」では、住宅の取得とリフォームに補助金が出ます。取得については、注文住宅の新築、建売住宅や新築マンションの購入などが対象になります。補助にあたっては、利用者と取得住宅の双方に条件が設定されています。
利用者の条件としては、子育て世帯または若者夫婦世帯です。子育て世帯とは、申請時点で子どもがいて、その子どもが2023年4月1日時点で18歳未満である世帯となります。他方、若者夫婦世帯とは、申請時点で夫婦であり、夫婦いずれかの年齢が2023年4月1日時点で39歳以下の世帯とされています。
現実に18歳未満の子どもがいて、子育てに励んでいる世帯か、将来的に出産が期待される若い世代の世帯が対象ということです。出生率の向上によって少子化に歯止めをかけたいという施策の狙いははっきりしています。
住宅ローン専門金融機関のARUHIは
全国に店舗を展開中
省エネ性能の高い住まいの取得が対象
カーボンニュートラルを実現するというもう一つの狙いから、取得する住宅についても縛りがあります。
図表1にあるように、長期優良住宅またはZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)住宅を取得することが条件で、長期優良住宅の場合には原則的に1戸あたり100万円、ZEH住宅は80万円となっています。
長期優良住宅というのは、国土交通省が定めた基準をクリアした住宅のことです。耐震性などの高い安全性を確保し、長期間にわたって快適に住める住宅で、国の認定制度に合格する必要があります。認定を受ければ、この補助金のほかにも、住宅ローン減税額が一般の住宅より多くなるなど、さまざまなメリットがあります。
ZEH住宅は、住まいの断熱性・気密性を高めて、エネルギー消費量を削減、その一方で太陽光発電などの創エネによって、住宅で使うエネルギーの収支をゼロ以下にする住宅のことを指します。太陽光発電装置導入などの初期費用がかかりますが、光熱費を削減できるうえ、ヒートショックや熱中症のリスクを抑制できるなどのメリットがあります。
どちらも、省エネが進み、CO2排出量の削減、カーボンニュートラル実現に貢献するのは言うまでもありません。
リフォームは最大で1戸あたり60万円
それに対して、リフォームについては、利用者の条件とリフォーム内容などによって、補助金額が定められています。
最も補助金が多くなるのは、図表1の2にあるように、子育て世帯または若者夫婦世帯が、既存住宅(中古住宅)を買ってリフォームする場合で、1戸あたりの上限が60万円となっています。
中古住宅の購入を伴わない場合でも、子育て世帯または若者夫婦世帯が、リフォームによって増築や改築に関する長期優良住宅の認定を受ける場合には、最大45万円になり、それ以外は30万円です。
子育て世帯または若者夫婦世帯でない場合には、補助金の上限がやや少なくなります。増築や改築に関する長期優良住宅の認定を受ける場合には30万円で、それ以外のリフォームは最大20万円です。
リフォームの部位や内容で補助金額が決まる
リフォームの補助金額は一律に決まっているのではなく、リフォームの内容によって決まります。その上限額が条件によって60万円から20万円までということです。
たとえば開口部の断熱については、省エネ基準レベルのガラス交換だと、面積1.4平方メートル以上は1枚につき1万1,000円、0.8平方メートル以上1.4平方メートル未満が8,000円となっています。
省エネ基準レベルの内窓の設置や外窓の交換については、2.8平方メートル以上が2万5,000円、1.6平方メートル以上2.8平方メートル未満が2万円などとされています。
こうした金額が外壁や屋根、天井、床などごとに設定されていて、それらを合計した金額が補助金になるわけですが、1戸あたりの条件の範囲など補助額には上限があります。たとえば子育て世帯や若者夫婦世帯が中古住宅を買ってリフォームする場合、対象工事内容ごとの補助金額の合計金額が60万円以上になっても、最大で60万円の補助ということになります。
手間いらずで、補助金分だけ安く取得できる
なお、この制度の申請は注文住宅の新築工事を行う住宅メーカーや工務店、新築分譲住宅の販売会社、またはリフォーム工事を行う事業者が行うことになっています。工事発注者や住宅購入者である消費者が申請を行う必要はありません。
申請に合格して補助金が下りることになったら、補助金は事業者に入金されます。消費者に入ってくるわけではありませんが、補助金額分だけ消費者は住宅を安く取得したり、リフォーム工事を安く発注できたりすると考えればよいでしょう。
自分自身で申請する手間暇がなく、お得に取得できるのですから、非常にありがたい制度ではないでしょうか。これから住宅取得を考えている子育て夫婦や若者夫婦は、補助金を利用できるこの機会にぜひマイホーム購入に向けた行動を起こすことをおすすめします。
※「子育てエコホーム支援事業」について、詳しくは国土交通省ホームページで確認を
https://kosodate-ecohome.mlit.go.jp/