2024年に省エネ住宅、省エネリフォームでもらえる補助金を公認会計士がわかりやすく解説します

こんにちは、公認会計士の千日太郎です。今回のテーマは「住宅省エネ2024キャンペーン」です。2023年11月に令和5年度補正予算案が閣議決定され、住宅省エネ2023キャンペーンの後継事業等として盛り込まれました。これから住宅を買おうとしている人、リフォーム工事をしようとしている人がどんな条件をクリアすることで、どのくらいの補助金がもらえるのか、わかりやすく整理してご紹介しようと思います。

住宅省エネ2024キャンペーンとは?

住宅省エネ2024キャンペーンは、住宅省エネ2023キャンペーンの3事業の後継事業として実施されます。2023年の3事業と2024年の3事業の対応関係は下表のようになっており、各後継事業等の運用は、各現行事業と概ね同様のスキームが検討されています。

 

住宅省エネ2023キャンペーン

住宅省エネ2024キャンペーン

①こどもエコすまい支援事業(予算達成終了)

①子育てエコホーム支援事業

②先進的窓リノベ事業

②断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業

③給湯省エネ事業

③高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金

なお、こどもエコすまい支援事業は補助金申請額が予算上限(100%)に達したため、交付申請(予約含む)の受付を終了しています。そして各後継事業等の交付申請は、2024年3月以降の受付開始を予定しています。

補助金の申請手続きは登録業者が行う

交付申請等の手続きは、住宅省エネ2024キャンペーンに登録する登録事業者が行う予定です。一般消費者が自分で申請しようとしても補助金はもらえません。また、工務店や不動産業者が登録事業者でない場合は交付申請できません。そのため、省エネ住宅を購入する場合や省エネリフォームを行う場合は、その業者が住宅省エネ2024キャンペーンの登録事業者であるかどうか、事前に確認しておく必要があります。

補助対象が違えば補助金の併用が可能

原則として、同じ補助対象に国の別の補助金を併用することはできません。ただし、補助の対象が重複しない場合は、国の別の補助金を併用して申請することができます。例外としては、同じ補助対象でも、地方公共団体の補助制度については、国費が充当されているものを除き、併用可能です。

例えば、同じ新築工事やリフォーム工事について、現行事業と後継事業等を併用して申請することはできません。ただし、補助の対象が重複しない場合は併用が可能であります。

例えばリフォーム工事で2台の給湯設備を設置する場合に、1台目は2023年の③給湯省エネ事業で申請し、2台目は2024年の3⃣高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金で申請することも可能です。

子育てエコホーム支援事業の対象と主な要件と補助金の上限

エネルギー価格などの物価高騰の影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する新築住宅の取得や、住宅の省エネ改修等に対して支援することを目的とした補助金制度です。

 

補助対象

世帯要件

補助金の上限

長期優良住宅又はZEH住宅の注文新築又は新築分譲購入

子育て世帯・若者夫婦世帯

長期優良住宅 :100万円

ZEH住宅 : 80万円

省エネリフォーム工事

なし

20万円~60万円

※令和5年11月2日以降に基礎工事より後の工程の工事に着手するもの。ただし、令和6年12月31日までに工事が一定以上の出来高に達した上で交付申請を行い、別途定める期間内に完了報告が可能なものに限る。リフォーム工事は令和5年11月2日以降に工事に着手するもの。

補助対象と要件

補助の対象としては長期優良住宅又はZEH住宅の注文住宅新築又は新築分譲購入となっています。長期優良住宅は長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられている住宅で、所管行政庁(都道府県、市町村等)にて認定を受けたもの(2022年10月1日以降に所管行政庁に認定申請をしたもの又は登録住宅性能評価機関に「長期使用構造等の確認」申請をしたもの(変更認定は除く)です。 

ZEH住宅は強化外皮基準かつ再生可能エネルギー等を除く一次エネルギー消費量▲20%に適合するもの(ZEH、Nearly ZEH、ZEH Ready、ZEH Orientedに加え、令和4年10月1日以降に認定申請した認定低炭素住宅、性能向上計画認定住宅)を言います。長期優良住宅又はZEH住宅を新築で取得する場合は世帯要件として子育て世帯又は若者夫婦世帯であることが求められます。

なお、長期優良住宅、ZEH住宅であるかの確認方法としては、買い手として住宅販売業者等に確認するくらいなのですが、さらに延べ床面積(50㎡以上240㎡以下であること)に加え、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成12年法律第57号)に基づく土砂災害特別警戒区域又は災害危険区域(急傾斜地崩壊危険区域又は地すべり防止区域と重複する区域に限る)に原則立地しないものであること、都市再生特別措置法(平成14年法律第22号)第88条第5項の規定により、当該住宅に係る届出をした者が同条第3項の規定による勧告に従わなかった旨の公表がされていないものという条件があるのでもれなく確認する必要があります。

省エネリフォーム工事については世帯要件がありませんが、子育て世帯又は若者夫婦世帯である場合に、補助金上限額の引き上げがあります。省エネリフォーム工事の要件としては①開口部の断熱改修、②外壁、屋根・天井又は床の断熱改修、③エコ住宅設備の設置のいずれかを行うことが必須となっており、任意に行う④子育て対応改修、⑤防災性向上改修、⑥バリアフリー改修、⑦空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置、⑧リフォーム瑕疵保険等への加入の④~⑧に対して定められた補助金が支給される仕組みとなっています。なお、①~⑧の補助金合計が5万円未満の場合は原則として補助申請できませんので注意が必要です。

補助金の上限

上表にあるように長期優良住宅では100万円、ZEH住宅では80万円の補助金がもらえますが、①市街化調整区域かつ②土砂災害警戒区域又は浸水想定区域(洪水浸水想定区域又は高潮浸水想定区域における浸水想定高さ3m以上の区域をいう。)に該当する区域に立地している場合はそれぞれ半額となってしまいます。

省エネリフォーム工事では多くの省エネ工事を行うことで補助金の額を累積していけるのですが、下表のように上限が定められています。

 

世帯の属性

住宅購入・長期優良住宅の有無

1戸あたりの上限補助額

子育て世帯又は若者夫婦世帯

既存住宅を購入※1※2しリフォームを行う場合※3

60万円

長期優良住宅の認定(増築・改築)を受ける場合※4

45万円

上記以外のリフォームを行う場合※4

30万円

その他の世帯※5

長期優良住宅の認定(増築・改築)を受ける場合

30万円

上記以外のリフォームを行う場合

20万円

※1 売買契約額が100万円(税込)以上である。
※2 令和5年11月2日(令和5年度経済対策閣議決定日)以降に売買契約を締結したものに限る。
※3 自ら居住することを目的に購入する住宅について、売買契約締結から3ヶ月以内にリフォームの請負契約を締結する場合に限る。
※4 自ら居住する住宅でリフォーム工事を行う場合に限る。
※5 法人、管理組合を含む。

現行のこどもエコすまい支援事業との比較

現行事業のこどもエコすまい支援事業はすでに交付申請(予約含む)の受付を終了していますが、こどもエコすまい支援事業の補助対象が新築ではZEH住宅だけだったのに対して子育てエコホーム支援事業ではZEH住宅に長期優良住宅が追加されているので、間口はより広くなっています。省エネリフォーム工事の対象工事には変更がありません。

断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業の対象と主な要件と補助金の上限

断熱窓への改修を促進し既存住宅の省エネ化を促すことで、エネルギー費用負担の軽減、健康で快適なくらしの実現及び家庭からのCO2排出削減に貢献するとともに、断熱窓の生産効率向上による関連産業の競争力強化と成長を目的とした補助金制度です。

補助対象

世帯要件

補助金の上限

高い断熱性能を持つ窓への改修

なし

費用の1/2相当等を定額補助(上限200万円)

※令和5年11月2日以降に対象工事(断熱窓への改修を含むリフォーム工事全体をいう)に着手したものを対象とする。なお、窓の改修と同一契約内でドア(開口部に取り付けられているものに限る)についても断熱性能の高いドアに改修する場合には、補助の対象とする。

補助対象と要件

補助対象は高い断熱性能を持つ窓へのリフォーム工事です。そのため、対象となる建物はリフォーム工事の工事請負契約日時点において建築から1年が経過した住宅または過去に人が居住した住宅(現に人が居住している住宅を含む)となります。新築は対象となりません。​

リフォーム工事の種類としては対象製品を用いた、ガラス交換、内窓設置、外窓交換(カバー工法、はつり工法)です。対象製品はメーカーが登録を申請し、事務局が一定の性能を満たすことを確認した製品であり、メーカーから製品の性能やサイズが記載された「性能証明書」が発行されます。

なお、前述の子育てエコホーム支援事業のリフォーム工事の必須要件の一つとして①開口部の断熱改修がありますね。窓の断熱リフォーム工事を子育てエコホーム支援事業の方で補助金申請を行った場合、対象を重複して補助金を併用することはできませんので補助金を選択する場合に注意が必要です。

補助金の上限

上表にあるように、リフォーム費用の1/2相当等を定額補助し、上限200万円となっています。ここで前述した子育てエコホーム支援事業でリフォームする場合との比較をしてみましょう。

 

子育てエコホーム支援事業

断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業

世帯の属性と住宅購入・長期優良住宅の有無により20万円~60万円

世帯要件なし、費用の1/2相当等を定額補助で上限200万円

上限では明らかに、断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業の方がお得になっていますね。窓の断熱リフォーム工事を行う場合は、まず断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業で申請することを検討すべきでしょう。

ただし、子育てエコホーム支援事業では①開口部の断熱改修が必須要件の一つとなっており、これを欠いてしまうと子育てエコホーム支援事業での他のリフォーム工事で補助金がもらえなくなってしまう場合は、どちらが得になるか業者と見積り、シミュレーションを行う必要があるでしょう。

現行の先進的窓リノベ事業との比較

現行事業の先進的窓リノベ事業は2023年12月31日の工事請負契約までが対象となっており、予算が残っている限り年末までは申請可能です。後継事業の断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業の内容は、現行事業と概ね同様のスキームが検討されています。

高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金の対象と主な要件と補助金の上限

給湯器は、家庭のエネルギー消費量の約3割を占め最大のエネルギー消費源であり、給湯器の高効率化はエネルギーコスト上昇への対策として有効なことから、消費者等に対し、家庭でのエネルギー消費量を削減するために必要な高効率給湯器の導入に係る費用を補助する補助金制度です。

補助対象

世帯要件

補助金の上限

高効率給湯器(ヒートポンプ給湯機、ハイブリッド給湯機、家庭用燃料電池)の導入

なし

ヒートポンプ給湯機:13万円/台

ハイブリッド給湯機:15万円/台

家庭用燃料電池:20万円/台

高効率給湯器の導入と併せた蓄熱暖房機または電気温水器の撤去

なし

蓄熱暖房機の撤去:10万円/台

電気温水器の撤去:5万円/台

※令和5年11月2日以降に着工する補助事業を対象とする。

補助対象と要件

ヒートポンプ給湯機、ハイブリッド給湯機、家庭用燃料電池それぞれについて、所定の性能要件を満たしていることが要求されますので、メーカーないし業者に個別に確認する必要があります。補助対象となる住宅としては新築住宅、既存住宅の両方となっています。また戸建て、共同住宅の別を問いません。

なお、前述の子育てエコホーム支援事業のリフォーム工事の必須要件の一つとして③エコ住宅設備の設置があります。エコ住宅設備としての高効率給湯機の設置を子育てエコホーム支援事業の方で補助金申請を行った場合、対象を重複して補助金を併用することはできませんので補助金を選択する場合に注意が必要です。

補助金の上限

補助金の上限としては、1戸あたりの補助対象設備に台数制限が設けられています。

補助対象

戸建て

共同住宅等

高効率給湯器の設置

2台以内

1台以内

電気温水器の撤去

2台以内

1台以内

蓄熱暖房機の撤去

2台以内

2台以内

ここで前述した子育てエコホーム支援事業でリフォームする場合との比較をしてみましょう。

子育てエコホーム支援事業

高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金

世帯の属性と住宅購入・長期優良住宅の有無により20万円~60万円

世帯要件なし、1台設置と1台撤去の合計で18万円~30万円

上限額ではどちらが得になるかは一概に決められないものとなっています。どちらが得になるか業者と見積り、シミュレーションを行う必要があるでしょう。

現行の給湯省エネ事業との比較

現行事業の給湯省エネ事業は2023年12月31日の工事請負契約までが対象となっており、予算が残っている限り年末までは申請可能です。しかし補助金の対象範囲、上限額ともに下表のように後継事業の方が高くなっています。

 

給湯省エネ事業

高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金

ヒートポンプ給湯機:5万円/台

ハイブリッド給湯機:5万円/台

家庭用燃料電池:15万円/台

ヒートポンプ給湯機:13万円/台

ハイブリッド給湯機:15万円/台

家庭用燃料電池:20万円/台

なし

蓄熱暖房機の撤去:10万円/台

電気温水器の撤去:5万円/台

また、給湯省エネ2023事業に登録されていた機器は、後継事業でも原則対象となる予定であるとのことですので、どちらでも申請可能な条件である場合は、後継事業で補助金を申請する方が得になるでしょう。

まとめ

省エネ住宅を買う、住宅に省エネリフォーム工事を施すということは、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて国が推進しており、省エネ住宅の取得を後押しする様々な補助金、給付金の制度を用意しています。しかし、こうした情報はしかるべき省庁のホームページに見に行かなければ情報が無く、必要とする全ての人に届いているとは言えません。

✓知らなければもちろんのこと、知っていても申請しなければ、補助金は手に入りません。
✓申請しても、その前に補助金申請額が予算に達して終了し受けられないこともあります。
✓終了前に申請しても、条件で誤解しており、後の祭りで受けられないことがあります。
✓受け取れたとしても、その上限を知らないと、思ったより少ない額だったということもあります。

この記事を読んだ皆様が補助金を漏れなく無駄なく受け取ることができて、素敵なマイホームで良き人生を送られることを願っています。

(最終更新日:2024.01.03)