近年、新築マンション価格の上昇が止まりません。不動産経済研究所によると、2023年上半期の首都圏の新築マンション平均価格は最高値となる8,873万円を記録しています。特に東京23区の平均価格の上昇が顕著で、2023年度上半期の東京23区における新築マンション平均価格は史上初の1億円超えとなりました。
この記事では、新築マンションの価格や相場が決まる要因を解説します。近年の価格高騰にどのような背景があるのかも考えながら読んでみてください。
高騰が続く新築マンション価格
新築マンションの価格は近年右肩上がりで高騰が続いています。不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2023年上半期(1〜6月)」によると、首都圏の新築マンション1戸当たり平均価格は8,873万円、1平方メートル当たりの単価は132.1万円となりました。これは前年同期比で平均価格が2,363万円(36.3%)、平方メートル単価は34.4万円(35.2%)の大幅アップとなっています。
冒頭でも紹介したとおり、東京23区については1戸当たり平均価格が1億2,962万円となり、調査開始以来初めての1億円超えとなりました。エリアによって価格動向に差はあるものの、新築マンション価格は全体的に上昇傾向が続いています。
出典:不動産経済研究所 首都圏新築分譲マンション市場動向 2023年上半期(1~6月)
新築マンションの価格を決める4つの要素
新築マンションの価格を決める主な要素として、次の4つが挙げられます。各要素について詳しく見ていきましょう。
用地の仕入れ費用
マンションも他の商品と同様、原価が高くなれば販売価格も上昇します。マンションでかかる原価として大きいのが用地の仕入れ費用です。マンション開発を手がけるデベロッパーが用地を取得した際にかかった費用のことで、土地価格のほか仲介手数料や既存建物の解体費用、借入金利などが含まれます。
土地価格が高くなるほど仕入れ費用も上がるため、地価が高いエリアに建つマンションは価格が高騰しやすくなります。たとえば、ターミナル駅の近くや再開発が予定されているエリア、新駅や新線開業が見込まれるエリアなど、将来にわたって資産価値の保全が見込めるところにある土地は地価が上がりやすく、マンション価格が高騰する大きな要因になります。
建築原価
マンションにかかる原価でもう一つ大きいのが建築原価です。これはマンションを建築するのにかかった費用の総額を指し、設計費用や建築資材費用、設備費用、人件費などが該当します。また、建築に際して付帯的にかかる借入金利や近隣対策費、各種行政手続き費用、税金なども建築原価に含まれます。
マンションは用地の仕入れ費用と建築原価で売上の約8割を占めるといわれ、他の商品と比べても原価率が高めです。それゆえに原価の上昇は販売価格に直結します。
近年のマンション価格に大きな影響を与えているのが、建築原価のうち建築資材費用と人件費の高騰です。
昨今のインフレや円安の進行によって引き起こされている建築資材費用の高騰ともに、労働者不足によって人件費も上昇していることで、建築原価が大きくアップしています。デベロッパーが上昇分を販売価格に転嫁していることが、全国的なマンション価格高騰の主要因の一つとなっています。
広告宣伝費
マンションを販売するにあたっては広告宣伝費もかかります。新築マンションを宣伝するための折込チラシやWeb広告、テレビCMなどを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
また、マンション販売では購入希望者にイメージを膨らませてもらうためにモデルルームを設けます。設置したモデルルームは一定期間運営をしていかなければなりませんが、そういった費用も広告宣伝費に含まれます。広告宣伝費は販売価格の5〜10%程度というのが一般的です。
不動産会社の利益
上記3つがマンション建築・販売にかかる費用であり、販売価格からこれらの合計額を差し引いた残りが、開発したデベロッパーの利益となります。原価(土地仕入れ費用+建築原価)が約8割、広告宣伝費が5〜10%程度なので、マンション販売の利益率は1割程度と考えられるでしょう。
デベロッパーは利益を得るためにマンション開発をしているので、当然原価が上がった分を販売価格に転嫁して一定の利益を確保しようとします。ただ、実際にはマンション市況との関係で利益は上下せざるを得ないため、固定の割合で上乗せされるものではありません。
個別のマンション居室の価格を決める要素
上で紹介した4つの要素は、マンションのプロジェクト全体の価格を決めるものです。決定した全体の価格をベースに各居室の価格設定が行われます。続いては、マンションの各居室の価格を決める要素について解説しましょう。
面積
各居室の価格を決める要素として、まず大きいのが専有部分の面積です。居室ごとの価格は基本的に「専有部分の面積×面積単価」で求められるため、不動産売買では「平米単価」「坪単価」を見る必要があります。
上の計算式を逆算して、「物件価格÷専有部分の面積」で「平米単価」「坪単価」を求めれば、広さの異なる物件でも横並びで比較できます。
階数
マンションならではの価格決定要因として挙げられるのが、階数です。階数が高くなるほど日当たりや風通し、眺望が良くなるほか、プライバシーや高い防犯性を確保できます。虫が入ってきにくい、最上階なら上階からの音が気にならないといったメリットもあります。
こうしたことから、マンションでは高層階ほど高価格になるのが一般的です。特にタワーマンションと呼ばれる超高層の物件の最上階ともなれば、それ以外の階の居室に比べてかなり高めの価格設定となります。
方角
日本の住宅市場では日当たりの良さが重視される傾向にあります。そのため、マンションでは南向き・東向き・西向き・北向きの順に人気です。方角による人気の差が価格にも反映されるので、同じ物件の同じ階にある住戸でも西向きや北向きの部屋に比べ、南向き・東向きの部屋は高めの価格に設定されるケースが多くなっています。
ただし、タワーマンションの高層階では周囲に高い建物がなく、北向きでも日当たりが確保できることもあります。このような物件では方角による価格差はほとんど生じないでしょう。
位置
同じフロアでも、角部屋か中部屋かによって価格設定が異なる場合があります。一般的には採光を2面以上取れて、風通しも確保しやすい角部屋が人気です。日当たりが良好な南東向きの角部屋は特に好まれ、価格も高く設定される傾向にあります。
中部屋は角部屋に比べて窓が少ない反面、外気の影響を受けにくく冷暖房効率が良い点はメリットです。物件によっては眺望の良さなどから中部屋のほうが人気を集めることもあり、必ずしも角部屋の価格が他より高くなるとは限りません。
その他
その他、居室固有の特別な事情が価格に影響を及ぼすケースもあります。
たとえば、1階のエントランスや各階のエレベーターホールの近くにある住戸は、玄関前を多くの人が通るため騒音が発生しやすいというデメリットがあります。また、ゴミ置き場の近くにある物件は悪臭がしたり、虫が入ってきたりして不衛生になりやすいなど、周囲の環境がマイナス要素になって個別に値引きされる場合もあるでしょう。
他にも、専用庭や専用の駐車スペースを使える物件では、通常は低価格なことが多い1階住戸の価格が、高めに設定されることもあります。
まとめ
東京23区を中心に、新築マンションは相場の高騰が続いています。用地の仕入れ費用や建築原価によって価格が左右されるという決まり方を見れば、高騰が続いている理由も理解できるでしょう。新築マンションの購入を検討する際は、マンション全体や各居室の価格の決まり方も意識したうえで、物件を吟味するのがおすすめです。