話題のトレーラーハウスを見学! 室内空間や設備など、暮らし心地と魅力をチェック

リモートワークが普及したことから、多様な住み方に注目が集まっています。そのひとつが『トレーラーハウス』です。「聞いたことはあるけれど、どんな住まいなのかはよくわからない」、という人も多いのではないでしょうか。今回は、トレーラーハウスについて調べてみました。

トレーラーハウスとは、どんなもの?

トレーラーハウスを簡潔に言うと、「自動車を利用した工作物で、一定の土地に定置して店舗や住居として利用できるもの」となります。

トレーラーハウスの法的基準を整備し、有効活用を促すための団体が、非営利型一般社団法人日本トレーラーハウス協会です。同協会では、トレーラーハウスを次のように定義しています。

「トレーラーを一定の場所に定置し、土地側の給排水配管電気等の接続が工具を使用しないで脱着できる構造体であり、公道に至る通路が敷地内に確保されており、障害物がなく随時かつ任意に移動できる状態で設置したものをトレーラーハウスと呼ぶ。」

つまりポイントは、4点です。

・一定期間、同じ場所に置くこと
・設置場所から公道に出る通路があり、公道を使って移動できること
・水道などのライフラインとの接続が工具を使用しない着脱方式であること
・いつでも移動できる状態で設置されていること

そうは言っても、ちょっとわかりづらいので、具体的にトレーラーハウスを見学してきました。

トレーラーハウスを見学、室内は想定以上に快適

見学したのは、日本トレーラーハウス協会の会員でもあるYADOKARI株式会社の「Tinys INSPIRATION」という国産のトレーラーハウスです。

黒っぽい箱のようなものに、ドアや窓が付いています。前面にはエアコンが設置されていました。ドアから入るには、タイヤ分の高さがあるので移動式のステップを置いて、そこから入るようになっています。

Tinys INSPIRATION
筆者撮影。ステップ横の茶色の板は色見本の例。外観は34色から選ぶことができます

逆側から見ると、背面いっぱいに大きな窓があります。公道を走るので、ナンバープレートもつけられていました。

背面の窓
筆者撮影。背面の窓のサイズは2メートル×2メートルです

室内は6.5畳ほどの広さで、備え付けのキッチンのほか、ベッドやダイニングセットなどが置かれていました。大きな窓があるので、思ったより明るい印象を受けます。

室内
筆者撮影

上の写真右の扉の奥に、トイレとシャワーブースがあります。

筆者撮影
筆者撮影(左:トイレ、右:シャワーブース)
小窓
筆者撮影(小窓)

小さな窓のほうはスライドして開けることもでき、虫よけの網戸も収まっていました。

平面図
平面図:YADOKARI提供

見学したトレーラーハウスに、電気は接続されていましたが、給水・排水設備には接続されていません。下の写真の丸のなかの管を使って、地上の水道管や排水管に接続できるようになっています。さらにプロパンガスとも接続して給湯器を付ければ、熱いシャワーを浴びるなど、普通の生活が送れます。ただし、電気や水道等を接続する際には、専門の事業者に依頼して適切に接続する必要があります。

筆者撮影
筆者撮影

トレーラーハウスとキャンピングカーでは大違い!

トレーラーハウスを見たときに、想定より大きいことに驚きました。寝泊まりしながら車で行きたい場所に移動するような印象を持っていましたが、「それはキャンピングカーです」、とYADOKARIの方に指摘されました。どちらも車の中にベッドやキッチンを設置できますが、キャンピングカーはあくまで車なので、給水タンクを取り付けて水を補充したり、トイレの処理をしたりといったことが必要になり、住宅のようにライフラインが使えるトレーラーハウスとは用途などが異なるのだそうです。

トレーラーハウスは、拠点となる場所に移動し、その場所でライフラインを接続することで生活ができるようになるので、たとえば、災害時の仮設住宅としても利用されています。仮設住宅としての役目を終えた後は、解体することなく、移動して次の場所で再利用できるというメリットもあります。

また、個人が購入して別荘やセカンドハウスとして使うほかにも、事業用の店舗やオフィスとして利用したり、キャンプ場の宿泊施設として営業したりと、いろいろな使い方が可能です。

トレーラーハウスはまるで小さな住宅のよう

見学した日は寒かったのに、中はエアコンが効いてとても暖かかったのですが、それは、床・壁・天井が断熱材で覆われ、窓にはアルミ樹脂複合サッシに複層ガラスを採用するなど、省エネ性を高めているからです。

また、Tinys INSPIRATIONは標準仕様が合板仕上げですが、見学した室内は壁をペイントしたもの(床は合板仕上げのまま)でした。つまり、オプションで内装仕上げを依頼したり、自身でDIYをしたりできるということです。ほかにも、住宅と類似している点は多く、一般住宅と同じコンセントや水まわりを設置しているので、エアコンや冷蔵庫などは家電量販店などで買ったものが利用でき、将来水まわりをリフォームする場合も一般住宅用のものを選ぶことができます。

では、トレーラーハウスを設置するにはいくらぐらいかかるのでしょう。YADOKARIによると見学したトレーラーハウスの場合、購入から設置までで650万円程度かかるといいます。これなら自然豊かな地域に土地を買って、好みの場所にトレーラーハウスを設置すれば、立派な別荘になるでしょう。友人とシェアすれば、費用を抑えることもできそうです。

トレーラーハウスの特徴や注意点は?

移動可能なトレーラーハウスは建築物ではないので、建築基準法の建築確認が不要です。そのため、住宅が建てられる地域に限定されることなく、住居を構えることができます。例えば、見学したトレーラーハウスのように、背面の大きな窓が特徴の場合、海や山の景色を望める場所などに設置して、毎日景色を楽しむこともできます。ただし、トレーラーハウスを設置できるかどうかは、事前に自治体に確認する必要があるということです。

また、トレーラーハウスはタイヤの付いたシャーシ(車台)に載せて移動するので、車で牽引する必要があります。牽引するには牽引免許と馬力のある車両が必要なので、専門事業者に依頼することになり、そのぶんの費用や手間が発生します。

シャーシ
筆者撮影:シャーシ(車台)

一方、トレーラーハウスのタイヤを取り外したり、入り口のステップやウッドデッキなどを固定して取り付けたりすると、建築物の扱いになります。車扱いか建築物扱いかでは、いろいろなことが違ってきます。車であれば自動車税がかかりますが、建築物であれば建物の不動産取得税や固定資産税などがかかります。設置する土地を所有している場合は、土地に固定資産税などがかかりますが、車扱いの場合は住宅用の宅地ではないため、住宅用地の減税措置は受けられません。

また、気になるのは、一定期間利用した後で売却する場合です。YADOKARIの方によると、まだ住宅のように中古市場が形成されているわけではありませんが、トレーラーハウスは販売対象が全国に広がるうえ、減価償却が新車の4年に対して中古車は2年と短く、年間の減価償却費が事業用の経費になったり給与所得と損益通算できたりと節税対策にもなることから、再販性は高いことが特徴だと言います。

さて、筆者は見学したことで、トレーラーハウスとはどんなものか、どんな暮らしができるかについて、理解することができました。新しい住み方の選択肢の一つとして、興味を持ったという人もいるのではないでしょうか。車と建築物では、費用や税金なども変わります。事前に専門の事業者に相談したり、細かい点まで調べたりして、希望の暮らしができるかしっかりと確認しましょう。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)

~こんな記事も読まれています~

この記事が気に入ったらシェア