【本当に住みやすい街大賞2023】第1位西八王子:豊かな自然や歴史と伝統、学園都市の特性も活かしたまちづくり~八王子市 石森孝志市長に聞く~

2022年12月15日に開催された「ARUHI presents 本当に住みやすい街大賞2023」。1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の中で「本当に住みやすい街」TOP10を発表するなか、東京都八王子市の西八王子駅(JR中央本線)が第1位に輝きました。そこで、八王子市の石森孝志市長に、受賞したことへの思いや西八王子の魅力、行政としての取り組みなどについてお話を聞きました。

八王子市長 石森 孝志(いしもり たかゆき)さん
1957年生まれ。八王子市出身。1980年から東京都経済農業協同組合連合会(現全農)に10年勤務。1995年から八王子市議会議員を3期、2005年から東京都議会議員を2期務める。2012年1月より現職。

※撮影時のみマスクを外しています

生活利便性が高く自然豊か、イベントも楽しめる街

石森市長
「八王子ではなく、西八王子が受賞したことに地元では驚きの声が多かった」と石森市長

―まずは、今回の受賞に対する率直な感想をお聞かせください

「本当に住みやすい街」の第1位ということで、大変嬉しく光栄に思っております。これまで、西八王子はあまり取り上げられたことがありませんでしたが、賞をいただいてから、ニュースやバラエティー番組で取り上げられる機会が増えました。地元のみなさんが一番驚いていると思います。そして、今回の受賞を特に喜んでいるのが商店街のみなさんです。「今回の受賞をきっかけとして、街のにぎわいにつなげていきたい」という声がたくさん届いています。

―市長が思う、西八王子の魅力は?

西八王子は、八王子市役所の最寄り駅で、八王子市中央図書館も近く、野球場や陸上競技場、体育館がある富士森公園などの公共施設が整備されています。駅前には商業施設もありますし、病院も近く、生活に必要な環境が揃っています。JR中央線の中央特快で新宿駅まで約40分と利便性が高く、高尾山をはじめとする豊かな自然も満喫できる、住むうえで非常にバランスが取れた地域です。そして、都心と比べると住宅を購入するにも、家を借りるにもリーズナブル。新生活をスタートさせる場所として、非常に住みやすい街ではないでしょうか。

いちょう並木
黄金色に街を彩り、道行く人々の目を楽しませてくれるいちょう並木

JR中央本線と並行する甲州街道沿いには、約4キロメートルにわたり日本三大並木とも言われる約770本のいちょう並木が続いています。秋の紅葉シーズンには「八王子いちょう祭り」という大きなイベントを開催。多くの人でにぎわいます。また、毎年8月には、八王子駅寄りのエリアで、八王子市で最大のイベント「八王子まつり」を開催しています(2022年はコロナ禍のため中止)。関東屈指の山車祭りと言われており、市外からも多くの人が訪れます。こうしたイベントに参加できる環境も、西八王子の魅力です。

都内で唯一「日本遺産」に認定 歴史や伝統文化を活かしたまちづくり

石森市長
「八王子の魅力や豊かな歴史・伝統文化を知っていただきたい」と石森市長

―「住みやすい街」となるために、行政として取り組んでいることを教えてください

八王子市長に就任して12年目になりますが、駅周辺の整備を最重要課題として進めてきました。その中でも、八王子市の顔であるJR八王子駅周辺の整備と、中心市街地の活性化に取り組んできました。
2022年10月には、多摩地区最大級の産業交流拠点「東京たま未来メッセ」が開業しました。東京都の施設となりますが、開業以来、数多くのイベントが開催されています。「東京たま未来メッセ」を拠点としたMICE事業にも力を入れており、学会や展示会などの誘致を今後も進めるとともに、産業振興や地域の活性化につながることを願っています。

また、八王子は2020年に都内で唯一の「日本遺産」に認定されました。認定ストーリーである「霊気満山 高尾山 ~人々の祈りが紡ぐ桑都物語~」には、高尾山をはじめ29件の有形・無形の構成文化財が「含まれています。八王子市としては、構成文化財それぞれに磨きをかけながら、歴史や伝統文化を活かしたまちづくりに全力で取り組んでいます。

―伝統文化を活かしたまちづくりとは?

桑都テラス
和の魅力あふれる「桑都テラス」

日本遺産の構成文化財のひとつが「八王子芸妓」。「織物の街」として栄えた本市には、多摩地区で唯一の花街が今なお残り、芸妓の皆さんは地元の祭りなどの行事にも積極的に参加して技芸を披露するなど、伝統を継承しています。その花街の風情の残る地域に、2022年11月「桑都テラス」という施設をオープンしました。施設ではさまざまなイベントが開催されているほか、舞台で芸妓の皆さんが踊りを披露することも。中心市街地で開催されるイベントなどとも連携しながら、街の魅力を市内外のみなさんに伝える拠点としていきたいと考えております。

八王子で育った子どもも、大学で学んだ若者も住み続けたい街へ

石森市長
全国有数の学園都市であることから、20代の人口が多い八王子市。「就職のタイミングで市外へ出てしまう人が多い一方で、結婚して子どもが生まれると八王子市で子育てがしたいと戻ってくれる人も多い」と石森市長

―生活に便利で自然と触れ合えるスポットが多く、文化体験もできる八王子市は子育てがしやすそうです。子育て支援はどのようなことを行っていますか?

八王子市ではかねてから、子どもたちの意見を尊重する取り組みを続けてきました。子どもたちも街づくりに関わり、意見を述べてもらうための「子ども☆ミライ会議」は小学5年生~高校生世代の子どもたちが、テーマを決めてワークショップを行い、街づくりについて市長や教育長に提案するという取り組み。給食で八王子産野菜の利用を増やしたり、公園に新しい遊具を設置したりと、実際に子どもたちの意見を参考に施策や取り組みを実現しています。

妊娠期からの切れ目ない子育て支援体制である「八王子版ネウボラ」も独自の子育て支援策です。また、幼稚園や保育園等をバックアップする幼児教育・保育センターを立ち上げ、質の高い教育・保育体制を整えているところも子育て家庭には魅力。こうした取り組みが評価され、昨年「日本子育て支援大賞2022」を都内の区市町村で初めて受賞しました。

―八王子市は全国でも有数の学園都市ですが、学生に対する取り組みも教えてください

八王子市は全国でも有数の学園都市です。25の大学や短期大学、高等専門学校が加盟する「大学コンソーシアム八王子」という組織を設立し、企業・市民・大学・行政が連携しながら、さまざまな事業を進めています。八王子市に関わる大きな事業としては、学生の日頃の学びを発表する「学生発表会」の中に、市政に関する提案やアイデアを学生のみなさんから私に直接発表してもらう「学生が八王子市長へ直接提案!」を開催。
予算化して市の事業として実施した提案も多数あります。たとえば、南大沢文化会館内が迷いやすいという声があり、学生の意見をもとにサイン(案内標識)を道順が分かりやすいように一新したり、放置自転車対策として道路にトリックアートを用いた立体路面シートを導入したりと、街のあちこちに学生の皆さんのアイデアが生きています。

―今後に向けて、課題はありますか?

八王子は大学が多いことから、人口構成比を見ると20代の割合が高いのですが、大学を卒業すると八王子を離れてしまうことが課題です。できるだけ八王子市内にとどまってもらいたいという思いから、さまざまな取組を実施しています。

2022年度からは「定住促進奨学金返還支援事業」をスタート。奨学金を使って大学などで学び、5年以上八王子市に定住する人を対象とし、卒業後の就職先が市外の場合は年間8万5,000円、市内の場合は10万円を上限に5年間奨学金の返還を補助します。市内に就職する場合、合計50万円を上限に交付されることになりますが、2022年度分は多くの申し込みがあり、定員枠が埋まるほどの盛況ぶりです。学園都市の特性を生かし、今後も若い世代の定住者が増えることを期待しています。

地域ごとに自然豊かなスポットや観光名所が点在する街

石森市長
石森市長のお気に入りスポットは、高尾山と滝山城跡。「つい先日も、節分会追儺(ついな)式のために髙尾山薬王院を訪れたばかりです。また、滝山城跡は日頃から散歩がてら歩くことが多いですね」

―今後、さらなる住みやすさのアップが期待できそうなプロジェクトがあれば、教えてください 

大きなところでは、八王子医療刑務所跡地を活用する「八王子駅南口集いの拠点整備」がいよいよ始まります。4月に着工予定で、約500ヘクタールの土地に、防災機能を持った公園や博物館、図書館などの複合施設を計画しています。多くの市民のみなさんに利用していただけるサード・プレイスとなるよう、事業を進めています。

八王子駅南口集いの拠点整備
「八王子駅南口集いの拠点整備」の施設イメージ

市の施設ではありませんが、以前から整備が進められてきた八王子インター北地区に「イオンモール八王子インターチェンジ北(仮称)」がまもなく着工されます。イオングループ初となる、ロボットやAI技術を駆使したスーパーをはじめとする次世代型複合商業施設となる予定です。

イベント関連では、前述の東京たま未来メッセで今年11月に「日本遺産フェスティバル in 桑都・八王子」を開催します。日本全国で104件ある日本遺産の認定団体が一堂に会するイベントで、東日本では初めての開催となります。八王子が日本遺産に認定されていることを、八王子市民でも知らない方が数多くいらっしゃいます。八王子の良さを改めて認識していただければと思います。

―八王子市民に人気の、おすすめスポットを教えてください

八王子市の魅力は、歴史上のさまざまな文化財が点在していること。中でも「高尾山」は、年間300万人が訪れる世界一登山客が多い山と言われています。最寄りは高尾山口駅となりますが、京王電鉄が駅舎を隈研吾氏の設計で全面改修。駅直結の温泉施設「極楽湯」もできました。八王子市も、高尾山の良さを発信する自然史博物館「高尾599ミュージアム」を開設。市内外のみなさんが、登山はもちろんのこと、周辺エリアで楽しんで滞在いただけるよう、整備に力を入れています。

高尾山周辺以外では、「八王子城跡」や「滝山城跡」がおすすめです。「八王子城跡」には、城の歴史やむかしの姿を紹介するガイダンス施設があるほか、「滝山城跡」は多摩川を見下ろす美しい景色や、春には桜を楽しむこともできます。歴史ブームもあり、いずれも全国各地から多くの方々にお越しいただいています。

高尾599ミュージアム
高尾山の麓にある「高尾599ミュージアム」。映像展示やキッズスペース、カフェ、広場などもある開放的なミュージアムです

―最後に、引っ越し先を探している人や検討中の人に向けてメッセージをお願いします

八王子市は、東京都の区市町村のなかで奥多摩町に次いで広い面積をもつ中核市です。周囲の村がいくつも合併してできているため、エリアごとに地域特性があり、それが八王子市の魅力となっています。便利で住みやすいだけでなく、高尾山をはじめとする自然豊かなスポットや観光名所が点在していて、見どころがたくさんあります。ぜひ足を運んで体感してください。そして、気に入ったら是非八王子に移住してください。お待ちしております。

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