OECDが毎年公表している国別の世界平均年収によると、2021年の日本の平均年収は24位となっています。アメリカやアイスランドなど上位の国では年収がさらに上がっている一方、日本ではあまり変わっていません。今回は、世界平均年収ランキングを紹介するとともに、日本人の年収が上がらない理由についても解説します。
世界平均年収ランキング
日本は名目GDPでみれば、アメリカ、中国に次ぐ経済大国として知られていますが、労働者の年収は世界的にみてもそれほど高くありません。OECDの統計によると、2021年の平均年収が高い国上位は、アメリカやルクセンブルク、アイスランドなど、欧米諸国が中心です。日本の平均年収は3万9,711USDで、世界ランキングでは24位となっています。
以下ではOECDの統計をもとに、世界の2021年平均年収ランキングをまとめました。
2000年の世界平均年収と上昇率
前述のとおり、日本の平均年収は世界ランキングでも上位とはいえません。また、過去のランキングから順位を落としているのが実情です。
2000年のランキングでは、日本は世界18位となっており、21年前よりもランキングを下げています。平均年収の上昇率は約2.3%にとどまっており、過去21年間でほぼ横ばいとなっていることがわかります。
2000年の平均年収ランキングは次のとおりです。
世界のインフレ率と平均年収
日本の年収がほとんど上がらないなか、インフレ率の上昇が懸念されています。インフレ率とは、消費者物価指数の前年比のことで、家計に大きな影響を与える指数です。OECDのデータによると、2022年の日本のインフレ率は2.51%となっていますが、他国と比較するとそれほど上昇していないことがわかります。
2022年の主要5ヶ国とG7、OECD全体のインフレ率は次のとおりです。
上記の表から、日本のインフレ率はOECD全体やG7の平均インフレ率よりも低くなっていることがわかります。また、G7(アメリカ、イギリス、日本、イタリア、ドイツ、フランス、カナダ)のなかで最も低いインフレ率です。
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日本の平均年収が上がらない理由は?
日本の平均年収が上がらない理由はさまざまですが、主に日本の労働環境や経済の状況が関係していると考えられています。ここでは、主な要因を三つ紹介します。
終身雇用・年功序列の企業が多いから
成果主義を採用する企業が増えているとはいえ、日本では多くの企業が伝統的な終身雇用・年功序列の雇用スタイルをとっています。そのため、若年層は成果を上げても賃金がアップしない傾向が顕著です。
一方で、社員一人ひとりの賃金は年齢とともに増えていくため、成果に関係なく人件費は高騰します。そのため、企業は業績にかかわらず一定の賃金を払い続けなければなりません。企業が雇用を守るためには、一人あたりの賃金を抑えざるを得ないのが実情です。
また、人件費を抑えるために、あらたな雇用を見合わせる傾向もみられます。労働力が足りない分を非正規雇用でまかなう企業も多く、結果として平均年収が低くなることにつながっていると考えられます。
労働生産性が上がらないから
日本の労働生産性はOECD加盟国のなかでも低く、また過去20年間でほとんど上がっていません。労働生産性が低い理由としては、平均の企業規模が小さいことやIT化の遅れ、不活発な貿易によるグローバル化の遅れなどが指摘されています。
また、前述した年功序列を採用している企業の多さも原因と考えられています。成果が賃金に反映されにくいため、「今より評価されるために業務効率を上げよう」という意識が働きづらいからです。その結果、業務への取り組みがマンネリ化し、生産性向上につながりにくい環境となっています。
企業が十分な利益を得ていないから
日本経済の長期低迷を受け、日本の企業は商品やサービスの値上げに消極的です。原材料コストが上昇する一方で、上昇分を価格に転嫁できていないため、企業は十分な利益を得られない状況となっています。特に、中小企業や小規模事業者は価格転嫁により契約が打ち切られることを懸念し、価格交渉をためらうケースが多いようです。
企業が十分な利益を得ていない状況では、労働者の賃金を上げる余裕は生まれません。賃金が上がらないと個人消費が落ち込み、企業がいくら努力をしても利益が増えないという悪循環に陥ってしまう可能性があります。
まとめ
2021年の世界平均年収ランキングにおいて、日本は24位となっており、21年前よりも順位が低下しています。過去21年間で、平均年収はあまり上がっていない状況です。
平均年収が上がらない要因として、終身雇用・年功序列の企業の多さや労働生産性の低下、値上げに消極的な姿勢による企業の収益低迷などが考えらます。平均年収を上げるには、労働者を取り巻く環境を改善する必要があるでしょう。
(最終更新日:2024.04.19)