心配するだけで「半数」が行動せず? 家の「防災」どうすれば

消費増税や幼保無償化など、家計にかかわる様々な制度に変化が起きた2019年。それだけではなく「防災」という視点で、今年は振り返っておきたいデータがいくつかあります。

マイホームを持っている人はもちろんのこと、これからまさに家を購入したり、借りる人にとって、家の「防災」を取り巻く状況と対策を知っておく事がこれからの「減災」につながります。

毎年のように発生する、広範囲災害

梅雨時の豪雨、夏場の台風襲来と日本列島では昔から水害をもたらす荒天が各地を襲っていましたが、
昨年(2018年)、今年(2019年)は「広範囲な災害」が相次いで発生しています。

西日本に甚大な被害をもたらしたのが、2018年7月に発生した「西日本豪雨」です。台風7号および梅雨前線等の影響による集中豪雨によって、西日本を中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水害、土砂災害が発生。

住宅関連での被害は全壊が7,000棟近く、床上、床下浸水の被害を受けた住居は実に3万棟近くにのぼりました。

そして2019年も広範囲災害が立て続けに発生します。

9月に関東地方を襲った台風15号では記録的な暴風により、住宅被害は千葉県を中心に7万棟を超え、その多くが突風による屋根損壊などでした。さらに電柱倒壊による長期の停電というインフラ被害も広範囲で発生しています。

気象庁の速報資料より(台風第 19 号による大雨、暴風等)

そして10月には台風19号が東日本を縦断。記録的な豪雨により各地の河川で同時多発的に氾濫や決壊が発生し、西日本豪雨を上回る面積の土地が浸水してしまいます。

これによって、全壊は3,000棟あまり、半壊や一部損壊を含めると5万棟以上の住居が被害を受けました。

損害保険の支払い金額は2年連続で1兆円越えか

このような大規模な自然災害の発生により損害保険の支払いも膨大なものになっています。

損害保険協会がまとめたところによると、2018年は西日本豪雨で1,956億円、関西地方を襲った台風21号では過去最高の1兆678億円、静岡県や神奈川県などで停電が広範囲に及んだ台風24号では3,061億円の保険金が支払われました。

2019年はまだ未確定の状況ではありますが、大手損保3社が12月19日に発表した見通しで、台風15号と台風19号の保険金の支払い額は8,600億円となり、ほかの自然災害もあわせると今年度も1兆円規模になる可能性もあるとのこと。

防災の意識はあっても行動せず?

このような状況のなか、人々の防災意識の実態を示すデータが公開されています。

セコム株式会社が20代以上男女500名を対象に10月に実施した 「防災に関する意識調査」では、”今後の災害増加や被害拡大を懸念するのは約9割”とほとんどの人が自然災害に対して不安をもっています。一方で”防災対策は半数以上が実施していない”という結果に。

防災対策をしない理由では「具体的にどのような対策をすればよいかわからないから(50.4%)」が1位ですが、4位の「住んでいる地域で災害が起こったことがないから(22.5%)」という回答にも注目です。

近年の広範囲で発生した災害報道では、必ずと言っていいほど被災された方々が「ここに住んで初めてのこと」とコメントされています。

自分の家に被害が発生してからでは遅く、「想定外の事が発生するかもしれない」という自覚を事前にもてるかが防災意識からの行動に直結するキーとなりそうです。

では具体的になにができるのでしょうか?

地域の災害リスクを「ハザードマップ」で確認

さきほど記載した2019年に立て続けに日本列島を襲った台風15号、19号。強風と大雨が多くの地域に甚大な被害を与えましたが、そこで注目されたのが「ハザードマップ」です。

ハザードマップとはいわゆる”被害予測地図”のことで、自然災害による被害を予測し、その範囲を地図上に表したものです。

世田谷区のハザードマップ
世田谷区のハザードマップ。想定される浸水の深さが色分けされています。また、家屋が倒れるような氾濫が起きる地域も示されている。その他、避難場所や避難すべき方向(矢印)など、災害の起こった場合に必要な情報がまとめられています

各自治体が作成していて、ネット上で見ることができます。自分の住んでいる地域のものを見るには、検索サイトで「ハザードマップ(自治体名)」で検索すれば確認が可能です。

このハザードマップの活用法と利用する際の注意点などを以前ARUHIマガジンで紹介した際、名古屋大学大学院工学研究科 土木工学専攻 中村晋一郎准教授によれば、ハザードマップは見るべきタイミングは3度あるといっています。

1.住宅を購入する前

「まず、住宅を購入する前。購入予定の地域にどのような災害リスクがあるのかを確認します。新しく開発されたエリアは、もともと湿地だった場所を埋め立てたり、山を切り崩して造成したりしている場合が少なくありません。ハザードマップを確認することで、どのような災害被害が起こる可能性があるのかを確認してから、購入の決定をしましょう。」(中村 准教授)

2.住宅を購入した後

「次に、住宅を購入した後。どのような災害被害が起こる可能性があるのかを確認し、それに備えるようにします。場合によっては避難するという選択肢も考慮して、避難所の確認や経路を決めておきましょう。最後に、ニュースの災害報道や警報が出た後。避難指示などが出ている場合は、あらかじめ調べておいた避難所へ、安全な避難経路を使って避難します。」(中村 准教授)

3.災害時

「災害時には停電でパソコンが使えなくなったり、スマホの電波が通じにくくなったりすることがあるので、ハザードマップはプリントアウトするなどして紙の状態で持っておくことが重要です。地震の場合の避難所と洪水のときの避難所が違うこともあります。また、避難所がすでに満員ということもあり得るので、複数の避難所を確認しておかなくてはなりません。また、一時避難所から、大きな避難所に移動するということもあるので、ハザードマップはすぐに確認できる状態にしておきましょう」(中村 准教授)

(以上、ARUHIマガジン「普段から「水の行方」を意識、「ハザードマップ」の重要性と注意点」より抜粋)

被害に備え「保険」の内容を確認する

“保険の対象”が火災などの損害を受けた場合に、保険金を受け取ることができるのが「火災保険」です。その名前から、火災の被害だけが対象のようなイメージがありますが、実は自然災害による被害も補償してくれる総合保険になります。

一般的に、持ち家の場合は「建物」「家財」の両方に保険をかけ、賃貸物件の場合は「家財」のみにかけます。自分がどちらに保険をかけているか分からない、という方は今すぐ保険証券を確認しましょう。

特に暴風により飛来してきた物が窓ガラスを破るような被害も考えられます。台風被害の際に適用される補償内容は、主に「風災」「水災」「落雷」の3つです。

「風災」とは、強風や突風・竜巻などによる被害のこと。台風以外では春一番や木枯らしが風災に含まれます。「水災」は、台風による豪雨が原因の、川の氾濫や道路の冠水といった被害のことを指します。また「落雷」による家屋の破損も、補償の対象となります。

「風災」「水災」「落雷」の補償がついているのかも確認したほうが良いでしょう。

補償の具体例

風災補償

・強風による屋根やドア、窓ガラスの破損

・飛来物による家屋の破損

水災補償

・台風による豪雨が原因の床上浸水

・土砂災害により家が流される

落雷補償

・落雷による屋根や外壁、テレビアンテナの破損

※細かな補償内容については、ご契約の火災保険のパンフレットや保険会社へご確認ください。

(以上、ARUHIマガジン 「台風に関わる保険や補助制度とは? 家が損害を受ける前に確認を」より抜粋)

年末年始に家族で確認を

上記のハザードマップの確認や保険の見直しだけではなく、もちろん食料などの備蓄見直しも大切な備えです。

甚大な被害をもたらす自然災害の多くは梅雨時や夏場の水害ではあるものの、冬場は大雪に伴う被害も発生する可能性もありますし、地震はいつ起こるかわかりません。

家族のみんなが集まって話し合える、そして動ける年末年始に、ぜひ家の「防災」について確認をしてみてください。

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