住宅は一生の買い物といわれるほど高額です。ただし、一生同じ家に住むという人のほうが少ないでしょう。そのため、転勤や転居などで自宅を手放すと際には高値で売却したいというのが本音ではないでしょうか。少しでも高く売却するコツは、売り時を逃さないことです。この記事ではマンションの売り時の見極め方について詳しく解説します。
ポイント1:不動産相場を見極める
中古マンションの資産価値は、マンションそのものの価値だけでは決まりません。周辺環境や室内の状態も関係しますが、価格に大きな影響を与えるのが需要と供給です。一般に景気が良くなると所得が上がり、購買意欲が高まるため、需要が増えて価格が上昇します。また、需要に対して供給が少ない場合も、価格が上昇します。中古マンションが高値で売却されやすいのは、新築マンションが高額になっている際でしょう。なぜならば、本当なら新築マンションを買いたいという人でも、予算の都合で中古マンションを検討する可能性が高まるためです。売却の際には新築も含めてマンション価格の推移を見る必要があります。特に、かつてのリーマンショックのように経済が低成長の際には新築マンションの価格も下がる傾向にあり、中古マンションでもあまり強気な値付けはできません。
つまり、経済が低成長の際は中古マンションの需要が減少して価格が下落するため、中古マンションの売り時タイミングとは言えません。このような時期は売却には慎重になるべきでしょう。ただし、景気の回復を待って築年数が古くなってしまうと、それはそれでマイナス条件が増えることにもなります。築年数が古くなることによって資産価値が下がる前に売却するという判断も時には必要です。
このように、中古マンションを手放す際には、景気という大きな波にうまく乗れるように準備しておきましょう。さらに、建築費の相場、土地の相場、新築マンション価格、中古マンション価格、住宅ローン金利相場なども指標にして不動産相場を見極めることが大切です。
ポイント2:築15年以内に判断する
マンションの売り時を見極めるうえで、無視できないのが築年数です。当然のことながら、高値がつきやすいのは築年数の浅いマンションです。特に築3年未満であれば、経年による修繕や補修の必要もないので、値引きもなく希望通りの販売価格で売れることもあります。中古マンションを購入する人たちの間で人気なのは、築5~10年ほどのマンションです。新築マンションを購入するよりも割安でありながら、築5~10年であればマンションもまだ全体的にきれいなためです。外観や内装、設備なども古く感じることは少ないでしょう。また、この築年数の中古マンションは、相場の変動が比較的安定しています。
一方で、築10年経った頃から中古マンションの相場は変動が大きくなります。マンションを手放す際には、築10~15年をめどに検討するのが賢明です。なぜならば、築10~15年あたりからマンション全体の設備やタイル外壁などのメンテナンスや修繕が必要なため、修繕積立費や管理費が急に高額になったり、各住戸でもガス給湯器や水回りなどの設備に故障が起きたりするなど、売却に不利な条件が増えてくるからです。築10~15年ほどであればまだまだ購入希望者も多くいますので、売却を希望するなら、できるだけこうした問題が顕在化する前に売却してしまうほうが良いでしょう。
ポイント3:住宅需要が高まる時期
中古マンションの場合、できるだけ購入希望者が多い時期を狙うことも大切です。一般的に、1年のうちで住宅需要が高まる傾向にあるのは、転勤や入学など引っ越しが多い1~3月の春の時期です。続いて、9~11月の秋の時期にも増えます。自分の転居のタイミングにもよりますが、できるだけこの売りやすいタイミングを逃さないように、前もって不動産会社などを介して物件の情報を出しておきましょう。購入希望者が多くいれば競争が生まれ、それだけ高く売れる可能性が高まります。
中古マンションの場合、まだ住んでいる状態や引っ越しの荷造り中の自宅に内覧希望者が見学にやってくることも想定されます。掃除などは大変ですが、できるだけ内覧の希望には応じることが大切です。購入希望者としても、複数見比べたうえで早く家を決めたいと思っている場合が多いでしょう。また、いつでもすぐ見に来られる距離に住んでいる人たちとは限りません。チャンスを逃さないためには、内覧の日程はあまり先送りしないようにしましょう。
一方、8月や年末などは住宅需要が落ち着く傾向にあります。中古マンションにとって不利になるのが、いつまでも売れ残っている物件というイメージがつくことです。たとえば、春のタイミングで売れなければ、いったん夏の時期には情報を出すのを控えて、秋のタイミングで再度、新着情報として出してもらうのもひとつの方法です。
売り時を見極める優先順位とは
適切な売り時を見極めるためにはさまざまな指標を参考にする必要がありますが、大事な3つの指標の優先順位は次の通りです。
まず考慮すべきなのは経済情勢です。これは自分たちではコントロールできませんが、日ごろからニュースや新聞などを読んで経済情勢を読み解く習慣をつけましょう。特に住宅ローン減税など住宅に関する政策、新築や中古マンションの価格、建設費、住宅ローン金利などには敏感になっておきましょう。
次に重要になるのが築年数です。こちらは築年数が古くなるほど不利になっていくことを踏まえたうえで、経済情勢との兼ね合いも見ながら、なるべく築15年までを目安に売り時を見極めましょう。そして、購入希望者が増えやすいシーズンに内覧が行えるように、需要期の1カ月程度前から余裕をもって売り出し始めておくことです。
また、中古マンション相場に影響する要因として注意しておく必要があるのが、東日本大震災の復興と東京オリンピック特需を起因とし、その後の相続税改正による節税対策や不動産投資ブームによる貸家建設の増加などで、建築費相場や人件費が高騰したことです。加えて、日銀の大胆な金融緩和によって、住宅ローン金利は過去最低水準となり、これらの要素が重なったことでマンション価格は2018年までは高値で推移してきました。ただし、こうしたマンションの価格高騰の勢いは高値警戒感からすでに鈍化しており、2019年10月には消費税の増税も控えているため、オリンピックイヤーを境目に不動産市場は不確定要素が多いと見られています。そのため、中古マンションの売却を検討しているのであれば、オリンピックイヤーまでにできるだけ早いタイミングで動いておくほうが良いでしょう。
マンション査定は定期的に受けておく
前述のように、マンションの価格はタイミングによって大きく上下します。総額が大きい物件では、数百万の単位で変動しますので、すぐに売る気がなくても定期的にマンション査定をしておきましょう。また、1社だけに査定をお願いするのではなく、できるだけ複数の不動産会社に査定してもらっておくほうが、より正しく中古マンション相場が把握できます。その際、今後の不動産市場の見通しについても解説してもらい、知見を広げておきましょう。マンション査定の際、近隣の似たような築年数と間取りのマンションの売却価格についても教えてもらうと、自分たちの物件の値付けの際の参考になります。
何より、査定の際に複数の営業担当者が「ぜひ自社に取り扱わせて欲しい」と積極的な姿勢を見せるのであれば、そのマンションは高く売れる可能性があると言えるでしょう。今後売るかもしれないという意思を見せておくことで、担当者が抱える顧客のなかで購入したいという人と良い条件でマッチングしてもらえる可能性も高まります。このように、査定には売り主にとってもさまざまなメリットがありますので、ぜひ定期的に受けておくことをおすすめします。
中古マンション価格は築年数とともに下落することを知っておく
マンションを売るタイミングは、人それぞれの事情によります。しかし、共通して言えるのが、一部の例外的な物件を除き、中古マンションの価格は築年数とともに下落するということです。適切な売り時を逃さないためには、経済情勢を正しく読み解き、自分のマンションの資産価値をきちんと把握しておくことが大切です。賢く見極めることができれば、その分だけ割高に取引できます。特に、築年数が浅めのマンションであれば、経済情勢によっては自分が購入した価格よりも高い値段で売却できるケースもあります。マンションは自分や家族にとって大切な資産ですので、できるだけ多くの情報を収集して、有利な売却を行いましょう。
(最終更新日:2019.10.05)