長く低金利が続いている現在、変動金利(半年型)で住宅ローンを借りている方の中には、「金利上昇に備えること」を忘れている人も多いでしょう。政府が物価上昇目標を掲げる中、長期的に見れば金利が今より上昇する可能性は高いと思います。気づいた時には返済できなくなっていたということがないように、低金利の今こそ金利上昇への備え方を考えておきましょう。
住宅ローンを変動金利(半年型)で借りている人の注意点
金利の仕組みについて、借入時には確認したはずでも、住宅ローンを借りた後には忘れてしまった方も多いのではないでしょうか。この記事では、変動金利のリスクについてご説明しますが、まずは変動金利(半年型)について復習しておきましょう。
変動金利(半年型)は他の金利タイプと比べ、金利が低いことが特徴です。特にイオン銀行、ソニー銀行や住信SBIネット銀行など、ネット銀行の金利の低さは魅力的といえるでしょう。しかし、将来的に金利が上昇したときは、上昇分の利息を負担するため返済額が増えてしまいます。そのため、当初の返済計画を見直さなければなりませんし、場合によっては返済年数が延びてしまうこともあるでしょう。
たとえば借入金額3,000万円のローンを借入期間35年で組んだ場合、当初の毎月返済額は、変動金利(半年型)が0.775%とすると81,576円、全期間固定金利型が1.54%とすると92,444円と1万円以上の差になります。借り入れ当初だけを見れば変動金利(半年型)はとても魅力的です。
しかし、変動金利(半年型)には金利が半年ごとに見直されるという特徴があります。最長35年間という住宅ローンの返済期間を考えると、借り入れ当初の金利から変動がないというのはまずあり得ないことでしょう。
<変動金利の特徴>
・適用金利が半年ごとに変わっても毎月返済額は5年間固定
・金利上昇時の5年後の返済額上限は従前の125%までの金額
・毎月返済額は同じでも半年ごとに元金と利息の割合は見直されている
・急激な金利上昇時には、未払利息が発生する可能性もある
上記のように、変動金利(半年型)の場合、金利見直しは半年ごとですが、毎月の返済額見直しは5年に1度となっています。つまり、毎月返済額が5年間は一定であっても、半年毎に金利が見直されるタイミングで、元金と利息の割合はその度に変更されます。
そのため、金利が上昇すれば、毎月返済額に占める利息の割合が増え、元金の返済がなかなか進まなくなるということもあります。もし、急激な金利上昇があった場合は、利息分が毎月返済額を上回ってしまうこともあります。
この、払いきれなかった利息のことを「未払利息」と言いますが、未払利息が発生すると、毎月返済を行っても元金は全く減らず、払いきれない利息が増えていくことになります。多くの場合、未払利息分は残りの元金とともに、完済予定の時期に全額を一括で返済しなくてはなりません。
変動金利(半年型)で借りている人が抱えるリスクは?
現在は低金利が続いていますが、金利上昇のリスクを考えると安心はできません。実際に金利が上昇した際にどのようなリスクがあるのか確認しておきましょう。
金利上昇の影響に気づきにくい
変動金利(半年型)は、金利が急激に上昇してもすぐには毎月返済額が変わらないため、金利の上昇に気づきにくいというリスクがあります。
たとえば、バブル期の1990年には1年間で金利が6%から8.5%に上昇しました。年利6%で3,000万円を35年返済で借りていた場合、毎月返済額は約17万円、年間の返済額は約205万円となります。1年後金利8.5%に上昇しても返済額は変わりません。しかし本来の年間返済額は約253万円となり、約48万円が未払利息として次の年以降に繰り越されます。
もし、繰り越された元金や未払利息をお子さんの教育費がピークに差し掛かった時に返すことになってしまったら、家計への負担が急に大きくなり、家計破たんにもなりかねません。
変動金利(半年型)が上昇した時はすでに固定金利型は上昇している
今は低金利なので、変動金利(半年型)で借りている人の中には、金利が上昇してきたら全期間固定金利型へ変更すれば大丈夫、と思っている人もいるかもしれません。しかし、変動金利(半年型)の上昇に気づいた時には、すでに全期間固定金利型は上昇してしまっている可能性もあるのです。
全期間固定金利型の金利の決定基準になる新発10年国債の金利は、インフレや景気上昇の予想の段階で上昇し、変動金利(半年型)の金利の基準になる短期金利は、景気動向等を見ながら日銀が決める政策金利で決まります。政策よりも経済の予想のほうが早く金利に反映されるので、全期間固定金利型のほうが早く上昇してしまいます。
金利上昇に備えるためには、変動金利(半年型)ではなく全期間固定金利型の動向、さらには新発10年国債の金利に注意が必要です。また、仮に金利の動向を読んで借り換えをした場合、手数料や保証料などの諸費用が発生することも認識しておいてください。
<変動金利(半年型)と全期間固定金利型の金利の決まり方・変動の要因>
変動金利(半年型) | 全期間固定金利型 | |
一般的な金利の決まり方 | 短期プライムレートに連動 | 新発10年国債の金利(長期金利)に連動 |
金利が上昇する要因 | 市場に出回る資金量で決まる。日銀が金融調整によってコントロールできる | ・インフレ予想 ・景気上昇予想 ・将来への不確実性(リスクプレミアム) |
変動金利(半年型)はその特徴から金利の上昇に気づきにくく、気づいた時には固定金利は借り換えができないほど上昇している可能性も高いのです。金利が低い間にこそ、金利上昇に備える対策が大切です。
【続き】住宅ローン金利が上昇しても、家計が破たんしないために今からできる備え~後編はこちら
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