住宅ローン金利が上昇しても、家計が破たんしないために今からできる備え~後編~

前編では半年ごとに金利が見直される変動金利(半年型)の特徴と、金利上昇のリスクについて確認しました。当初の低い変動金利(半年型)で返済計画を立ててしまうと、金利が上昇して返済額が増えた時、返済しきれなくなる可能性もあります。後編では、金利が上昇しても家計が破たんしないために今からできる備えについて考えておきましょう。

住宅ローンの金利上昇に備えるために今からできることは?

変動金利(半年型)には当初の毎月返済額が少ないというメリットと抱き合わせに、金利上昇の際に返済額が上がるという大きなリスクもあることがわかりました。では、金利が上昇したときにあわてないために、どのような備えをしておけばよいのでしょうか? 

毎月返済額から金利のリミットを決めておく

子どもが小さい時は余裕があった家計も、中学、高校、大学と進むにつれ、年間の家計収支が赤字になる家庭がほとんどです。こうした将来の家計に備えるためには、子どもの年齢と併せて金利が上昇したときの毎月返済額を試算し、上限を決めておくのも1つの方法です。

下の図表は5年ごとに金利が1%上昇した場合の毎月返済額を表しています。

<図表1 3,000万円を30年返済で借りた場合の20年間の毎月返済額推移>

返済期間 子どもの年齢 金利 毎月返済額
当初5年 5歳~ 3歳~ 0.775% 9万3,422円
6~10年目 10歳~ 8歳~ 1.775% 10万5,193円
11~15年目 15歳~ 13歳~ 2.775% 11万5,410円
16~20年目 20歳~ 18歳~ 3.775% 12万3,699円

※子どもが2人いると仮定

教育費の負担が重くなる11年目に金利が2.775%に上昇し、当初と比べて毎月返済額も約2万円上昇しています。また、子ども2人が大学生になる16年目に3.775%に上昇すると当初と比べ毎月約3万円も上昇します。

こうした試算から、たとえば家計の中で毎月返済額は12万円までに抑えたいと考えるならば、金利の上限は3%程度が目安となるでしょう。変動金利(半年型)よりも全期間固定金利型のほうが先に上昇する可能性が高いことを考えると、全期間固定金利型の中でも金利が低い【フラット35】が3%になる前に対策を考えておく必要があります。

具体的な金利上昇への備えとしては、①「全期間固定金利型への借り換え」、②「繰り上げ返済」、③「同じ金融機関内で全期間固定金利型の金利タイプへの変更」の3つの方法があります。以下その内容を確認しておきましょう。

完済まで毎月返済額が変わらない「全期間固定金利型への借り換え」

金利上昇への備えとしてまず考えられるのは、全期間固定金利型への借り換えです。完済まで毎月返済額が変わらないので家計の中での計画も立てやすく、最も安心な対策です。借り換えには住宅ローンの審査と団体信用生命保険の審査があるので、健康で安定した収入があることが必要です。

全期間固定金利型【フラット35】への借り換えは当初の住宅の購入費や建設費に対する融資額の割合に関係なく「融資比率9割以下」の金利が適用されます。2016年1月現在では1%台の半ばで全期間固定金利型への借り換えができます。

下の図表は当初0.775%の変動金利(半年型)が、3年目に1%上昇しその後7年ごとに0.3%ずつ上昇したと仮定して全期間固定金利型との返済額を比較した数字です。

<図表2 現在の残高が3,000万円で残りの返済期間30年の場合>

   金利タイプ 
全期間固定金利型 変動金利(半年型)
借入金利 1.54%

当初2年間:0.775%
以降7年間:1.775%
以降7年間:2.075%
以降7年間:2.375%
以降7年間:2.675%

 毎月返済額 10万4,112円

当初5年間:9万3,422円
6~10年目:10万8,613円
11~20年目:11万2,061円
21~25年目:11万5,392円
26~30年目:11万7,111円

 総支払額(うち諸費用・団信特約料) 3,925万円(188万円) 3,952万円
 利息の差額 全期間固定金利型が ▲27万円 

※全期間固定金利型は2016年1月の【フラット35】最多金利
※住宅金融支援機構ローンシミュレーターで試算

この表から3年目に金利が一気に1%上昇すると、その後の金利上昇が7年ごとに0.3%であっても、総支払額は全期間固定金利型に借り換えたほうが27万円安くなることがわかります。また、毎月返済額も6年目からは全期間固定金利型のほうが安くなっています。

さらに全期間固定金利型への借り換えは、総返済額の損得だけではなく、金利上昇の心配がない、つまり“完済まで毎月返済額が変わらない安心感を得られること”が大きなポイントです。金利上昇した場合の将来の毎月返済額の推移や総支払額も確認しながら借り換えるべきか検討しましょう。

「繰り上げ返済」で返済額の上昇を抑える

借り換えは金融機関の審査が必要ですので、誰もが必ずできるわけではありません。たとえば、夫婦でローンを組んでいたのに、子どもができてどちらかが仕事を辞めたり、会社員だったのに自営業者になっている人などは、借り換えが難しい場合があります。また、住宅購入後に大きな病気を患っていると、団体信用生命保険への加入が難しくなります。【フラット35】は団体信用生命保険に加入できなくても借りることができますが、万が一のことを考えると心配です。

こうした場合は審査の必要がない繰り上げ返済を検討しましょう。繰り上げ返済は元金の返済に充てることができるため、返済額に応じた利息を減らす効果があります。また、借り換えのように諸費用がかかることもなく、たくさんの書類の準備をしなくてもよいため手間がなく気軽にできます。しかし、金融機関によっては手数料がかかりますので事前に確認しておきましょう。

繰り上げ返済には期間を短縮するタイプ(期間短縮型)と毎月返済額を減額するタイプ(返済額軽減型)があります。期間短縮型のほうが利息を減らす効果は大きいのですが、金利が上昇した時の毎月返済額を抑えたいのであれば、返済額軽減型を選びましょう。

ただし、繰り上げ返済には余裕資金が必要です。金利が上昇する時期と教育費の負担が大きくなる時期が重なると家計に余裕がなくなり、予定していた繰り上げ返済ができなくなることもあります。長い時間をかけて繰り上げ返済のための資金を積み立てておきましょう。

「同じ金融機関内で変動金利(半年型)から全期間固定金利型へ金利タイプの変更」

借り換えは審査が難しそう、繰り上げ返済するほど資金に余裕はないという方は、現在借りているローンの金利タイプを変動金利(半年型)から全期間固定金利型に変更することを検討してみましょう。

最近では、ネットで手軽に金利タイプの変更ができるローンもあります。しかし、前述したように、変動金利(半年型)が上昇を始めた時には全期間固定金利型はすでに大きく上昇してしまっています。変更を考えるなら金利が低い今のうちに勇気をもって行うことがポイントです。

また、一部ネットバンクなどを除くと、変動金利(半年型)から20年超の全期間固定金利型への変更はできない場合が多くなっています。自分が借りている銀行が何年固定のタイプに変更できるのか、手数料はいくらかかるのか、確認しておきましょう。

<図表3 変動金利(半年型)からの①「全期間固定金利型への借り換え」、②「繰り上げ返済」、③「同じ金融機関内で全期間固定金利型の金利タイプへの変更」比較>

  金利・繰上返済額 毎月返済額 繰上返済前の毎月返済額
(1)【フラット35】に借り換え 1.54% 10万4,112円 -
(2)変動金利のまま繰上返済(返済額減額型) 10年後:100万円
20年後:100万円
10万6,967円
10万776円
11万2,061円
11万5,392円
(3)全期間固定金利型に変更 1.819% 10万8,190円 -

※残高3,000万円、残期間30年、変動金利(半年型)の金利は図表1と同じ
※【フラット35】は2016年1月最多金利
※全期間固定金利型はソニー銀行の1月金利
※住宅金融支援機構ローンシミュレーターで試算

まとめ

金利上昇への備えは、低金利で安定した収入があり、家計にゆとりがあるほどさまざまな選択肢が広がります。金利上昇に備える4つのポイントを整理してみました。

・金利が低い今のうちに全期間固定金利型に借り換える
・借り換えの審査に通るためには、健康で安定した収入があるうちに即行動
・借り換えが難しければ返済額に余裕があるうちに繰り上げ返済の資金を貯めておく
・同じ金融機関で変動金利(半年型)から全期間固定金利型に変更するなら、長期金利も低水準である今のうちに行う

変動金利が上昇してからでは借り換えや金利の変更も難しく、資金を貯めて繰り上げ返済をすることしか対策がなくなってしまいます。しかし、その上昇時に子供の教育費などの負担が増えていたら、予定していた繰り上げ返済も難しいかもしれません。

低金利の今こそ金利上昇に備えるチャンスです。金利が上昇したときに返済が滞ってせっかく買った家を手放すことがないように、将来にわたって安心して住宅ローンを返していける対策を今からとっておきましょう。

→前編の「変動金利(半年型)で借りている方へ 金利上昇への備え方~前編~」へ

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(最終更新日:2019.10.05)
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