住宅ローンの「元利均等返済」と「元金均等返済」の違いは?

住宅ローンの返済方法には「元利均等返済」と「元金均等返済」の2種類があります。総返済額は元金均等返済の方がお得なのに、ほとんどの人が元利均等返済を選んでいるのはなぜでしょう? その違いと特徴を知って、自分にあった住宅ローンの返済方法を選びましょう。

住宅ローンの元利均等返済と元金均等返済の違いは?

「元利均等返済」は元利金(元金と利息)を合計した毎月の住宅ローン返済額が一定で、毎月の返済額の中で元金と利息の返済割合が変わっていく返済方法です。

元利均等返済の一番の特徴は、金利が変わらない限り返済額が一定で、家計の中で固定費として管理しやすいことです。しかし、総返済額の残高が多い返し始めは返済額に対する利息の割合が大きく、元金均等返済に比べると元金の減り方が遅くなるため、総返済額は多くなります。

一方、「元金均等返済」は毎月の元金の返済額が均等で、金利に関係なく元金は一定割合ずつ減少します。そのため元金に利息を上乗せした返済額は毎月減少します。

元金均等返済の特徴は、第1回目の返済額が最も多く、徐々に返済額が減少することです。当初の返済額は大きくなりますが、元金の減りが早いため総返済額は元利均等返済より少なくなります。

総返済額では元金均等返済がお得

元利均等返済と元金均等返済で実際にいくら返済額が変わってくるのか、試算してみましょう。

<借入額3,000万円、全期間固定金利1.5%、返済期間35年の場合>

  総返済額 当初返済額

192回目
返済額

420回目
返済額

元利均等返済 3857万9007円 9万1855円 9万1855円 9万1762円
元金均等返済 3789万3605円 10万8928円 9万1874円 7万1757円
差額 68万5402円 ▲1万7073円 ▲19円 2万0005円

35年間の総返済額は元金均等返済のほうが約70万円ほどお得になりますが、当初の返済額は1万7000円ほど高くなります。192回目の返済となる16年後には返済額はほぼ同額になり、420回目の返済となる35年後の最終返済額では元金均等返済が2万円ほど少なくなっています。

総返済額ではお得な元金均等返済ですが、当初の返済額が大きくなること、毎月の返済額が変わるため家計管理がしにくくなることが注意点です。

また、元金均等返済は当初の返済額が高くなるため、住宅ローン審査を受けるときの年収に対する返済額の割合(返済負担率)※が高くなります。各金融機関により審査で使う金利や年収による返済負担率の上限は異なりますが、もし、返済負担率いっぱいの借り入れを考えている場合は、審査に影響する可能性もあります。

※返済負担率=年間返済額÷年収
金融機関によって年収による返済負担率の上限が30%、35%などと決まっている。

元金均等返済に向いているのはどんな人?

このような特徴を踏まえたうえで、元金均等返済に向いている人はどんな人かを考えてみましょう。

・審査時の年収に対する返済額の割合(返済負担率)に余裕がある人
・子どもが小さく当初の返済額にゆとりがあるが、将来の返済額をおさえたい人
・年収が高く当初の返済額だと家計にゆとりがある人
・借入額が少なく当初の返済額が少ない人
・毎月の返済額が変わっても、家計管理ができる人

たとえば、今は子どもが小さく教育費がかからないため返済額を多くできるが、将来は教育費と住宅ローンの負担が心配、という子どもが小さい世代には合理的な返済方法です。しかし、住宅購入で預貯金を使った後の家計で無理がない返済額かどうかはきちんと確認しておきましょう。

元利均等返済は、繰り上げ返済で総返済額を減らす

では、中学生や高校生の子どもを持ち、すぐに教育費の負担が重くなる家計の場合、元金均等返済のようなメリットは受けられないのでしょうか?

当初の返済額をおさえたい場合は元利均等返済で借りてから、繰り上げ返済で総返済額を減らすことを考えてみましょう。たとえば、教育費の負担が重い当初は元利均等返済で固定費として返済額を管理し、教育費の負担が終わった10年後と15年後に100万円を目安に繰り上げ返済を行った場合の総返済額を試算するとどうなるでしょう。

借入額3,000万円、全期間固定金利1.5%、返済期間35年
120回目(10年後)と180回目(15年後)に100万円を目安に期間短縮型の繰り上げ返済した場合、繰り上げ返済手数料はなし

  繰り上げ返済額 借入期間 総返済額 うち利息
繰り上げ返済前 10年後:95万6千円 35年 3857万9007円 857万9007円
繰り上げ返済後 15年後:97万9千円 32年7ヶ月 3784万9543円 784万9543円
差額   2年5ヶ月 72万9464円

2回の繰り上げ返済で2年5ヶ月期間を短縮することができ、合計で約73万円の利息を減らすことができ、元金均等返済との利息の差額を埋めることができました。

元金均等返済は繰り上げ返済をしなくても当初の返済額が多く、総返済額をおさえることができます。しかし、ライフプランや家計の状況により無理をして元金均等返済を選ぶのではなく、元利均等返済を選んでも家計に余裕ができた時に繰り上げ返済することで、総返済額を減らすことができます。

住宅ローンは20年、30年と長いお付き合いになります。無理せず自分のライフサイクルに合わせた返済方法を選びましょう。

なお、全期間固定金利の【フラット35】は元金均等返済の取り扱いができますが、銀行など金融機関によっては取り扱いがない場合もあります。事前に確認しておくことをお勧めします。

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(最終更新日:2021.04.30)
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