マンション購入後の隠れたコスト! あらかじめ知っておきたい管理費・修繕積立金のポイント

マンション購入後、住宅ローンの返済とともに毎月費用が発生するのが管理費・修繕積立金です。管理費・修繕積立金は、長く快適に暮らすための必要な費用。住宅ローンを完済した後も負担が生じるので、老後のライフプランにも関わってきます。今回は、マンションの管理費・修繕積立金について紹介します。

「マンションは管理を買え」 人件費上昇などで上がる管理費

「マンションは管理を買え」という言葉があります。エントランスがきれいにいつも保たれているか、外装の錆や腐食はないか、植栽はきちんと剪定されているか、など、築年数が古いマンションでも管理状態の良いマンションは、エントランスまわりや共用廊下もきれいに清掃されています。美観の維持はマンションライフの快適性だけでなく資産性にも影響します。こうした維持管理や修繕のために使われるお金が、管理費と修繕積立金です。まずは、管理費についてみてみましょう。

管理費とは、エントランスや共用廊下など共有部分の清掃や設備点検など、快適に暮らせるようにマンションを維持していくために使われるお金です。管理人や清掃員の人件費、共用部分の水道光熱費、エレベーターや機械式駐車場の保守点検費、共用部分にかかわる火災保険料などが管理費で充当します。また、日常的な補修費なども管理費を充てます。

公益財団法人東日本不動産流通機構発表の首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2023年度)によれば、2023年度に機構を通し成約した首都圏中古マンションの月額管理費は1戸当たり平均1万2,831円となっています。前年度と比べ、1平方メートル当たりの管理費は2.1%上昇。人件費や光熱費などのアップで上昇傾向にあります。

管理費・修繕積立金等の年度別推移
首都圏中古マンション管理費・修繕積立金等の年度別推移(出典:東日本不動産流通機構

築年数別に見ると築10年以内が最も高く、月額1万5,873 円、1平方メートルあたりの月額は245円となっています。いっぽう築30年超では月額1万145円、1平方メートルあたりの月額は178円です。

マンションの共用部は、時代によって大きく異なります。昭和40年代に見られた、エレベーターのない4階建などの低層階のマンションは、保守点検費用などが抑えられます。一方、都心部などに多い24時間有人管理体制など手厚いサービスを提供するマンションの場合、管理費は高めになります。提供されるサービスや共用部の充実度によって管理費は変動するので、管理費が低いから良いというわけでもありません。

戸数規模別で比べると、50戸未満が1平方メートルあたりの月額管理費が230円と最も高くなっており、50戸~99戸の198円と比べ高くなっています。200戸以上は208円と、多くの大規模マンションに備わっている多彩な共用施設の維持・メンテナンス費用が掛かっていることを示しています。

一般的にはスケールメリットがあるほうが管理費は割安になります。戸数規模の小さいマンションは、管理費を抑えるために日勤管理や巡回管理など管理人を常駐させず、機械管理などでサポートする体制をとるケースが多く見られます。また、新築マンション価格の上昇にともなって充実した管理サービスを企画するマンション比率が高まったこともあり、新築マンションの管理費は上昇してきています。

管理費に加えてよく確認したいのが、マンションの駐車場料金です。都心近郊のマンションの場合は、3万円を超える設定の物件も。車利用の家族なら相応の負担になります。駐車場料金の設定は、戸数規模に対する台数など物件毎に異なります。中古マンションの中には、順番待ちで駐車場を確保するのに数年間かかるケースも。駐車場の空き状況もよく確認しましょう。

大規模修繕などの費用を毎月積み立てる修繕積立金

マンションの修繕積立金とは、エントランスやエレベーター、屋上などの共用部分を維持・修繕するために定期的に行われる大規模修繕などの費用を毎月積み立てて確保するものです。多くのマンションでは、設備の破損や老朽化を防ぐための長期修繕計画が立てられており、大規模修繕が行なわれています。外壁タイルの補修など、まとまった予算が必要になるため、積み立てておくことで一時的な出費を無くしたり減らしたりできます。地震や大雨など天災や不測の事故で必要となる共用部の修繕などにも使われます。

公益財団法人東日本不動産流通機構発表の首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2023年度)によれば、2023年度に機構を通し成約した首都圏中古マンションの月額修繕積立金は1戸当たり平均1万1,907円となっています。前年度と比べ、1平方メートル当たりの修繕積立金は3.1%も上昇。管理費同様に人件費や設備費などの上昇で高くなる傾向にあります。

修繕積立金の額は、管理費と異なり築10年以内が9,696円。築11~20年が1万4,039円。築21年~30年が1万4,300円と、築年数を経るごとに高くなる傾向にあります。これは、多くの新築マンションが修繕積立金を徐々に引き上げる「段階増額積立方式」を採用しているからです。計画期間中の積立額を均等とする「均等積立方式」と異なり、当初の積立額を抑え、期間中で段階的に増額していく「段階増額積立方式」は、長期修繕計画を基に引き上げられます。

積立方式
築年数別修繕積立金の積立方式(出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」

新築マンションの中には、販売をしやすくするため当初の修繕積立金額を抑えるケースもあり注意が必要です。国土交通省による「令和5年度マンション総合調査」によれば、2015年以降に完成したマンションの中で、均等積立方式と回答したのは11.0%。81.2%が段階増額積立方式となっています。後々の引上げ幅が大きくなるケースや大規模修繕費が足りない場合は、一時金を徴収することもあります。新築マンションの場合は、長期修繕計画(案)をよく確認しましょう。

中古マンションは、大規模修繕履歴や実施予定、修繕積立金の総額を確認

新築マンションの場合、大規模修繕を12年目から15年目ぐらいに実施するケースが多く、近年では修繕サイクルを延ばす検討もされています。一方、中古マンションの場合は、過去の大規模修繕の履歴が重要です。マンションによっては、入居後すぐに大規模修繕が始まるケースも。大規模修繕の手法によっては住み心地に影響を与えるので、よく確認しましょう。

特に留意したいのが、将来に備えてマンション全体の修繕積立金が十分確保されているかの確認。築年数の古いマンションの中には、長期修繕計画を立てていないマンションもあります。

マンションの修繕工事
マンションの修繕工事(画像素材:PIXTA)

国土交通省が実施した「令和5年度マンション総合調査」によれば、長期修繕計画を作成していると答えた管理組合の比率は88.4%。作成していないと回答した管理組合は7.3%となっています。計画期間25年以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金の額を設定しているマンションの割合は59.8%。長期間の修繕計画を立てているマンションのほうがより安心でしょう。

マンション総合調査によれば、「長期修繕計画上と実際の修繕積立金積立額の差」については、36.6%が計画に対して不足と回答しています。また、計画に対して20%超の不足があるとの回答は11.7%でした。一方、計画に比べて余剰があるとの回答は39.9%あり、マンションごとに修繕計画の準備状況が大きく異なっています。

築年数の古いマンションではマンションの修繕に加え、住民の高齢化も課題となっています。「令和5年度マンション総合調査」によれば、マンション居住者のうち世帯主が70歳以上を占める割合が25.9%と過去最高に。1984年以前に建てられた築年数の古いマンションに限れば、70歳以上が55.9%を占める結果になっています。2005年~2014年に完成したマンションにおいても70歳以上の割合が15.9%となっており、マンション居住者の高齢者の割合は高まっています。築年数が古いマンションの中には、耐震基準を満たさないマンションであっても耐震工事を実施する予定がないものもあります。耐震性の有無も十分確認しましょう。

中古マンションを検討する上で参考になるのが、過去の修繕履歴や管理組合の修繕積立金の総額などを確認できる「管理に係る重要事項調査報告書」です。マンションの管理を担当している管理会社などが発行するもので、管理費の滞納状況なども確認できます。通常は売却を担当している仲介会社が入手します。管理組合の総会の議事録なども入手できればなお良いでしょう。

インフレ傾向が続けば、管理費・修繕積立金は、さらに上昇する可能性も

すでに紹介したように、世界的な資源やエネルギー価格の上昇、人材不足による人件費の上昇で、マンションの管理費や修繕積立金は上昇傾向にあります。中でも大規模修繕にかかわるコストは建設資材や人件費の上昇の影響を大きく受けており、当初想定額を上回るケースも多くみられます。タワーマンションのなど特殊な形状のマンションは、請負う業者も限られているため費用が高くなる場合も。将来的に修繕積立金が引き上げられる可能性があることを踏まえて、資金計画を考えましょう。

住宅ローンを完済しても、管理費および修繕積立金、固定資産税などはずっと発生します。マンションを終の棲家として選ぶのであれば、収入の確保や十分な貯蓄が必要です。その点も考慮して、マンション選びを進めていきましょう。

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