年収500万円の人が住宅ローンを組む場合、無理なく返せる額の目安は?

住宅ローンを組むにあたって「自分の年収だと、いくらまでなら問題なく返していけるだろう」と疑問に感じる人は多いでしょう。

この記事では、年収500万円の場合の「借入適正額(返済できる金額)」と「借入限度額(借りられる金額)」はそれぞれいくらか解説します。両者の違いを理解したうえでローン計画を練りましょう。

あわせて、無理のない返済を実現するためにすべきことも紹介します。

年収500万円の人の借入適正額はいくら?

まずは、家計に余裕を持って問題なく返済していける借入額(借入適正額)の目安を知っておきましょう。

一般的には、奨学金や自動車ローンなど他の借り入れを含む月々の返済額が、手取り月収の20~25%程度に収まっているのが適正水準といわれています。

額面年収500万円(ボーナスなし)の場合、手取り月収は32万~35万円くらいです。つまり、返済額が月8万円前後であれば、無理なく返済できるといえるでしょう。

月額8万円の返済というと、35年ローン(頭金なし・ボーナス返済なし・固定金利1.8%・元利均等返済)で2,500万円程度の借り入れに相当します。

もう一つの目安として、借入適正額は年収の約5倍ともいわれています。年収500万円だと、やはり借入額2,500万円が一つの基準となりそうです。

年収500万円の人の借入限度額の目安は?

一方で、年収500万円の人が借りられる金額の上限(借入限度額)は、年収の8~10倍程度が目安といわれています。年収500万円だと、4,000万~5,000万円ほど借りられる計算です。ただし、上述の借入適正額とはかなり差があります。

ここで、年収に占める各種ローンの年間返済額の割合を返済比率(返済負担率)といいます。住宅ローンを提供している金融機関では、返済比率(返済負担率)30~35%を上限とするのが一般的です。40%程度まで借りられるところもありますが、多くはありません。

たとえば【フラット35】の場合、年収400万円以上であれば返済負担率35%以下が融資の基準とされています。したがって、年収500万円×35%=175万円(月額約14.6万円)です。35年ローン(頭金なし・ボーナス返済なし・固定金利1.8%・元利均等返済)の場合は、4,500万円程度の借り入れに相当します。

住宅ローンを無理なく完済するためにすべきことは?

前述のとおり、無理なく返済できる借入額は年収の5倍程度までです。無理して高額な家を購入すると、あとから生活が苦しくなってしまう可能性があるので注意しましょう。

続いて、問題なく完済するために気をつけたいポイントを5つ紹介します。

住宅関連の支出を手取り月収の30%程度に抑える
家を購入すると、住宅ローンの返済額以外にも頭金や税金、各種手数料、保険料、修繕費などがかかります。ローン返済以外のさまざまな費用も想定したうえで、資金計画を立てるようにしましょう。

目安として、住宅関連の支出の総額を手取り月収の30%程度に抑えるとよいでしょう。賃貸住宅を借りる際も「家賃は手取りの3割まで」とよくいわれますが、同様の理由です。

一般的に、住宅購入時にかかる諸費用は物件価格の5~10%程度といわれています。2,500万円の家なら125万~250万円、4,500万円の家なら225万~450万円くらいです。

もし借入限度額である「年収の8~10倍」の住宅ローンを固定金利で組むと、毎月の返済額は13万~16万円になります。購入後にかかる費用や将来必要になる修繕への備えなども含めて考えると、手取りの約半分を住宅関連支出が占めることになり、家計に無理が生じる可能性が高いでしょう。

税金や手数料などの金額は、購入する住宅によって差があります。購入を決める前に、いくらくらいかかるのか必ず確認しておきましょう。

頭金を入れる際に、必ず生活防衛資金を残しておく
ローンの借入額を抑えるために、頭金を入れるという方法もあります。欲しいと思った家の価格が想定より高くても、頭金をたくさん入れることができれば、月々の返済額を理想的な金額(8万円程度)に抑えられるかもしれません。

ただ、手元の資金のほとんどを頭金としてしまうのはおすすめしません。万が一のために「生活防衛資金」を手元に残しておくことも大切です。

生活防衛資金とは、病気や事故、失業、災害など突発的に大きな出費が発生したときに備えて確保しておくお金のことです。生活防衛資金として生活費6ヶ月分程度の蓄えがあれば、いざというときに対応しやすく、家計に影響を与えにくいとされています。

頭金を入れる場合は、将来を見据えて余力を持たせた状態で投入するようにしましょう。

教育資金や老後資金の準備や支払いに支障が出ないよう注意する
人生において特に大きな出費となるのは、住宅資金、教育資金、老後資金の3つだといわれています。

住宅購入にお金をかけすぎると、残りの2つの支払いや準備に支障が出てしまう可能性があります。実際、教育費の負担が大きくなる時期と住宅ローンの支払いが重なって家計が圧迫されたり、住宅ローンの支払いが原因で充分な老後資金を準備できなくなったりするのはよくあることです。

目先のことだけでなく数十年後の未来を想像して、限りあるお金をいつ何にどれくらい配分するか、バランスをよく考えてみましょう。

将来の負担を軽減する方法としては、たとえば以下のようなものがあります。

・元金均等返済を選ぶ
・繰上返済を検討する

ローンの返済方式には「元利均等返済」と「元金均等返済」があります。元利均等返済のほうが一般的で、返済額(元金+利息)が一定なのが特徴です。対して、元金均等返済は元金だけが一定です。当初の返済額は多くなるものの、時間が経つにつれて少なくなっていきます。

今、子どもが小さくて教育費があまりかからない状態なら、元金均等返済を選んでおくのも一つの方法です。また、金銭的に余裕があるときに繰上返済を行うのも有効です。

繰上返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」があります。期間短縮型は、月々の返済額は変わらず返済期間が短くなるものです。返済額軽減型は、返済期間は変わらず月々の返済額が減少します。

リタイア時期までに完済できる返済計画を立てる
住宅ローンを組むなら、リタイア時期までに完済できるよう返済計画を立てておくのがおすすめです。

定年退職などで収入が減少してからも、それまでどおりの返済が続くようであれば、住宅ローン破綻等のリスクが高まります。

「退職金で繰上返済するつもり」という人もいますが、想定通りの金額を受け取れるかは不確かです。あるいは退職金をローン返済に充てた結果、老後の生活費が足りなくなる可能性もあります。

また、返済期間が長くなればなるほど月々の返済額は少なくなりますが、利息の負担は重くなります。

完済予定時期がリタイア後になる場合は、積極的に繰上返済を検討するなど、老後に困らないよう対策しておきましょう。

安易にペアローンや収入合算を選択しない
1人分の収入では充分な借り入れができない場合の選択肢として、ペアローンや収入合算があります。

ペアローンとは、一つの物件に対して2つの住宅ローンを組むことです。収入合算とは、申込者本人だけでなく配偶者などの収入も合算して審査を受ける方法です。夫婦や親子で協力して住宅を購入したいときに便利ですが、選択する際は慎重に検討しましょう。

ローン返済中、出産・育児・転職・失業などでどちらかの収入が減少することがあるかもしれません。また、もし離婚に至った場合、諸々の手続きや物件の処理が煩雑になる可能性が高いでしょう。

ペアローンや収入合算でないと買えないような高額な家ではなく、なるべく1人分の収入の範囲内で購入できる物件を検討するのがおすすめです。

まとめ

年収500万円の人の場合、無理なく返済できる借入額の一つの目安は2,500万円です。月々の返済額が8万円前後に収まる水準をめどに、資金計画を練ってみましょう。

住宅ローン破綻等のリスクを最小限にするためには、借入限度額(借りられる金額の上限)ではなく、借入適正額(無理なく返せる金額)を意識することが大切です。

頭金を入れたりペアローンを組んだりする方法もありますが、メリットだけでなくデメリットもよく理解したうえで判断しましょう。

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