共働き夫婦のための住宅ローン いくつかの選択肢と注意すべき点を解説

今や7割以上の夫婦が共働きとなっていて、2人で協力して家計を支えています。共働き夫婦の場合、住宅ローンを1人で契約する場合よりも選択肢が豊富です。そこで、共働き夫婦が住宅ローンを組む場合の方法について紹介します。単独ローン、収入合算(連帯保証型・連帯債務型)、ペアローンの特徴と注意すべき点について解説するので、夫婦で住宅ローンを組む際の参考にしてください。

出典:内閣府 共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯)

共働き夫婦が住宅ローンを組む四つのパターン

共働き夫婦が住宅ローンを組む方法は四つです。それぞれ特徴について解説します。

単独ローン

単独ローンとは、共働きであっても夫、または妻のどちらか一方が住宅ローンを組む方法です。契約者が1人のシンプルな住宅ローンの組み方で、配偶者には負担がかかりません。

デメリットは、借入限度額が少なくなることです。また、団体信用生命保険(団信)の適用は住宅ローン契約者に限られているため、配偶者に万が一のことがあった場合には返済が免除されません。住宅ローン控除を利用できるのも契約者本人のみです。

単独ローンを組むのに向いているのは、契約者1人の収入で問題なく住宅ローンを返済できる夫婦になるでしょう。配偶者の収入は教育費や貯蓄・資産運用に回すなど、分担して家計をやりくりすることも可能です。

収入合算(連帯保証型)

住宅ローンにおける収入合算とは、夫婦の収入を合算して審査を受ける方法で、連帯保証型と連帯債務型があります。収入合算の連帯保証型は、夫婦の一方が債務者、もう一方が連帯保証人になる形です。夫婦の収入の合計が審査の対象になるので、単独ローンよりも借入限度額が高くなり、購入する物件の選択肢が広がる点が大きなメリットになります。

ただし、あくまでも契約者は1人なので団信や住宅ローン控除を受けられるのも契約者のみです。契約者に万が一のことがあった場合には、団信によって住宅ローンの返済が免除されますが、連帯保証人に同じことが起きても返済は免除されません。また、連帯保証型では、債務者が返済しなかった場合に連帯保証人に返済義務が生じる点にも注意が必要です。

収入合算(連帯債務型)

収入合算の連帯債務型も、連帯保証型と同じく夫婦の収入を合算して住宅ローン審査を受ける方法です。連帯債務型では夫婦の一方が主たる債務者、もう一方が従たる債務者になります。収入合算ができるので、単独ローンよりも借入限度額が高くなる点は連帯保証型と同じです。

連帯保証型と異なるのは、夫婦ともに住宅ローン控除が利用できる点です。夫婦で住宅ローン控除が利用できるため、住宅ローン控除の限度額が高くなることがあります。

一部の団信では、夫婦の加入も可能です。【フラット35】のデュエット(ペア連生団信)を利用すれば連帯債務者も加入できるので、どちらか一方に万が一のことがあった場合でも安心です。

ペアローン

夫婦2本の住宅ローンで一つの住宅を購入するペアローン

ペアローンは夫婦それぞれが住宅ローンを契約し、2本のローンで一つの住宅を購入する方法です。たとえば5,000万円の住宅ローンを組む場合、1人が3,000万円の住宅ローン、もう1人が2,000万円の住宅ローンを組むといった形です。金利タイプや借入期間はそれぞれの契約ごとに選択できます。

ペアローンも、単独ローンより借入限度額は高くなります。夫婦ともに団信や住宅ローン控除も利用可能です。ただし、返済中に万が一のことがあっても団信で完済されるのは死亡した本人の住宅ローンだけなので、もう一方の住宅ローンは変わらず返済を続けなければなりません。また、2本の住宅ローンを組むため、2本分の手数料がかかる点にも気をつけましょう。

共働き夫婦が住宅ローンを組むときの注意点

共働きの夫婦が2人で住宅ローンを組む場合、単独ローンよりも借入限度額が高くなり、より高額な物件にも手が届くようになります。住宅ローンを選ぶ際には、このようなメリットとあわせてリスクを理解しておくことも大切です。そこで、ここからは共働き夫婦が住宅ローンを組むときに注意すべき点について解説します。

離婚のリスクを考える

離婚のリスクを考える必要がある

夫婦で住宅ローンを組む場合、離婚のリスクを考えなければなりません。住宅ローンの返済義務はローン名義人にあります。たとえ、一方が家を出てしまった場合でもその返済義務は変わりません。

離婚によって住宅の売却を考えるようになったとしても、住宅が共有名義の場合は名義人全員の同意が必要です。離婚後に話し合おうとするとうまくいかず、売却が進まない可能性も十分にありえます。

連帯保証や連帯債務を外すのも、債権者である金融機関が同意しない場合が多いので、難しいでしょう。

夢のマイホームを購入し、これから家族仲良く暮らしていこうと誰もが思うものですが、どんな夫婦にもうまくいかなくなる可能性はあるため、離婚のリスクについても頭に入れておきましょう。

ライフスタイルの変化を考える
住宅ローンは30年、35年と長く返済をしていくものなので、そのなかでライフスタイルも変化することがあります。住宅ローンを契約したときには共働きだった場合でも、子どもが産まれることでどちらか一方が育休に入るかもしれません。育休明けでも、時短勤務をしたり、そのまま専業主婦(夫)になったりする人もいます。また、突然親の介護が必要になり、勤務時間に制限ができてしまうこともあるでしょう。

将来にわたって住宅ローン契約時と同じような働き方ができるとは限らないため、ライフスタイルが変わっても対応できるようにしておくことが重要です。育児や介護が必要になってもゆとりを持って返済できる借入金額にしたり、働けるうちに貯蓄をしたりするなど、返済計画を立てておきましょう。

負担額と持ち分の割合をそろえる

負担額と持ち分の割合をそろえるのが原則

ペアローンの場合、それぞれの金額の負担は自由に設定することができますが、それに合わせて住宅の持ち分を分ける必要があります。たとえば、5,000万円の住宅に対して、夫が3,000万円、妻が2,000万円の住宅ローンを組む場合、住宅の持ち分は出資額の比率に合わせて夫3:妻2で分けるのが一般的です。

もし、ここで住宅の持ち分を半分に分けるなど出資額と異なる割合にしてしまうと、多く負担したほうから負担が少ないほうへ贈与が行われたとみなされる可能性があります。贈与と判断されれば贈与税が発生する恐れがあるため注意が必要です。

まとめ

夫婦共働きの場合は2人で住宅ローンを組むことができ、夫または妻のみが収入を得る世帯よりも、住宅ローンの借入限度額を増やせるので、選択できる住宅の幅が広がります。ただし、収入合算やペアローンを利用すると、離婚によって金銭トラブルが発生する可能性もあります。住宅ローンは長い期間返済を続けていくものなので、将来のライフスタイルの変化もふまえて慎重に検討しましょう。

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