多摩ニュータウンは1971年から入居が始まった日本最大のニュータウン。東京都西南部の多摩丘陵に位置し、計画的に作り上げられた美しい街並みが特徴です。それから50年余が経ち、建物の老朽化、居住者の高齢化が話題になるようになりました。更新が進んでいる地区もあり、現在は多摩センター駅前でホテルの建替えが計画されています。
多摩丘陵に立地、4市にまたがる日本最大のニュータウン
多摩センター駅前での旧京王プラザホテル多摩の建替えについてご紹介する前に、多摩ニュータウンについて説明しておきましょう。
多摩ニュータウンは高度経済成長期に都心の急激な人口増大に伴う深刻な住宅難を解消することを目的に建設された日本最大のニュータウンです。
立地するのは東京都西南部の多摩丘陵で、八王子市、町田市、多摩市、稲城市の4市にまたがっています。多摩市諏訪・永山地区で1971年から入居がスタートしており、以後、地域内の整備が順次進んできました。
都心への2路線と多摩モノレールが利用可能
現在では都心にアクセスできる京王相模原線、小田急多摩線が通っており、立川方面へは多摩モノレールが利用できます。
当初の計画では居住人口は約30万人、従業人口約10万人超となっており、現在の居住人口は約22万3,000人(2022年)、従業人口は約8万2,000人(2021年)。人口は2015年の22万4,000人をピークに以降はあまり大きな変化はありません。同様に従業人口も2014年以来約8万人で推移しています。
高齢化、建物の劣化が進行中
一方で、居住者の高齢化は進展しています。2022年の多摩ニュータウン全体の高齢化率は約26%となっており、入居開始時期の早い多摩市諏訪・永山、貝取・豊ヶ丘地区などで高齢化率が高い傾向があります。
住んでいる人が高齢化しているだけでなく、建物も高経年化しています。古いものでは築50年余。更新、リニューアルなどを考えるべき時期が来ているといえます。
緑の多い住環境は他にない魅力
こうしたマイナスな点もありながら、多摩ニュータウンには居住する場所としてのメリットも多数あります。
たとえば緑の豊富さ。多摩ニュータウンでは「緑とオープンスペースは、住区面積の30%以上を確保する」という基本方針のもと、規模の大きな公園(中央公園・地区公園)、住区内公園(近隣公園等)、緑地が計画的に配されています。
実際に行ってみると緑の中に住宅が建っており、道路には豊かな並木が続きます。新しく作られた住宅街にはない魅力がある街というわけです。
商業施設、文化施設などが集積
多摩センター駅や南大沢駅周辺などを中心に大型店、ホテル、文化施設、アミューズメント施設などが多数立地しているのも魅力のひとつ。住んでいる人にとって便利なだけでなく、域外からも多くの人が集まっています。
オフィス、大学、病院なども多く立地
オフィスも集まっています。多摩センター駅周辺や南多摩尾根幹線沿道などには金融や保険関係の情報処理センター、教育関連企業のオフィス、研究所や研修所などが点在。街中にはビジネスマンの姿が少なくありません。
もうひとつ、多いのが学生など若い人達の姿。多摩ニュータウンと周辺地域には多くの大学が立地しており、留学生の姿もあります。
たとえば、南大沢駅近くには東京都立大学がありますし、同駅にはヤマザキ動物看護大学も。唐木田駅近くには大妻女子大学、松が谷駅近くにはデジタルハリウッド大学など。高齢化が進む一方で若い人、ビジネスマンもいる地域なのです。
開発から50年余が経ち、医療機関も集積してきています。1977年には地域医療の基幹病院として日本医科大学多摩永山病院が開設、二次救急医療機関として多摩南部地域病院がありますし、病院、診療所も各駅周辺に点在しています。
地震、水害、土砂災害にも強い多摩丘陵
そして居住の安心という意味では多摩ニュータウンが立地する多摩丘陵という立地にも大きなメリットがあります。
東京都の「首都直下地震等による東京の被害想定-報告書-(2022年5月)」では、多摩東部直下地震及び立川断層帯地震のような多摩ニュータウン近くに震源がある地震の場合でも、全壊建物棟数の被害想定は都内の他地域に比べて低くなっています。地震に強い地域なのです。
それ以外の災害、たとえば洪水や土砂災害についても危険区域は点在してはいるものの、周辺エリアに比べるとその割合は少なく、総じて災害に強い土地といえます。
多摩ニュータウンの再生を東京都が検討
そうしたことを考えると、多摩ニュータウンをこのままにしておく手はありません。東京都は2018年に「多摩ニュータウン地域再生ガイドライン」を改定し、新たな再生方針を策定するため、学識経験者や地元市からなる「多摩ニュータウンの新たな再生方針検討委員会」を設置し、検討を行ってきました。
2024年1月までに4回の委員会が開かれてきており、(仮称)多摩ニュータウンの新たな再生方針(素案)が出されるところまできています。それによると7つの方針が示され、それに基づいて3つの先行プロジェクトが進行しています。
7つの方針は既存ストックの活用、世代構成の平準化、DXの推進、緑の多面的な活用などとなっており、基本的には現在あるものを今の時代に合わせて使い、そこに先端技術を付加するというもの。
3つの先行プロジェクトは諏訪・永山地区、南大沢地区、多摩センター駅地区が想定されています。
多摩センター駅前でホテルを複合施設に建替え
そのうちの多摩センター駅周辺再構築プロジェクトでは、すでにいくつかの事業が動き始めています。そのひとつが冒頭でご紹介した旧京王プラザホテル多摩の建替えです。
旧京王プラザホテル多摩は1990年に開業。ビジネス、観光客に親しまれてきており、特に多摩センターにある屋内型テーマパーク・サンリオピューロランドと組んだ宿泊企画などでまちの集客に大きな役割を果たしてきました。
しかし、築30年を超えて建物の老朽化が目立つようになり、コロナ禍で稼働率が急激に低下。2021年12月には営業継続を断念することが発表され、2023年1月に閉館しました。
多様な人達に向けた住戸が整備される計画
その後、2023年11月に京王電鉄が解体に着手すると同時に建替え計画を発表。それによると、新たに建設される施設は商業施設及び分譲マンションからなる複合施設とのこと。
詳細はまだこれからですが、現在分かっていることをご紹介すると、まず、商業施設は駅から続くペデストリアンデッキに面する低層部が充てられることになっています。合わせてオープンスペースなどを作り、建物内外を回遊できるようにしてペデストリアンデッキや周辺施設と一体となったにぎわいづくりを目指す計画だといいます。
高層部には分譲マンションが配されます。ニュータウン外からのファミリー世代の流入やニュータウン内での住み替えを意図して、多世代に向けたさまざまなタイプの住宅の提供を行う予定とのこと。間取り、広さの異なる多様な住宅が作られるということでしょう。
また、商業施設の一部にはイノベーションの創出を促す交流拠点や会議・集会などで利用できるバンケットルームなど、地域コミュニティの活性化に寄与する施設の設置も検討されているそうです。
今後の計画としては2025年4月に新築工事着工、3年後の2028年度に竣工、開業の予定となっています。
多摩市も多摩センター駅前活性化に取り組み
多摩センター地区は公共施設、商業施設が集まる多摩市の中心地で多摩市ではこの地域の活性化のためにさまざまな取り組みを行ってきています。
パルテノン多摩の改修、図書館の開館
2020年からは1987年に開館した多摩市の文化拠点施設パルテノン多摩の大規模改修工事を実施、2022年にはグランドオープンしています。
この施設は多摩センターのシンボル的存在で、大小のホールやギャラリー、会議室などのある複合施設。子どもから大人まで多摩市民なら誰もが知っている施設で、広く使われています。
2023年7月には多摩中央公園内に多摩市立中央図書館が開館しました。駅からも近い使いやすい立地で、低層のすっきりした建物が印象的です。
多摩中央公園はリニューアル中
現在進行しているのは開設から30年以上を経た多摩中央公園のリニューアルです。
多摩中央公園は多摩センター駅から歩いて数分、前述した複合施設パルテノン多摩の背後に位置する丘の上にあり、敷地面積は11万平方メートル。大きな池や広い芝生エリアのある憩いの場で、リニューアルオープンは2025年4月の予定です。
リニューアル後にはコア施設となるケヤキハウスにカフェ・レストラン、坂道沿いにはフラワー&ベーカリーカフェなどが作られる予定で、これまで以上ににぎわう場となることでしょう。
それ以外にも、東京都の多摩センター駅周辺再構築プロジェクトには駅近くにある、現在は駐車場などとして使われている土地の有効利用や、駅周辺のインフラの改修なども盛り込まれており、今後、変化していくことになるようです。
これまでも多摩センター駅周辺は2駅が利用できる交通利便性、多くの商業施設が集まる買い物利便性に、大きな公園のある環境がそろう人気のエリアでしたが、今後、そこに磨きがかかり、新たな施設ができることになります。
さらに多摩ニュータウン自体の魅力を上げる取り組みが今後行われていくとすれば、エリア全体が見直されることにもなるでしょう。そうした変化を期待しつつ、住むという観点で多摩ニュータウンを訪れてみるのも面白いかもしれません。
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