アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズが「2024年に行くべき52カ所」を2024年1月に公表、3番目に日本の山口県山口市が選ばれました。2023年の同様の企画では岩手県盛岡市が2番目に選ばれ、その影響からインバウンド客や国内からの観光客が急増。地域の活性化が進んで、マンション価格も上昇しました。2024年の山口市はどうなるのでしょうか。
2023年には岩手県盛岡市が選出
ニューヨーク・タイムズ紙が「2023年に行くべき52か所」で2番目に挙げた岩手県盛岡市。中心市街地に歴史的な建物があり、清らかな中津川(北上川の支流)が流れる街です。夏には、市内でも鮎釣りを楽しむ姿が見られ、秋には鮭が遡上します。人口30万人近い東北地方有数の都市ながら、公園などの自然にも恵まれています。
全国チェーンのコーヒーショップだけではなく、地元で長く愛されている味わいのある喫茶店が残り、ジャズ喫茶などの文化も根付いています。名物のわんこそばの名店、盛岡城跡公園などの名所も少なくありません。
そんな魅力が世界的にも有名な新聞で紹介されたため、世界中から観光客が訪れるようになりました。盛岡市だけではなく、岩手県内の平泉町・中尊寺、奥州市・戸隠神社、三陸海岸・奇跡の一本松などを訪れる人も増加。奥州市はメジャーリーグで大活躍の大谷翔平選手の出身地ということもあって、なおさら人気が高まった面もありそうです。
盛岡市のマンション価格が前年比2割以上上昇
世界中からの注目を集め、多くの観光客がやってくるようになった盛岡市。東京駅から新幹線で2時間余りという交通アクセスの良さもあって、観光だけではなく盛岡市などへの移住を考える人や、二拠点居住を考える人も増えて、それによりマンション価格が上昇しました。
マンション情報サイトの「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドでは、全国市区町村別の中古マンション価格や、前年に比べての上昇率を示す騰落率などの調査を行っています。
2023年10月の調査では、盛岡市の1年前に比べての騰落率が、全国市区町村のなかでトップとなりました(図表1)。価格水準が1,000万円台の前半という値頃感もあって購入希望者が増加、1年前に比べて21.13%も価格が上昇したのです。
それまでは盛岡市がランキングの上位に顔を見せることはほとんどありませんでしたから、ニューヨーク・タイムズ紙の影響力の大きさがお分かりになるでしょう。
それだけに、「2024年に行くべき52カ所」の3番目に挙げられた山口県山口市への期待が高まります。
コンパクトにまとまった都市としての魅力がつまった山口市
2023年に選ばれた盛岡市が東京から新幹線で2時間余りという立地であるのに対して、山口市は東京からの距離はかなり遠くなります。東京駅から新山口駅までは新幹線で4時間余り。中心街である山口駅までは、そこから在来線を乗り継ぐ形になります。羽田空港から山口宇部空港まで空路を利用し、在来線で山口市に向かうとしても、やはり3~4時間近くかかってしまいます。
しかし、人口も多い東京からの「遠さ」が山口市の魅力のひとつでもあるでしょう。京都に対して「西の京」と呼ばれているものの、京都のように観光客が殺到してオーバーツーリズムに悩まされることがなく、コンパクトな都市としての魅力を保っています。
たとえば、山口市は県庁所在地でありながら市内に湯田温泉という温泉街があり、観光客向けの旅館やホテルがそろっています。それも開湯から約800年という歴史を誇り、湯量が豊富で「美肌の湯」としても有名。温泉好きだけではなく、多くの観光客が歴史ある温泉と四季折々の自然を求めてやってくる街なのです。
期待の高さを示す市長のコメントも
観光名所としては、国宝瑠璃光寺五重塔が有名です。国内で現存する五重塔としては10番目に古く、全国でも珍しい檜皮葺き(ひわだぶき)の屋根。その美しさは日本三名塔に数えられており、庭園の池に映る伸びやかな姿は、若い世代にとっても、「映える五重塔」として人気です。
現在は「令和の大改修」の途上で、特別にデザインされたシートでおおわれていて残念ながらその姿を見ることはできません。しかし今回ニューヨーク・タイムズ紙で取り上げられ注目度が高まっているため、特別に予算を組んで中が見える透明パネルに張り替える計画も進んでいるといわれています。
山口市では、選ばれたことをホームページで報告し、さっそく伊藤和貴市長の次のようなコメントを掲載しています。
「国宝瑠璃光寺五重塔に代表される本市の西の京としての歴史的な文化や、まちなか温泉である湯田温泉など、本市の魅力を幅広く取り上げていただき、高く評価いただいたことは大変ありがたく感謝いたします。これからも国内外から多くの方に本市にお越しいただけるよう、おもてなし環境の整備に努めてまいります」
本場の祇園祭にもまけない「山口祇園祭」
山口市の魅力はもちろん瑠璃光寺五重塔だけではありません。市内には湯田温泉のほか、体験もできる陶芸工房、地元だけでなく観光客にも人気のコーヒーショップ、おでんや鍋などの地元料理をカウンターで提供する名店などがありますし、室町時代から約600年続く「山口祇園祭」も西の京としての歴史を誇る伝統の祭りとして紹介されています。
山口祇園祭は、室町時代に当時の山口県を支配していた戦国大名の大内氏が京都から勧請した八坂神社の例祭として実施されています。毎年7月20日には八坂神社で鷺(さぎ)の舞いが奉納されたあと、祇園囃子(ぎおんばやし)やおみこしが市内を練り歩きます。24日には、市民総踊りが開催され、27日には、女みこしも加わって市内を練り歩き、たいへんな盛り上がりを見せるそうです。
春休みからゴールデンウィーク、そして夏休みの観光シーズンには、国内や海外から観光客が多く訪れることでしょう。
山口県の中古マンションは1,000万円台前半
注目度が高まり、訪れる人が増えれば、マンションを求める人も増えるだろうと考えられます。図表2にあるように、2023年12月調査の山口県の中古マンション70平方メートル換算価格は1,000万円台前半です。東京などの大都市圏に比べると割安感が強いといえます。
本格的な移住だけではなく、在宅ワーク中心の人であれば、二拠点生活の二つ目の住まいとして購入しやすいでしょう。また、観光客や移住者の増加を狙って投資用に購入を考える人も増えるかもしれません。
昨年、ニューヨーク・タイムズ紙の「2023年に行くべき52カ所」に選ばれた盛岡市のように、住宅価格が急上昇する可能性があります。
山口市の2023年12月の70平方メートル換算の中古マンション価格は1,461万円。2022年12月の1,368万円からすれば6.8%の上昇です。10年前の1,361万円と比べても7.3%の上昇率にとどまっています。
東京などの大都市圏の中古マンションは、10年間で5割以上上がっていますから、それに比べると山口市の上昇率は極めて低い水準といえます。しかし、価格面での割安感を考慮すれば、盛岡市のようにこれから上昇する可能性があります。山口市での住宅購入を考えるなら、早めに行動を起こしてはいかがでしょうか。