住宅ローン契約は基本的に団信加入が条件となっています。団信に加入していると、契約者の死亡や高度障害で残債が免責されるため、もしものときに安心です。また、この基本保障に加えてより保障を拡大した特約をつけることもできます。
住宅ローンを組む際には、将来に備えて特約をつけるかどうか迷う人もいるでしょう。この記事では、住宅ローンの団信や特約について詳しく解説します。
住宅ローンの団信とは
住宅ローンの団信は、住宅ローンを契約するときだけ加入できる保険です。団信に加入していると、住宅ローンの契約者が死亡もしくは所定の高度障害になったときに住宅ローンの残高がゼロになるため、返済は実質免除されます。
ただし、高度障害は「両目の視力を失う」「食事から排泄まですべて介護が必要」など、かなり重度のものに限定されています。ケガや病気で働けない、もしくは働く時間を制限しなければならないような状態は対象外となっています。
団信の特約とは
団信の特約とは、住宅ローンの残債免除の対象となる保障の幅をより広げるためのものです。特約をつけることで、がんなどの病気で所定の状態になったときにも残債をゼロにすることができます。どのような特約があるのか解説します。
がん保障
がん保障をつけると、死亡や高度障害に加えて「がん」もローン残債免除の対象になります。ただし、がん細胞が周囲の組織に浸潤していない「上皮内がん」と呼ばれるがんは対象外です。
上皮内がんはステージゼロのがんとも呼ばれ、完全に切除すれば転移・再発の可能性はほぼゼロといえ、通常の生活が送れる可能性が非常に高いものです。上皮内がんで収入が減る可能性は低いことから、対象外であってもローン返済に影響はないといえます。
がんの保障に関しては、契約後90日の免責期間があることが一般的です。ローン契約後90日以内にがんが見つかった場合、保障が下りないため注意しましょう。
3大疾病保障
3大疾病保障とは、死亡や高度障害時だけではなく、「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」の三つの病気で所定の状態になったときにもローン返済が免除される特約です。【フラット35】の新3大疾病付機構団信では、以下の場合に返済が免除されます。
・がんになったとき
・急性心筋梗塞(もしくは再発性心筋梗塞)を発病し、手術を受けたとき。もしくは、診察を受けた日から60日以上労働制限を必要とする状態が継続したと、医師によって診断されたとき。
・脳卒中になり、手術を受けたとき。もしくは、60日以上言語障害などの後遺症が継続したと医師によって診断されたとき。(【フラット35】の特約における脳卒中とは、「くも膜下出血」「脳内出血」「脳梗塞」の三つの疾病を指します)
がんは診断されれば保障の対象となりますが、急性心筋梗塞と脳卒中は、診断だけでは保障が下りず、「所定の状態」の条件を満たした場合に残債がゼロになる仕組みです。
8大疾病保障
8大疾病保障は、3大疾病に加えて「高血圧症」「糖尿病」「慢性腎不全」「肝硬変」「慢性膵炎」で所定の状態になったときに住宅ローンの残債が免除される特約です。保障の対象となる病気の範囲が広がるため、3大疾病の特約に比べてさらに手厚い保障となります。
ただし、対象の病気と診断されただけで保障が下りるわけではなく、「一定期間、就業不能状態が継続する」などが条件となります。また、就業不能の期間も「60日以上」「12ヶ月以上」など、金融機関によって違いがあります。
11大疾病保障
11大疾病保障は、8大疾病に加えて「大動脈解離」と「皮膚がん」「上皮内がん」も対象となり、これらの病気で所定の状態になったときにも残債が免除されます。さらに、3大疾病・8大疾病では「急性心筋梗塞」と「脳卒中」であった条件が「心疾患」「脳疾患」となり、対象となる病気が拡大されます。
たとえば、狭心症は急性心筋梗塞とは別の病気なので、3大疾病・8大疾病の対象にはなりません。しかし、11大疾病の場合は「心疾患」というかたちで幅広い心臓の病気が対象となっているため、保障の対象となります
ただし、この11大疾病保障でも、「12ヶ月以上の就労不能」などの条件を満たす必要があります。診断だけでは保障が下りないため注意しましょう。
団信の特約をつける人の割合
団信の特約をつける人は、住宅ローン契約者のなかでどれくらいの割合を占めているのでしょうか。カーディフ生命が行った「第4回 生活価値観・住まいに関する意識調査」によると、団信の特約の加入率は約4割となっています。
また同調査によると、30代の住宅ローン利用者は6割以上が特約に加入しています。若い世代ほど住宅ローン返済の期間が長くなるため、病気のリスクに備えようと考えていることがわかります。
住宅購入後の後悔は団信の特約がトップ
住宅は人生最大の買い物といわれますが、購入後も満足している人がいる一方で「こうしておけばよかった」と後悔がある人もいるようです。
先述した調査によると、「団信の特約をつければよかった」という人が最も多くなっています。「歳をとるにつれて病気のことが不安になった」「死亡以外のリスクについても考慮すべきだと思った」と考える人が多いようです。
また、「住宅ローンを比較すればよかった」という人も多くなっています。住宅ローンの特約や金利などを比較してから選ぶことが、後悔の少ない住宅ローン選びには重要といえます。
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8大疾病にかかる人の数
住宅ローンの特約では病気でも残債が免除されますが、どれくらいの人が保障対象の病気になっているのでしょうか。
8大疾病に罹患する人の数を、以下のように年代別にまとめました。
年代が上がれば上がるほど、病気になりやすいことがわかります。特に70代以降はどの疾患でも患者数が一番多くなっています。住宅ローンに8大疾病特約をつけるかどうか迷う人も多いと思いますが、70代までは病気にかかる可能性が比較的低いといえます。
60代のうちに住宅ローンを完済する予定であれば、特約をつけないという選択肢も検討できるでしょう。
8大疾病特約を選ぶときの注意点
8大疾病特約では所定の状態になったときにも住宅ローンの返済が免除されるというメリットがありますが、デメリットもあります。ここでは、注意点について解説します。
金利が上がる
8大疾病特約をつけると、住宅ローン金利が通常よりも0.3%ほど上乗せされます。つまり、上乗せされた金利分を特約の保険料と考えることができます。
がんや脳卒中、心筋梗塞など大きな病気で収入が減ったときに返済が免除されるというメリットと、約0.3%高い金利で返済していかなければならないデメリットを比較し、どちらがよいのかを検討することが大切です。
たとえば、3,000万円の借り入れを30年かけて返済(元利均等返済)する場合では、金利が0.5%の場合は毎月の返済が8万9,756円、0.8%の場合は9万3,760円となり、毎月約4,000円多く返済することになります。
すべての病気に対応しているわけではない
8大疾病特約の保障は対象の病気が限定されているため、保障外の病気で働けなくなったときには、残債が免除されません。
また、がんは罹患しただけで残債が免除されますが、その他の病気では細かい条件が決められています。就業不能状態が一定期間続かないと残債免除が認められないことから、がん以外の条件は比較的厳しいといえます。
就業不能期間の条件も「90日」「180日」など金融機関によって違いがありますので、比較して決めるようにしましょう。
まとめ
住宅ローンの疾病特約を付ける人は約4割です。特約には3大疾病、8大疾病、11大疾病というようにいくつかの種類があり、自分の考えに合ったものを選ぶことが大切です。
ただし、保障を充実させると安心度は高まりますが、金利が高くなるため返済の負担は増えます。自分の年齢や健康状態、返済期間、家族の状況(自分が返済できなくなったときに残債を払えるかなど)を考慮して検討するようにしましょう。
(最終更新日:2024.04.19)