津波の被害を受けた場合、損害保険でどこまで補償されるのか?

2024年の正月に能登半島を襲った大地震で、沿岸部では津波による甚大な被害が発生しました。2011年の東日本大震災で観測された大津波も記憶に新しいところでしょう。津波で自宅が損壊した場合、どの程度まで保険で補償されるのでしょうか。

この記事では津波による自宅への影響を心配している人へ向けて、津波被害に備えられる損害保険の種類や補償内容などを詳しく解説します。

津波の被害に備えることができる損害保険は?

津波の被害に備えるためには地震保険に加入する必要があります。地震保険は地震による家屋への被害だけでなく、噴火や津波によって生じた損害についても補償されます。地震保険は津波の被害に備えられる唯一の保険で、いわゆる「津波保険」のようなものはありません。

地震保険は火災保険とセットで加入するもので、地震保険単体で加入できない点は要注意です。また、地震や津波が原因で発生する火災は火災保険の補償対象外です。地震や津波による火災や倒壊に備えたい場合、火災保険と併せて加入するようにしましょう。

地震保険は火災保険加入時に加入するのが一般的ですが、火災保険期間中にあとから追加で加入することも可能です。

地震保険の補償範囲は?

地震保険で補償されるのは「建物」と「家財」です。建物は住まいとして使用しているもの、家財は住居内にある家具、家電、日用品、食料品など、家から持ち出すことができるもの全般を指します。特約などで指定がない限り、住居に付属する車庫や物置、宅配ボックス等に収容されている家財も補償の範囲内です。

一方、自動車、通貨、有価証券、1品または1組で30万円を超えるような貴金属・アートなどは原則補償対象外となっています。なお、自動車に関しては車両保険の特約によって一部補償されるケースもあります。建物に備え付けられた浴槽など、外へ持ち出すことのできないものは家財でなく建物の取り扱いになります。

地震や津波に起因するものであっても、盗難や外構部のみの損害、地震発生の一定期間後に発生した損害など、保険ではカバーできない被害もあるため気をつけましょう。

津波の被害を受けた場合、どの程度の補償を受けることができるのか?

実際に津波の被害を受けてしまった場合、地震保険によってどれくらいの補償を受けられるのでしょうか。地震保険による補償のほか、車両保険や公的支援制度による補償についても併せて解説します。

地震保険による補償
地震保険で受けられる保険金額は契約金額をベースに計算されます。地震保険の契約金額は「火災保険の契約金額の30〜50%」の範囲内とされており、建物5,000万円・家財1,000万円が上限です。

通常の火災保険は実際に生じた損害額に応じて保険金が支払われますが、地震保険は建物の被害の度合い(一部損・小半損・大半損・全損)に応じて補償割合が決まるのが特徴です。度合いごとの補償割合は次のとおり定められています。
⚫︎ 一部損:契約金額×5%(限度額は時価×5%)
⚫︎ 小半損:契約金額×30%(限度額は時価×30%)
⚫︎ 大半損:契約金額×60%(限度額は時価×60%)
⚫︎ 全損:契約金額の100%(限度額は時価)

「全損」に認定されるのは、建物の主要構造部の損害額が時価の50%以上、地震や津波によって焼失・流出した床面積が延床面積の70%以上、家財の損害額が時価の80%以上に該当する場合です。全損認定を受けると契約金額の100%が時価総額を限度に補償されます。

こうしてみると、地震保険だけでは被害額のすべてをカバーするのは難しいといえるでしょう。

自動車保険(車両保険)による補償
自動車に関しては地震保険の保証対象外と紹介しました。津波によって愛車が流されて全損してしまった場合や、他人の所有物や車にぶつかって被害を与えてしまった場合などに補償を受けるにはどうすればよいのでしょうか。

「自動車保険(車両保険)で補償してもらえるのでは」と考える人が多いかもしれませんが、残念ながら車両保険は地震・津波による被害を補償対象外とするのが一般的になっています。なぜなら、地震や津波は一度に多くの被害をもたらすので、莫大な保険金支払いが発生してしまい保険会社の手に負えないからです。

ただし、一部の損害保険会社では「地震・噴火・津波車両全損時一時金特約」を設けており、特約に加入していれば、全損の場合1台あたり一律50万円の補償が受けられます。契約金額が50万円未満の場合には、契約金額が補償上限です。

被災者生活再建支援制度による補償
地震・津波などの自然災害が発生したとき、被害を受けた人は被災者生活再建支援金を受給できる可能性があります。当制度の対象となるのは、自然災害で10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村などで生活する被災世帯です。

損害割合が30%台以上の住宅を「中規模半壊」「大規模半壊」「全壊」に分け、被害を受けた世帯に対し、損害度合いに応じた25万円〜最大300万円の支援金を支給します。被災地が災害救助法適用を受けると、全都道府県から拠出する基金と国による補助から1/2ずつ支援金にあてられます。

支援金は「基礎支援金」と「加算支援金」に分かれています。基礎支援金は全壊・大規模半壊のみが対象で全壊100万円・大規模半壊50万円の支給です。加算支援金は住宅をどのように再建するかによって支給額が異なり、全壊・大規模半壊により新たに建物を建設したり購入したりする場合は200万円が支給されます。

万が一に備えて保険以外の補償も準備しておこう

火災保険とセットで地震保険へ加入することにより、津波による住宅被害に対してもある程度の備えはできます。車両保険の特約に加入すれば、地震保険で補償対象外となる愛車の被害に対する一時金を受け取れる可能性もあります。

しかし、前述のとおり、地震保険や車両保険などで津波による被害額全額をカバーするのは難しいのが実情です。火災保険などは最低限の生活が送れるよう補償することが目的であって、財産を守るためのものではありません。

地震や津波から自分たちの財産を守るには、貯蓄など保険以外の方法でも備えをしておくと安心です。

まとめ

津波で自宅が被害を受けた場合、「地震保険」に加入していれば一定の補償を受けられます。加えて、一部の損害保険会社が定める「車両保険の地震・噴火・津波車両全損時一時金特約」や、国と自治体による「被災者生活再建支援制度」でも補償を受けられる可能性があります。

ただ、こうした補償は被災者の生活再建を支えるためのものであり、保険などでは損害のすべてをカバーしきれないことが想定されるでしょう。日ごろから貯蓄や資産形成などをバランスよく行い、いざというときのリスクに備えることが大切です。

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