ほとんどの金融機関は、住宅ローンの契約条件の一つに「団信(団体信用生命保険)への加入」をあげています。団信は生命保険の一種であり、健康状態に異常が見つかった場合は加入できない可能性があります。
その場合、住宅ローンの利用を諦めなくてはならないかといえば、そうともかぎりません。この記事では、住宅購入を検討しているものの健康に不安がある人に向けて、団信について詳しく解説するとともに加入できないときの対処法を紹介します。
住宅ローンの団信とは
団信は住宅ローン専門の生命保険制度です。返済中に契約者が死亡したり所定の高度障害になったりしたときは、保険金で残債が支払われ、その後の住宅ローン返済負担がなくなります。
ちなみに、一般的に団信の保険料は金利に含まれており、別途保険料を支払う必要はありません。通常の団信より適用される範囲が広くなる「3大疾病保障」などの特約付き団信では、特約分として年0.3%ほど金利に上乗せされます。
団信申込みのときに申告すること
団信は、基本的に住宅ローンと同時に申し込みます。金融機関から渡される告知書に必要事項を記入し、保険会社の診査で問題がなければ加入が完了します。
告知書に記載する内容は、以下のようなものです。
・治療歴、投薬歴(告知日以前3ヶ月以内)
・手術歴、治療歴(告知日以前3年以内)
・現状の身体状況(欠損や機能障害の有無)
虚偽の記載があった場合、契約解除や契約取り消しとなります。もしものときに保険金が支払われなくなるので、正直に申告するようにしてください。
団信に加入できないケース
団信は健康に異常があると加入できないことがあります。加入の可否基準は保険会社によって異なり、一般には公開されていません。そのため、同じ内容でもある保険会社ではNG、別の保険会社ではOKということが起こり得ます。
告知が必要な病気は、主に次のようなものです。
・内臓の疾患(腸・肝臓・腎臓など)
・がん
・呼吸器疾患
・婦人科系の疾病
・免疫疾患
・精神疾患
保険会社では、医療機関のカルテや健康保険の利用履歴、健康診断の結果などを集めて、告知内容に誤りがないかを確認します。病気の種類や症状などによっては治療中でも加入できる可能性があるので、正確な告知を心掛けましょう。
住宅ローンは基本的に団信加入が必要
民間金融機関が提供する住宅ローンは、原則として団信加入が必須です。健康に異常があって団信に加入できないと住宅ローンが利用できないため、家の購入はキャッシュで一括払いするか、住宅ローンよりも金利の高い多目的ローンを利用することになるでしょう。
しかし、民間金融機関と提携して住宅金融支援機構が提供している【フラット35】は、団信に加入できない人も申し込みできます。
団信に加入できないときの対処法
団信に加入していないと、契約者にもしものことがあったときは家族が住宅ローンの返済を続けなくてはなりません。返済不可能となれば住み続けることはできず、大切な住まいを失います。そうした事態を防ぐために、ここからは団信に加入できないときの対処法を紹介します。
ワイド団信を検討する
ワイド団信とは、健康上の理由で団信に加入できない人を対象とした生命保険で、一般的な団信に比べて基準が緩やかです。金利は年0.2~0.3%ほど高くなりますが、持病があっても加入できるケースが多いので、万一の備えとして検討してみるとよいでしょう。
多くの金融機関でワイド団信を取り扱っていますが、加入条件や保障内容は金融機関ごとに異なります。また、どんな病気・障害もOKというわけではありません。気になる場合は、ワイド団信の取り扱いがある金融機関に問い合わせてみてください。
【フラット35】に申込む
健康上の理由で団信が利用できない人も【フラット35】は利用可能です。その際の金利は「新機構団信付きの【フラット35】の借入金利-0.2%」と、適用される金利がやや低くなります。
適用金利が低くなり、住宅ローン支払い中の負担は軽くなりますが、死亡したとき、高度障害を負ってしまったときの不安はあります。団信なしの【フラット35】を利用するときは、もしものことが起きたらどうするのか、家族と入念に話し合ってからにしましょう。
ちなみに、団信に加入するには、これまでは月々の返済と別に保険料(団信特約料)を年1回支払う必要がありましたが、2017年10月に制度が変わり、保険料が金利に組み込まれました。そのため、【フラット35】でも基本的に別途保険料を支払う必要はありません。
ほかの保険でカバーする
団信に加入できない場合、ほかの生命保険に加入して万一の事態に備えるのも一つの方法です。
持病があっても加入できる生命保険には「引受基準緩和型保険」「無選択型保険」「少額短期保険」などがあります。ただし、保険会社にとってはリスクが大きいため、一般的な生命保険と比較すると保険料は割高です。
支払う保険料に比して保障が十分ではない可能性もあるので、複数の保険を扱う保険代理店やファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。
完治後3年経過するのを待つ
団信を含む生命保険では、手術歴や治療歴について過去3年程度の告知義務が課されます。逆に言うと、完治して3年以上を経過していれば、告知の必要はありません。
団信に加入できれば、住宅ローンの選択肢も広がります。住宅購入のタイミングを3年後にずらし、それまでは準備期間にするとよいでしょう。住宅ローンの情報を集め、より多くの購入資金を貯めておけば、実際に住宅ローンを組むときに困らずに済みます。
団信に加入するか決めるときのポイント
【フラット35】は団信への加入が任意のため、加入をためらう人もいるかもしれません。結論からいうと、なるべく団信には加入したほうがよいでしょう。その理由について以下で解説します。
団信はお得な保険
【フラット35】で団信に加入しないなら、金利は0.2%低くなります。団信に加入した場合との差額を次の条件で試算しました。
・商品名:ARUHIフラット35
・自己資金:500万円
・借入希望額:2,500万円
・返済期間:35年
・返済方法:元利均等(ボーナス併用なし)
上記のとおり、毎月返済額の差額は2,522円です。ほかの保険に加入して同等の保障を得ようと思うと、毎月の保険料はかなり高額になるでしょう。団信は支払う金額に比べてリターンが大きいお得な保険といえます。
住宅ローン契約期間中のみ適用
団信の保障が適用されるのは住宅ローン契約期間中のみです。
住宅ローン専用の生命保険なので、完済後の死亡あるいは高度障害について保険金が支払われることはありません。病気のリスクが少ない若いうちに住宅ローンを組んだ場合、保障を受けずに完済する可能性が高いため、加入しないほうがお得と感じる人もいるでしょう。
しかしながら、交通事故などで障害を負うリスクは年齢に関係ありません。【フラット35】では身体障害1~2級となって身体障害者手帳の交付を受けると、保険金で住宅ローンが完済されます。万一に備え、団信には加入することをおすすめします。
まとめ
住宅ローンを利用するときは、基本的に団信に加入しなくてはなりません。ただし、健康状態によっては加入できないこともあります。その場合はワイド団信を検討してみましょう。
【フラット35】では団信への加入が任意とされていますが、加入しない場合、住宅ローン返済中にもしものことがあれば家族に返済義務が生じます。万一に備えて加入しておいたほうが安心です。
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