住宅ローン控除が住民税の減税につながる仕組みとは?

住宅ローンを利用して住宅を購入した人に向けて、一定期間、年末の借入残高の0.7%相当額を所得税から控除する住宅ローン控除の制度が用意されています。そして、この住宅ローン控除額のうち、所得税から引き切れなかった部分については翌年の住民税から控除されます。

今回は現在住宅ローン控除を利用している人や、これから住宅ローンを利用する予定がある人に向け、住宅ローン控除によって住民税が安くなる仕組みや住民税の減税を受ける場合の注意点について解説します。

住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除とは、年末の住宅ローンの借入残高より算出した額をその年の所得税から控除するというものです。住宅を購入する際に住宅ローンを利用し、いくつかの要件を満たしている人が対象となります。

以前は年末の借入残高の1%が控除されていましたが、2022年より控除額が0.7%に下がり、所得要件も3,000万円から2,000万円に引き下げられました。一方で控除期間は10年から13年に延びています(中古住宅は10年)。

また、入居する年および住宅の種類によって、控除の対象となる借入金額の上限が異なっています。

※2023年末までに新築の建築確認を受け、2024年および2025年に入居する場合は、2,000万円(ただし控除期間は10年となる)

住宅ローン控除で住民税が安くなる仕組みは?

住宅ローン控除では、所得税額から控除額を差し引きます。しかし、所得によっては所得税額が住宅ローン控除額より少なく、全額を差し引けないことがあるでしょう。その場合は、翌年課税される住民税額から差し引かれることになっています。

差し引かれる金額は、
・控除額のうち所得税から差し引けなかった金額
・所得税の課税総所得金額の5%
のどちらか低い額となっており、上限は9万7,500円と決まっています。

ただし、入居した年や住宅を取得したときの適用税率によっては上限が所得税の課税総所得金額の7%になり、上限額も13万6,500円になるケースがありますので、詳しくは住んでいる自治体に確認してみましょう。

住民税額からの控除については、所得税の申告をしていれば、特別な手続きは必要なく自動的に行われます。

所得税から控除しきれないケースとは?

所得税から住宅ローン控除額全額が控除できないケースとしては、以下の例が当てはまります。

たとえば、年収が500万円で妻(専業主婦)と子ども(小学生)1人のケースだと、年収から控除される額は
・給与所得控除:144万円
・配偶者控除:38万円
・基礎控除:48万円
・社会保険料控除;約70万円
・小規模企業共済等掛金控除:24万円(iDeCoに月2万円拠出)
です。
これらを年収500万円から差し引くと課税所得金額は約170万円になります。課税所得金額200万円の場合の所得税額は8万5,000円です。

認定長期優良住宅を新築で購入しており、年末の住宅ローン残高が4,000万円だった場合、住宅ローン控除額は4,000万円×0.7%=28万円ですので、所得税額から全額差し引いても19万5,000円残ってしまいます。

この場合、その19万5,000円のうち、9万7,500円が翌年の住民税額から控除される仕組みです。
引き切れなかった9万7,500円が控除できない点には注意しなければなりません。

このように、所得や年末の住宅ローン残高によっては、所得税から住宅ローン控除額が全額差し引かれず、住民税から差し引かれることもめずらしくありません。

住民税から控除を受ける場合の注意点

ここからは、住宅ローン控除額が所得税額よりも多く、住民税でも住宅ローン控除を受ける場合の注意点について解説します。

所得税から控除できなかった全額が住民税から差し引かれるとは限らない
上の例でも説明したとおり、所得税額から控除できなかった住宅ローン控除額全額が住民税額から控除されるとは限りません。

住民税額から控除されるのは、
・所得税から差し引けなかった額
・所得税の課税総所得金額の5%(ただし9万7,500円が上限)
の少ない方とされており、それ以上の額については差し引くことができません。

今年差し引けなかったからといって、翌年の所得税や住民税から差し引くこともできず、住民税からも差し引けなかった住宅ローン控除額については無効となることを覚えておきましょう。

住宅ローン控除を受ける初年度には確定申告が必要
住宅ローン控除の適用にあたっては、初年度は確定申告が必要です。これは、会社員や自営業者の区別なく、住宅ローンを利用して住宅を取得した人全員に当てはまります。
また、住民税からの控除を受けない場合でも、所得税からの控除を受けるのであれば確定申告を行わなければなりません。

確定申告は、原則として翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告書を必要書類と併せて、住所地を管轄する税務署に提出することで行います。

確定申告の際には、以下の書類を揃えて提出します。
・確定申告書・・・国税庁の公式サイトで作成可能
・(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書・・・税務署にて取得
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書・・・金融機関から送付されてくるものを使用
・登記事項証明書・・・法務局にて入手
・不動産売買契約書の写し・・・不動産会社との契約時の書類
・工事請負契約書・・・注文住宅の場合に必要(工事会社と交わした契約書)

そのほか、住宅の種類によって、その住宅が本当にその種類に該当するのかを証明できる認定通知書などの写しが必要になります。

確定申告は税務署への持参や郵送でも可能ですが、e-Taxを使用すると便利です。また、所得税からの控除額は、e-Taxのほうが還付されるまでの期間が早いといわれています。

2年目以降、市区町村への申告をする必要はない
会社員であれば、2年目以降の住宅ローン控除の申告は年末調整で可能です。その際には、税務署から送られてくる「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書」を年末調整の書類に添付して提出すれば、自動的に所得税額から控除されます。

自営業者などは2年目以降も確定申告を行う必要がありますが、その際には、確定申告書に「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を添付して提出してください。

また、所得税額から差し引けなかった部分についても、自動的に住民税から差し引かれますので、市区町村への申告は不要です。翌年の5月~6月に受け取る住民税の課税決定通知書にて、きちんと控除されているかを確認するようにしましょう。

まとめ

住宅ローン控除の控除額については、原則として所得税額から差し引かれますが、所得や年末の住宅ローン残高によっては所得税額から全額差し引けないケースもあり得ます。

その際には、翌年の住民税から差し引かれます。ただし、住民税額から控除できる額は上限が決まっているため、全額が控除されるとは限らない点に注意しておきましょう。

また、住宅ローン控除の額が所得税額よりも多かった場合は、翌年に受け取る住民税額決定通知書にて、きちんと住民税から差し引かれているかどうかを確認するようにしましょう。

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