津田沼駅を擁する習志野市は、JR総武線快速利用で東京駅へ最短30分以内でアクセスできる都心近郊の住宅都市です。市内すべての住宅が最寄り駅から直線距離で2キロメートル以内というコンパクトな街。谷津干潟などの豊かな自然や、音楽やスポーツが盛んな街としての魅力も。今回は、習志野市の暮らしと住宅事情について紹介します。
東京から約30キロメートルの住宅都市 東京湾の埋立で市域を拡大
習志野市は、東京からおおよそ30キロメートル圏内にあり、東は千葉市、西は船橋市、北は八千代市に接し、南は東京湾に面しています。海岸線は東京湾の一部を形成し、東西8.9キロメートル、南北6.2キロメートル、総面積20.97平方キロメートルで南西側は埋め立て地、北東側は下総台地の一部になっています。
習志野市の市域はもともと農村でしたが、明治期以降に、騎兵連隊・鉄道連隊が置かれるなど軍都として発展してきました。1873年に明治天皇観閲のもと大和田原で陸軍近衛兵の演習が行われ、その後この地域が「習志野ノ原」と命名、正式に陸軍の演習場に。習志野という地名の由来ともいわれています。1895年には、JR総武線津田沼駅が開業。1921年には京成線船橋−千葉(現千葉中央)間が開通し、谷津海岸駅(現谷津駅)、京成津田沼駅が開業しています。
第2次世界大戦の後、旧軍施設は学校・住宅・工場などに生まれ変わりました。1954年に津田沼町と幕張町の一部が合併し、習志野市が発足。高度成長期の1964(昭和39)年から第1次埋め立てが行われ、昭和50年代(1975年~1985年ごろ)の第2次埋め立てによって住宅地を造成。千葉工業大学・日本大学生産工学部・東邦大学付属東邦中学校・高等学校の転入があり、習志野文化ホールの開館など文教住宅都市として発展しました。市制がスタートした1954年に3万人台だった人口は、1971年に10万人を突破。2016年には17万人を超え、首都圏の中核都市として発展を続けています。
【習志野市のデータ】
総面積…20.97平方キロメートル
人口…17万4,963人(2023年12月31日時点)
世帯数…8万4,130世帯(2023年12月31日時点)
鉄道や車でのフットワークが良好で安心して住める街
令和3年度市民意識調査の結果によれば、習志野市の住みやすさについて「住みやすい」(55.7%)と「やや住みやすい」(31.1%)を合わせた「住みやすい(計)」は 86.8%となっており、前回の調査よりも 3.7 ポイント上昇。多くの人が習志野市を住みやすいと感じています。また、住みやすいと感じる理由として、「交通が便利である」が 74.3%、「災害が少ない」が 37.2%、「治安が良い」が 27.1%と上位に挙げられています。
習志野市内には、JR総武線のほかJR京葉線、京成本線、新京成線、京成千葉線が通っています。習志野市内の住宅市街地の多くは駅徒歩圏内にあり、鉄道駅へのアクセスが良い場所が多いのが特徴。JR総武線快速で津田沼駅から東京駅へは30分程度でアクセスができ、京成津田沼駅からは京成本線利用で日暮里駅や京成上野駅へ直通でアクセス可能です。また、千葉駅方面や成田空港方面へのアクセスも良好です。
習志野市内には、京葉道路・東関東自動車道の高速道路、国道14号・国道357号の国道等、数多くの道路が設置され車の移動もスムーズ。東関東自動車道の谷津船橋IC、京葉道路の花輪ICや幕張ICを利用して東京方面や千葉方面へ気軽にアクセスできます。
高台エリアは下総台地にあり、南部の埋め立てエリアは区画整理された街区で街路が広く整っています。習志野市内には大きな河川がなく、水害リスクも南部エリアの低地に限られると考えられています。津田沼駅や京成大久保駅、実籾駅などには大学のキャンパスがあり、平日の日中もにぎわいがあるのも習志野市の魅力です。
自然豊かで、音楽やスポーツが盛んな街としての魅力も
習志野市には、ほかにもさまざまな魅力があります。その一つが音楽の街としての歴史。かつて、習志野市内の中学校がスクールオーケストラ発祥の地としてテレビ放送され、JR津田沼駅近くの習志野文化ホール(2023年4月より老朽化のため長期休館)には合唱団の歌声が響いていました。習志野市では習志野文化ホール再建設基本構想を定め、施設の継承に取り組んでいます。
2019年には、京成大久保駅の複合施設「プラッツ習志野」内に市民ホールも完成しています。また、習志野市内の小学校は東日本吹奏楽大会金賞、日本学校合奏コンクール金賞の受賞歴があり、全日本マーチングコンテストで市内の中学校や高校が金賞を受賞するなど、大人から子どもまで音楽活動が盛んな街です。
習志野市は、スポーツも盛んです。野球やバレーボールなどスポーツの強豪校である習志野市立習志野高校があるほか、アメリカンフットボールの社会人チームなどの拠点も。谷津バラ園は、1934年にベーブ・ルースなど全米代表を招いて開催された日米野球大会の際に日本代表が練習を行った谷津球場のあった場所で、園内には、「読売巨人軍発祥の地」記念碑があります。新習志野駅近くには千葉県国際総合水泳場があるなどスポーツ施設も整っています。
東京湾に面した習志野市は、谷津干潟や谷津バラ園などの豊かな自然環境に恵まれています。谷津干潟は、約40ヘクタールもある水鳥が飛来する野鳥のオアシス。1993年には、日本国内の干潟としては初めて、国際的に重要な湿地およびそこに生息・生育する動植物の保全を促進するためのラムサール条約に登録されています。周囲には遊歩道や観察デッキもあり、カワセミやアオサギなどの水鳥を観察することができます。
谷津バラ園は、約800種のバラが咲くバラの観賞スポット。中学生以下は入園料無料で、シーズンによって料金が異なります。習志野市内には、実籾駅にある実籾本郷公園や、藤崎森林公園、桜の名所である鷺沼城址公園など自然と調和した公園も点在。こうした身近にある豊かな自然環境は、習志野市に暮らす魅力でしょう。
習志野市の中心である津田沼駅では再開発も計画
習志野市の中心地となるのが、JR津田沼駅です。新京成線新津田沼駅とも近接し、イオンモール津田沼、イトーヨーカドー 津田沼店、ミーナ津田沼、Loharu津田沼など商業施設が豊富にあります。また、旧津田沼PARCO B館跡は、Viitとして2023年3月に再オープンしました。
津田沼駅周辺では、旧津田沼PARCO A館跡の再開発のほか、津田沼駅南口駅前の現在運営中のモリシア津田沼や閉館した習志野文化ホールを含む地域などで再開発が計画されています。こうした開発が将来進めば、津田沼駅の利便性はさらに高まりそうです。
津田沼駅周辺地域で、目を引くのが約35ヘクタールにもおよぶ再開発街区「奏の杜」エリアです。戸建て住宅ゾーン、中高層住宅ゾーン、多彩な利便施設が集積する複合型サービスゾーン、緑豊かな公園など、にぎわいと潤いにあふれる街づくりを行っています。土地区画整理事業による基盤整備で街の骨格を形成し、街の軸として放射状に延びる都市計画道路、市道および地区のシンボルともいえる歩行者専用道路を整備。近隣公園や約2.2ヘクタールある谷津奏の杜公園などの広大な街区公園もあり、美しい街並みが形成されています。
奏の杜の特徴は、エリアマネジメント組織である一般社団法人 奏の杜パートナーズが街の維持・管理・運用を行うと同時に、地域のコミュニティづくりをサポートしていること。さまざまなイベントや約2,300世帯による防災訓練も実施されています。
街なかを歩くと歩道がしっかりと整備されていて、子どもたちが安心して遊べる住環境であると感じます。小学校や中学校も近くにあり、子育て世帯が暮らしやすい街です。スケールの大きな全体計画で、マンションからの見晴らしなど居住環境も魅力的です。
2018年には、京成津田沼駅にある習志野市役所の新庁舎の工事が完了。「音楽のまち習志野」をコンセプトにしたデザインや、敷地高低差を結ぶ建物配置で市民の広場を創出し、自然エネルギーを活用して防災拠点としての機能を強化。2018年度のグッドデザイン賞を受賞しています。
京成大久保駅に2019年11月に完成したプラッツ習志野は、習志野市の生涯学習の拠点として、中央公民館、中央図書館、市民ホール、体育館、公園、野球場、テニスコート、パークゴルフ場が一体となった新しい複合施設。民間事業者のノウハウを活用するPFI事業によって一体的に整備が行われました。音楽室や研修室、学習室などもあり習志野市民の活動の場となっています。
次に習志野市の住宅事情について紹介します。
津田沼駅では、新築マンションの分譲が活発化
この10年余りで街の開発が大きく進んだのは、津田沼駅に誕生した奏の杜およびその周辺地域です。2つの幹線道路が整備され、駅前には超高層タワーマンションも完成。スケールの大きな大規模マンションも複数棟分譲されました。津田沼駅周辺では、旧津田沼PARCO A館の建て替えプロジェクトや津田沼駅南口の再開発も計画されており、新築マンションの分譲も続きそうです。
街の整備が進んだこともあり津田沼駅周辺の新築マンション価格は上昇傾向にあり、3LDKタイプが6,000万円台以上の価格帯中心に分譲されています。実籾駅など京成本線沿線での新築マンション分譲も行われており、3LDKタイプのマンションが4,000万円台であれば十分検討可能です。
中古マンションストックも豊富です。新築マンション同様に、津田沼駅周辺の流通価格は比較的高額になります。一方で、京成津田沼駅や京成大久保駅、実籾駅などの中古マンションの中には3LDKタイプが3,000万円台前半で手が届くものも。徒歩圏内ですから、予算重視なら広範囲に探すのも良いかもしれません。
新築戸建ては、谷津駅や京成大久保駅などを中心に分譲されており、価格帯は4,000万円から5,000万円台の物件が目立ちます。徒歩10分圏と駅アクセスの良い物件も多く、ファミリー層にも十分手が届く価格で分譲されています。
次に習志野市の筆者おすすめの街を紹介します。
多彩な商業施設が集まる津田沼駅 小・中学校や公園も身近に
まずは、津田沼駅です。JR総武線快速停車駅で、東京駅へ直通アクセス可能。千葉方面へもスムーズに移動できます。そして、駅周辺にはイオンモール津田沼やイトーヨーカドー 津田沼店など商業施設が充実。駅周辺の再開発も予定されており、将来性の高さも魅力に感じます。
その中でもおすすめは、土地区画整理事業で誕生した奏の杜街区内のプロジェクト。谷津奏の杜公園には広々とした芝生の広場や遊具もあり、家族そろって休日を楽しめます。ロードサイドには、スーパーなどが入る複合商業施設「奏の杜フォルテ」や人気のベーカリーなどもあり、豊かなライフスタイルがイメージできます。
津田沼駅周辺では新築マンション分譲があるほか、中古マンションの流通も一定数あります。新築価格は、上昇しているので中古マンションと並行して検討することをおすすめします。
学生の街でもある京成大久保駅周辺は、平日でもにぎわう
二つ目は、京成大久保駅です。東邦大学習志野キャンパスや日本大学津田沼キャンパスがあり、学生も多く通う街。大久保商店街のほか、スーパーなどの買い物施設も点在しています。京成本線利用で京成津田沼駅を経由し、日暮里方面や日本橋方面へのアクセスも良好です。
京成大久保駅の注目ポイントは、2019年にオープンした複合施設であるプラッツ習志野があること。中央図書館、市民ホールに加え、体育館、野球場、テニスコート、パークゴルフ場などの運動施設もあり、子どもから高齢者まで楽しめます。地域のコミュニティ活動も行いやすいでしょう。
京成大久保駅では、過去に分譲された中古マンションの流通が活発。駅近の大規模マンションで3LDKタイプが4,000万円台で検討可能です。築年数の経った中古マンションの中には、3LDKタイプが3,000万円で手が届くものも。
津田沼駅と比べると、価格はリーズナブルです。新築戸建て分譲も活発で、駅徒歩圏でも4,000万台の予算で十分検討できます。新築戸建てを探している家族には、魅力的なエリアと言えるでしょう。
谷津干潟のある谷津駅は津田沼駅や南船橋駅も生活圏
最後は、京成本線谷津駅です。東京湾に面した、谷津バラ園や谷津干潟など、豊かな自然が魅力の街。谷津保健病院など医療施設もそろっています。
谷津駅のもう一つの魅力は、大型商業施設が豊富な南船橋駅が近いこと。谷津干潟を抜けて散策がてら歩いても行ける距離にあります。南船橋駅にはららぽーとTOKYO-BAY、IKEA Tokyo-Bay、ビビット南船橋のほか、2023年11月には、南船橋駅前に三井ショッピングパーク ららテラスTOKYO-BAYが開業しました。
商業施設には駐車場もあるので、車で気軽に出かけられます。谷津駅周辺は、繁華性が高いわけではありませんが、津田沼駅へも距離的にアクセスしやすい場所。ヨークマート 谷津店もあり、買い物には不自由しないでしょう。
谷津駅周辺では新築マンションの分譲は多くありません。新築戸建ての供給も限られますが、3LDKタイプで5,000万円台中心に販売されています。千葉街道が通り、京葉道路の花輪ICも近く車アクセスも良い街なので、カーライフは充実するでしょう。
永住志向の家族におすすめの習志野市
街がコンパクトで暮らしやすく、買い物施設や自然も身近にある習志野市。留意すべきポイントとしては、京成本線などの踏切があり場所によっては街の回遊性に難点があること。朝の通学時間帯の京成大久保駅では多くの大学生が下車し、改札を出るまでに時間を要します。奏の杜や埋め立て地域のように土地区画整理事業で整った街区がある一方、歩道の整備が十分でない場所もあります。子どもの通学路などは、事前に確認しておきましょう。
住宅地として戦後に発展してきた習志野市は、スポーツや音楽などの文化が育まれてきた街。習志野市庁舎やプラッツ習志野など、利用者目線に立ってつくられた図書館やホールといった公益施設が充実していることも強みです。通勤利便性も良好かつ自然豊かな場所で、子育てをのびのびしたい永住志向の家族におすすめしたい街です。
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