中古住宅の相場とは? 価格の決め方を知ると購入の手助けに

中古住宅は物件によって価格がまちまちで選ぶのが難しいものです。中古住宅の価格はどのように決まるのでしょうか。この記事では、中古住宅を含む不動産価格相場の基本的な考え方を説明したのちに、中古住宅特有の相場や価格の決め方を詳しく解説していきます。

不動産価格相場の基本的な考え方

中古住宅の相場や価格の決まり方を解説する前に、まずは不動産の価格相場が成立する基本的な考え方を見ていきましょう。

不動産には一つとして同じものがない

不動産価格には「定価」がない

不動産価格相場で大前提となるのが、不動産には一つとして同じものがないという考え方です。完全競争市場においては一つの物品に対しては同一の価格が決まる「一物一価の法則」が成立するとされています。しかし、同じものが存在しない不動産ではこの法則が成り立ちません。

たとえば、あるマンションに同じ間取りの住戸が複数あったとしても、住戸の位置する階数、住戸の方角、管理状況の良し悪しなどによって価格は異なってきます。適切な不動産価格を知るには、物件ごとの個別の特徴を踏まえて判断する必要があるのです。

取引時点が変わると価格も変わる

不動産の価格は物件の特徴や立地だけでなく、取引する時期(取引時点)によっても変わります。不動産価格には相場の変動があるため、たとえ同じ物件であっても、取引時点の市況やエリアの人気度などによって価格は大きく変わる可能性があります。

ある物件の不動産価格が妥当か判断する際には、取引時点での周辺相場や不動産市場全体の市況を考慮する必要があるでしょう。

相対取引で価格が決まる
不動産の価格は、株式の売買のように取引市場で決まるものではありません。また、通常の買い物のように売主側が決めた価格で買主に販売するものでもありません。

不動産は売主と買主が個別にやりとりしたうえで、双方が合意したときに初めて価格が決定するのが特徴です。これを「相対取引」といいます。相対取引を基本とする不動産売買では、過去の類似取引事例やプロの意見などをしっかり把握し、自分なりの相場観を持っておくことが重要です。

中古住宅の価格を決める要因

中古住宅の価格を左右する要因にはどのようなものがあるのでしょうか。マクロな要因とミクロな要因に分けて見ていきましょう。

景気動向などのマクロ的要因

景気動向は不動産価格に強い影響を与える

世界経済や日本経済の動向、自然災害による被害の発生、金利水準といったマクロ的要因は不動産価格に大きな影響を及ぼします。景気が加速する局面では不動産市場も活性化して値上がりする傾向にあり、反対に減速している状況では住宅ニーズの低下によって値下がりする可能性が高くなるでしょう。

金利水準も不動産相場に大きな影響を与える要因です。なぜなら住宅購入者の多くが利用する住宅ローンは、金利が高くなると借りるハードルが高くなり、金利が下がると借りやすくなるからです。住宅ローンが借りやすければ新築・中古住宅へのニーズが上がるため、価格の上昇も想定されます。

昨今、新築・中古ともに住宅価格が大きく上昇しています。これは資源価格高騰などによる世界的なインフレ傾向、円安の急速な進行といったマクロ的要因によるものです。

さまざまな個別的要因
前章で説明したように、不動産には同じものが一つとしてなく、一物一価の法則が当てはまりません。中古住宅を含む不動産の価格は、物件ごとの個別的要因で変動します。中古住宅で価格を左右する要素には、大きく分けて「物件特性によるもの」と「立地によるもの」の2つがあります。それぞれの具体例は次のとおりです。

便利な商業施設が近くにあるかどうかも価格に影響する

<物件特性によるもの>
⚫︎ 日当たりの良さ(日照・採光性)
⚫︎ 眺望の良さ(眺望性)
⚫︎ 風通しの良さ(通風性)
⚫︎ 築年数
⚫︎ 間取り
⚫︎ 階数(マンションの場合)
⚫︎ 敷地や物件の形状 など

<立地によるもの>
⚫︎ 最寄り駅までの距離
⚫︎ 商業施設・公共施設・生活利便施設までの距離
⚫︎ 治安
⚫︎ 周辺環境
⚫︎ 学校までの距離
⚫︎ 災害危険性 など

上記は価格決定要因の一例に過ぎず、これ以外にも多くの個別的要因が存在します。それゆえに、中古住宅の適正価格は物件ごとに詳しく検証する必要があるのです。

不動産価格評価の3つの方法

中古住宅などの不動産の価格を評価する方法としては「取引事例比較法」「原価法」「収益還元法」の3つがあります。

取引事例比較法
取引事例比較法は、売買対象となる不動産と条件が近い物件の取引事例を収集し、対象不動産と比較することで価格(比準価格)を評価する方法です。検証するにあたっては必要に応じて対象不動産の事情に合わせた補正や、取引時点に応じた修正(時点修正)を行い、地域要因や個別的要因も含めて比較評価します。

取引事例比較法において重要なのが、適切な取引事例を選ぶことです。対象不動産の近くのエリアか似たような条件のエリアにあり、個別的要因の比較が可能な物件である必要があります。加えて、売り急いでいたり投機目的の取引だったりといった特殊要因がないこと、できる限り新しい事例であることも求められます。

類似の取引事例があれば検証は容易なため、一般の不動産取引で広く用いられる評価法です。

原価法
続いて紹介する原価法は、対象不動産の再調達原価をベースに不動産価格を評価する方法です。再調達原価とは、対象となる物件を現時点で仮にもう一度、新築・造成した場合にかかると想定される原価のことです。

最初に対象物件の再調達原価を割り出し、次に築年数による価値の低下分を割り引いて(減価修正)、現在の価値(積算価格)を推定します。更地の再調達原価では減価修正を考慮する必要はありませんが、経年によって土壌汚染など土地に変化をもたらす事象があった場合は減価修正することもあります。

原価法は建物の評価に用いるのが一般的です。再調達原価を求めるのが困難な市街地の土地ではほとんど用いられません。

収益還元法
最後に紹介する収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと予測される収益の現在価値の総和を算出することで、対象不動産の試算価格(収益価格)を求める方法です。

物件から得られる収益をベースに価値を考えるため、収益用不動産において広く用いられます。自宅をはじめとした収益目的でない不動産でも、賃貸に出した場合の価値を推定することで、市場での評価を想定できるでしょう。

収益還元法には、主に「直接還元法」「DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)」の2つの手法があります。直接還元法は、物件から得られる年間家賃収入を還元利回りで割り戻して価格を評価する方法です。DCF法は、物件から将来得られる収益と最終的な売却益を現在の価値に割り引いたうえで、物件の不動産価格を評価する方法です。

直接還元法のほうが簡易的に計算できますが、運用期間中の家賃下落や空室発生のリスクを考慮していません。より精度の高い評価をしたいときはDCF法が適しています。

まとめ

一般的な商品と異なり、不動産には「定価」というものがないので、慣れないと価格の妥当性を見極めるのは難しいでしょう。ただ、価格の決定要因や評価方法を学べば、大まかな相場をつかむことは可能です。

新築住宅と比較して、中古住宅の購入には多くのメリットもあるため、価格の成り立ちを踏まえて賢く購入しましょう。

~こんな記事も読まれています~

この記事が気に入ったらシェア