東京都に隣接しベッドタウンとしての性格を持ちつつ、房総半島には豊かな自然の広がる千葉県。千葉県の平均年収は全国平均と比べてどのような水準にあるのでしょうか。この記事では『令和4年賃金構造基本統計調査』(以下「同調査」とします)をもとに千葉県の男女別、年代別、産業別の平均年収を解説します。
出典:e-Stat政府統計の総合窓口「賃金構造基本統計調査 / 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 都道府県別」
出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
2022年の千葉県の平均年収は?
さっそく千葉県の平均年収はいくらなのか、全国平均と比べてどうなのかを解説していきましょう。同調査によると、2022年の千葉県における賃金の状況は以下のとおりです。
「きまって支給する現金給与額」とは、労働契約や就業規則などによってあらかじめ決められた支給条件・算定方法により支給された6月分の現金給与額のこと。基本給のほか、職務手当・通勤手当・超過労働給与額(時間外勤務手当、深夜勤務手当、休日出勤手当等)なども含まれます。ここから超過労働給与額を差し引いたものが「所定内給与額」です。
「きまって支給する現金給与額」と「所定内給与額」は月あたりの金額であり、次の計算式で平均年収を計算できます。
年収=きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額
この式により算出される2022年千葉県の平均年収は、485万8,700円です。
これに対し、下表の数値から2022年の全国平均年収を計算すると496万5,700円になります。千葉県の平均年収は全国平均よりもわずかに低い状況です。
「所定内給与額」の全国平均を見ると1976年から2001年までは一貫して上昇していたものの、2002年から若干の下落や横ばい傾向が続きました。2014年以降は、コロナ禍の影響を大きく受けた2021年を除き、再び緩やかな上昇傾向に入っています。
【男女別】千葉県の平均年収は?
ここからは、さまざまな角度から千葉県の平均年収を紐解いていきます。まずは男女別に千葉県の平均年収を紹介しましょう。
男性の平均年収
千葉県における男性の賃金状況は次のとおりです。先ほどの式で計算すると、男性の平均年収は541万2,100円となります。
女性の平均年収
続いて、女性の賃金の状況は次のとおりです。計算式に当てはめると平均年収は384万7,000円となります。
男性平均と比較すると「きまって支給する現金給与額」が約10万円低くなっており、平均年収は男性を約156万円下回っています。
全国で同様の傾向が見られ、2022年の全国平均における所定内給与額の男女間格差は75.7(男性を100とする)でした。なお、上で計算した平均年収から千葉県の男女間格差は71.1となります。所定内給与額と平均年収という違いはあるものの、千葉県もほかの都道府県と同様に男女間で賃金格差があるといえるでしょう。
【年代別】千葉県の平均年収は?
次に、千葉県の平均年収を年代別に見るとどのような傾向が見られるのか紹介します。
30代以下の平均年収
30代以下の賃金の状況をまとめたものが下の表です。平均年収が10代から30代後半にかけて一貫して上がっていく様子がわかります。
40~50代の平均年収
40〜50代にかけても、年齢を重ねるごとに平均年収は上昇していきます。ただ、30代以下に比べると上昇のスピードは緩やかです。
この年代で男女とも平均年収のピークを迎えます。男性の平均年収は年齢を重ねるごとに上がり続け、55〜59歳の660万9,000円がピークとなります。一方、女性のピークは45〜49歳の415万9,100円であり、それ以降は59歳までほぼ横ばいです。平均年収のピークを迎える時期に男女の賃金格差も特に大きくなっています。
60代以上の平均年収
年代別の最後に60代以上の平均年収を見ていきましょう。
この年代になると多くの人が定年を迎えるため、男女とも年齢を重ねるにつれ平均年収が下落する傾向にあります。
【産業別】千葉県の平均年収は?
最後に、産業別で千葉県の平均年収を見ていきます。産業の区分は多岐にわたるため、ここでは主要な七つの産業をピックアップして紹介します。
建設業の平均年収
建設業の賃金の状況から平均年収を計算した結果は次のとおりです。千葉県平均(485万8,700円)を60万円近く上回っており、県内における建設業の平均年収は比較的高いと考えられます。
製造業の平均年収
千葉県の製造業における平均年収を計算すると506万円となり、千葉県平均を20万円程度上回っています。建設業には及ばないものの、製造業も県内においては平均年収が高い産業といえるでしょう。
卸売業、小売業の平均年収
続いて、卸売業と小売業の賃金状況も見ていきましょう。千葉県における卸売業、小売業の平均年収は473万9,800円で、千葉県平均と比べて11万円程度下回っています。女性に限ると337万4,700円であり、千葉県の女性平均(384万7,000円)より約47万円も低くなっています。
金融業・保険業の平均年収
賃金水準が高い産業の一つである金融業・保険業の平均年収は、千葉県においても全体平均を大きく上回っています。2022年の平均年収は建設業を上回る566万2,300円であり、千葉県平均に比べて80万円以上も高くなっています。
特に、金融業・保険業に携わる男性の平均年収は751万600円と高水準で、千葉県全体の男性平均年収(541万2,100円)を200万円以上、上回っています。
宿泊業、飲食サービス業の平均年収
千葉県における宿泊業、飲食サービス業の平均年収は360万8,200円であり、千葉県平均を120万円以上も下回っています。県全体では、男性を中心として年代を重ねるごとに賃金も上昇傾向にある一方、宿泊業と飲食サービス業では40代で年収のピークを迎えます。上昇幅が緩やかなのも特徴です。
教育・学習支援業の平均年収
金融業・保険業をさらに上回る年収となっているのが教育・学習支援業です。千葉県における教育・学習支援業の平均年収は583万9,400円で、千葉県平均を100万円近く上回っています。年代別に見ると女性の平均年収のピークは45〜49歳の612万8,400円。これは、県全体で見た女性のピーク年収(415万9,100円)に比べ、実に200万円近くも高い金額です。
医療・福祉の平均年収
最後に医療・福祉の平均年収を見ていきましょう。千葉県の医療・福祉の平均年収は473万5,100円であり、千葉県平均を12万円程度下回っています。項目ごとの金額も県全体の平均値に近く、賃金面では平均的な産業です。
まとめ
『令和4年賃金構造基本統計調査』をもとに計算すると、2022年の千葉県における平均年収は485万8,700円です。全国平均と比べても大きく変わらない数値であり、千葉県の賃金は平均的な水準といえます。
千葉県の平均年収は男女別・年代別・産業別に見ても全国と同じような傾向であり、日本の典型的な賃金構造が見られるエリアです。