マンションに住もうと考えたとき、何階に住むのがよいのか悩んだ経験のある人も多いのではないでしょうか。眺望や資産価値を重視するなら高層階、価格の安さや災害リスクを重視するなら低層階といった具合に、両者とも長所と短所があります。どちらがよいのかは永遠のテーマといえるでしょう。
この記事では、マンションの高層階・低層階それぞれのメリットとデメリットを考えていきます。
マンションの高層階と低層階の定義
高層階と低層階のどちらを選ぶかは永遠のテーマと紹介しましたが、そもそもマンションの「高層階」「低層階」とはどのように定義されるのか見ていきましょう。
一般的なマンションの場合
結論からいうと、マンションの高層階と低層階を区別する法令上の明確な定義はありません。ただ、実務上は6階以上を高層階、5階以下を低層階とするのが一般的です。3〜5階を中層階として、さらに細かく分類する場合もあります。
こうした実務上の定義を裏付けるものとして、建設省(現・国土交通省)が都道府県等に通知した「長寿社会対応住宅設計指針」(建設省住備発第63号)が挙げられるでしょう。本指針の「第3集合住宅の屋外空間及び共用部分の設計指針」で次のように記載されています。
5 エレベーター
(1)6階以上の高層住宅にはエレベーターを設置するとともに、できる限り3~5階の中層住宅等にもエレベーターを設ける。
引用:国土交通省「長寿社会対応住宅設計指針」
上記を踏まえると6階以上が高層階、3〜5階が中層階、1〜2階が低層階と位置づけることができます。
タワーマンションの場合
超高層マンションのことを「タワーマンション」と呼びますが、これも法的に明確な定義があるわけではありません。ただ、20階以上の超高層マンションを指すのが一般的です。
建築物の構造耐力について定めた建築基準法第20条において、「高さ60メートルを超える建築物」が、最も大規模な建物区分として位置づけられています。高さ60メートルというのはマンションの20階程度に相当することから、20階以上を超高層とするのが慣例になっているのです。
この場合、低層階は1〜10階、中層階は11〜20階、21〜30階は高層階、31階以上を超高層階と呼ぶことが多くなっています。
マンション高層階のメリット
マンションは住む階層によって特徴が異なります。まずは、タワーマンションを念頭に高層階のメリットを見ていきましょう。
眺望が良い
多くの人が高層階の一番のメリットとして挙げるのが眺望の良さです。都心や湾岸部に建つタワーマンションからは、広々とした海と空、煌びやかな夜景などを楽しめます。公園に面している物件や郊外に建つ物件の場合、周囲に高い建物がないので空の中にいるような開放感に浸れるでしょう。
眺望そのものももちろんですが、素晴らしい景色から得られるステータスにも大きな意味があります。都心に建つタワーマンションの高層階ともなれば、多くの人の憧れにもなります。
日当たりや風通しが良い
高層階は周りに遮るものがないため、日当たりや風通しがとても良いのも大きなメリットです。南向きの物件はさることながら、低層では一般的に避けられがちな北向きの物件でも、高層階なら十分な日当たりを確保できる場合もあります。
窓を開けられる構造であれば、風通しの良さも存分に感じられます。高層階は周囲の音が届きにくく、窓を開けていても騒音があまり気にならないのもポイントです。
虫の発生が少ない
ゴキブリや蚊などの害虫がほぼ発生しない点も高層階のメリットです。蚊やハエといった飛ぶ虫は、自力だと3階程度の高さまでしか行けないといわれます。ゴキブリも同様に高層階まで自力でたどり着くのは難しいようです。
ただし、高層階だからといって絶対に虫が入ってこないわけではありません。エレベーターや排水管、配達物などを通して侵入する可能性があるためです。蚊はベランダにできた水たまりで繁殖する可能性も否定できないので、こまめに清掃したほうがよいでしょう。
関連記事「マンションで虫がこない階はある? 盲点となりがちな侵入経路とは」
資産価値を保つことができる
タワーマンションの高層階は資産価値を維持しやすいというメリットもあります。タワーマンションは、一般的に駅直結や再開発地区などの有利な立地に建てられることが多いうえ、そのなかでも高層階は人気となる傾向にあります。築年数が経過しても高層階の人気は保たれるので、リセールバリューが付きやすいでしょう。将来住み替えを視野に入れているなら、高層階を検討するとよいかもしれません。
マンション高層階のデメリット
一方で、マンションの高層階にはどのようなデメリットがあるのか紹介します。
物件価格・家賃が高い
高層階は資産価値を維持しやすいというメリットがある反面、購入時には物件価格が高くなりがちです。一般的には同じ物件、同じ専有面積でも、低層階より物件価格は上昇します。賃貸で居住する場合でも、高層階になるほど家賃が高くなる傾向にあり、一定のコストをかけられる人でないと、高層階に住むのは難しいかもしれません。
地震の揺れを感じやすい
地震の揺れによる被害が起きやすいのも高層階のデメリットです。特に気をつけなければならないのが「長周期地震動」による被害です。2011年の東日本大震災の際には、震源から離れた東京や大阪で超高層ビルが大きく揺れる事例が続出しました。
文字どおり、2秒以上の長い間隔で揺れる長周期地震動はタワーマンションと共鳴し、高層階で揺れが増幅します。揺れが大きくなることで、次に解説するエレベーターの停止も起こりやすくなるでしょう。
災害時はエレベーターが使えない
地震や台風などの災害時、エレベーターが使用できないことがある点にも注意が必要です。多くのタワーマンションで地震対策はある程度考慮されているものの、停電が起これば長期にわたってエレベーターは使用不能になります。
また、意外と見落としがちなのが水害による停電です。2019年の台風19号接近時には、タワーマンションの地下配電盤が浸水によって故障し、停電と断水が長期間にわたって続くという被害も発生しました。
エレベーターが使えないと、高層階から1階まで階段で避難しなければならず、身体的・精神的に大きな負担となるリスクがあります。
マンション低層階のメリット
続いては、タワーマンションを念頭に低層階のメリットについて見ていきます。
物件価格・家賃が安い
タワーマンションの低層階では、高層階でデメリットとなっていた価格面が逆にメリットとなります。つまり、物件を購入する際は同じ面積でも高層階より物件価格が安くなり、賃貸の場合には高層階に比べて家賃が安くなるということです。
物件価格や家賃が安くても、同じタワーマンションの住民であることに変わりはないため、マンションの共用施設も当然利用できます。
階段も利用可能
地震・水害などで停電が発生しエレベーターが停止しても、低層階なら大きな負担なく階段で1階まで下りられます。
特に大地震が起こると長期間にわたってエレベーターが動かないことも考えられ、停止中は重い水や食糧を持って階段を上り下りしなければなりません。また、いざ避難が必要になった場合でも、階段での移動が少ないほうがスムーズに避難を完了できます。災害対応の面では高層階よりも低層階に軍配が上がるでしょう。
自然の景色を身近に楽しめる
公園や並木道など自然豊かな場所に面しているタワーマンションでは、自然環境を身近に感じられる低層階の景色も魅力あるものになります。木々の緑や鳥の鳴き声など、自然を身近に感じたい人にとっては大きなメリットです。
マンション低層階のデメリット
タワーマンションを念頭に置いた低層階のデメリットは何なのか、併せて考えてみましょう。
虫が発生することがある
高層階と違って、低層階では日常的に虫が発生する可能性があります。蚊やゴキブリなどの外からの侵入も容易なので、夏場は虫除けなどの対策が必要になるかもしれません。
メリットで紹介した「自然の景色を身近に楽しめる」立地のタワーマンションでは、近隣に多くの虫が生息しています。自然を感じられる反面、虫が侵入するリスクも高まるでしょう。
騒音が気になることがある
低層階は周囲の騒音が気になりやすい点もデメリットです。路面に近い分、自動車やバイクの通行音、歩行者の話し声、工事の騒音などが聞こえやすくなります。駅近のタワーマンションだと電車の走行音や駅のアナウンスなども耳に入ってくるため、音に敏感な人は暮らしにくさを感じるかもしれません。
湿気・カビに悩むことがある
湿気やカビに悩まされることがある点も低層階のデメリットです。特に1階は地面に近いために湿度が高くなりやすく、高層階に比べてカビも発生しやすいでしょう。
タワーマンションの場合、1階部分はエントランスや共用施設で住戸がなく、2〜3階から上が住戸になっているケースも多くなっています。それでも、周囲を建物で囲まれている都心物件の低層階は採光や風通しがあまり確保できず、梅雨時や雨の日には湿気がこもってしまうこともあるでしょう。
高い住宅性能を持つ新しい物件ならそれほど問題になりませんが、築年数の古いタワーマンションは要注意です。
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まとめ
上記で見てきたとおり、高層階と低層階それぞれにメリット・デメリットがあるため、結論的には何階がよいとは断定できません。日常的な視点だけでなく、災害への備えなども含めて判断する必要があります。マンション購入を検討する際は、各階層のメリット・デメリット両面を比較して、自分と家族のライフスタイルや好みに合う階数を選ぶようにしましょう。
(最終更新日:2024.04.19)