JR常磐線、上野東京ライン、東武野田線が乗り入れる千葉県の柏駅(柏市)周辺は県内有数の商業エリア。交通、商業の利便性の高さから人気の高い街ですが、その柏駅の東西両側で再開発の計画があります。独自の文化もある街の様子を見てきました。
駅開業から街の発展がスタート
千葉県柏市にある柏駅が発展し始めたのは1896年の常磐線開通がきっかけでした。その後、1911年に東武野田線(当初は現・野田市駅から柏駅まで。醤油を運ぶために敷設。以降順次延伸)の柏駅が開業しており、その頃から柏駅周辺には徐々に市街地が形成されるようになっていきます。
1960年代から一気に市街化が進展
実際に人口が増え始めたのは1960年代以降。柏市人口ビジョン(改訂版 令和3年3月)を見ると柏市の人口は戦後一貫して増加傾向にあり、そのうちでも昭和35(1960)年から平成2(1990)年の30年間に27万人以上が増加し、急速に市街地化が進展したとあります。
都市再開発法の第一号の指定は柏駅東口
その成長に合わせてまちを変えようという意識でしょうか、1969(昭和44)年に施行された都市再開発法で第1号の指定を受けたのは柏駅東口の再開発事業でした。同法50周年を記念して作られた50周年記念誌には「時代を画した再開発事業」として紹介されており、具体的な内容としては「駅前広場整備と合わせて大型百貨店を再開発事業の核施設とした典型的な初期の再開発」とあります。
開発前の柏駅東口は一部の店舗を除き、低層で老朽化した商住混在の木造建物が密集しており、防災や商業振興の観点から課題があったのだとか。そこで5,300平方メートルの駅前広場を設けるとともに、柏駅が橋上駅であることを考慮して2階部分に歩行者専用嵩上式広場(ダブルデッキ)2,800平方メートルを設置したとあります。
これによって歩車分離を図り、さらに駅舎だけでなく隣接建築物ともダブルデッキで連結することで都市空間の有効利用を図ったともあり、現在では多くの駅前で見かけるペデストリアンデッキで繋がった複層的な駅前空間は柏駅東口から始まったことが分かります。
再開発で百貨店、商業施設が誕生。街を変えた
このときに建てられた2つのビルがスカイプラザ柏、柏そごうです。そごうは1973年10月に開業しますが、同年には駅西口に柏高島屋が進出。これら2つの百貨店を中心にした駅周辺店舗の集客効果は大きく、これまで東京方面に流出していた購買力を地元に留めることに寄与します。その結果、柏市は千葉県北西部から茨城県南部を商圏とする中核的商業都市として知られるようになりました。
また、ダブルデッキを中心にした駅前空間は柏市を語るときにはよく引用されており、柏市の顔といっても良いほど。ここを中心にストリートミュージシャンが活動、イベントが開かれるなどしており、ある意味、柏の文化を育んできた場所と言えます。
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50年後の今、百貨店撤退に老朽化が問題に
「時代を画した再開発事業」と言われた1973年の再開発から、2023年はちょうど50周年。この間に社会も、柏駅周辺の大きく変わりました。長らく柏市民に愛されてきた柏そごうは2016年9月に43年の歴史に幕を閉じて閉店。現在も敷地の一部は暫定利用されているものの、建物はそのままに残されています。
また、周辺の建物も老朽化が進んでおり、かつては最先端だった駅前の交通広場も使いづらさが指摘されるようになっていると聞きます。時代の変化とともに駅前に求められるものも変わってきており、現在の柏駅東口には緑が少ない、回遊しにくい、オープンスペースがないなどを指摘する声もあります。
百貨店跡地を市が買い取る?
そんな状況を受けて柏市は2022年12月に柏駅東口駅前の地権者を主体とした「柏駅東口未来検討委員会」を設立。以来、街の未来について話し合いを続けてきました。そうした話し合いを受けて柏市は2023年5月に「柏駅東口未来ビジョン」を発表しました。
そこでは
・駅周辺の高い求心力を維持、次時代に向けて発展させていくためには商業機能の強化が必要であること
・同時に子育て世代を含む多世代のニーズを満たす機能の充実、駅前空間の整備も必要であること
・駅を起点にして人の流れがまちへと波及するネットワークの構築などを行い、世代を問わず楽しめる価値あるまちへと進化していく必要があること
が挙げられています。
これらの方向を受けて2023年6月の定例議会では、太田和美市長が旧そごう柏店本館跡地を地権者である三井不動産から取得する意向を示しています。
これまでの会議の資料を見ると、ペデストリアンデッキ、駅前広場、周囲の建物が一体として開発されていることから単独での建て替えで駅前全体を変えることは難しいと多くの人が口をそろえています。となると、広場を含めた周辺一帯を再編する必要があります。そして、そのためには行政の関与が必要で、市長の発言はそうした意図というわけです。
連鎖型の開発で東口側を更新
では、具体的にどのような開発が予定されているのでしょう。現時点ではこれから2年ほどの間に行政が未来ビジョンを作成、公表するとされており、まだ詳細は分かりません。ただ、ひとつ分かっているのは、一度に全部を建て替えるのではなく、連鎖的に建て替えて更新を図るというやり方が模索されているということです。
これは都心部の大手町や埼玉県の大宮などで行われている開発のやり方で、ひとつの空いた土地を利用して次から次へ玉突きのように建物を更新、移転していくというもの。時間はかかりますが、途中で事業に空白期間が生じることはなく、個別ではなく、全体を考えて開発が行われます。
柏駅東口未来検討委員会第3回資料を見ると、柏駅東口交通広場を挟んである3ヶ所の集客施設(旧柏そごう、スカイプラザ柏、柏駅前第一ビル)のうちの2棟を連鎖して再構築する手が検討されていることが分かります。
今後2年ほどの周知期間を経てスタートするとなると時間はまだまだかかるはずですが、再開発の始まりの土地らしい、新しい時代の再開発が行われることは間違いなさそうです。
西口側にも広大な再開発計画
そしてもうひとつ、駅の西口でも再開発の動きがあります。駅西口は柏そごうと同時期に開業した柏高島屋があり、この50年ほどで名称変更、新館建設などを経て拡大。現在は建物3棟からなる柏高島屋ステーションモールとなっています。
住宅3棟に商業棟、病院なども計画
再開発が行われるのは駅と高島屋本館の間から北側、末広町周辺です。このエリアは細い道が多く、木造の古い建物も多い一画。そのため、1985年の柏駅西口北地区まちづくり協議会設立以来長らく検討が行われてきました。2015年には柏駅西口北地区市街地再開発準備組合となり、2017年には三井不動産株式会社が事業協力者に決定。着々と計画を進めつつあります。
2023年に準備組合が出した準組NEWS第43号には商業棟2棟に住宅棟3棟、病院に広場などがある施設配置案が掲載されており、まちを大きく変える計画であることが分かります。
今後の想定スケジュールとしては、2024年度に都市計画決定。それから1年後に組合設立、事業計画認可を行い、さらにその1年半程度後には権利変換計画認可を受け、その半年後から解体、工事着工となっています。
計画通りにいっても、2027年度くらいに取り壊しが始まるくらいでしょうか。こちらもまだまだ時間がかかる計画で、変更の可能性などもあります。しかしながら、マンションの多い東口エリアに比べ、低層の住宅が多い西口を変える、駅のすぐ目の前の計画でもあり、注目したいところです。
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交通、生活に便利で独自性のある街・柏
さて、最後に柏について。JR常磐線快速を利用すれば上野までは約30分。上野東京ラインが利用できるので東京駅までも40分弱でアクセスできますし、常磐線は東京メトロ千代田線と乗り入れしていることから、大手町、日比谷、霞が関などの都心オフィス街にもダイレクトにアクセスできます。
西口からは羽田、成田両空港へのバスに加え、愛知、京都・大阪方面への高速バスも利用できます。
個性的な商店会、個人商店も多数
商業は東西どちらにも集積しており、百貨店、大型家電店などの大型施設だけでなく、路面には商店街もあるのが柏の魅力。
意外に個人店が多く、特に駅東口の駅から少し歩いた柏3丁目あたりを中心に若い個人店主が個性的な店を出しています。一方で歴史のある米穀店、呉服店も点在しており、新旧が良い感じで入り交じっています。
ほかの街にないものとしては、地元に興味関心がある人が集まるウラカシ百年会なる商店会の存在を挙げておきましょう。従来の商店街は通りという比較的狭い範囲の繁栄のために集まるものでしたが、同会は柏全体を視野に入れた集まり。そのあたりに柏の自由な雰囲気、先進性を感じます。
飲食店もレベルが高く、グルメサイトの全国ジャンル別100名店に選ばれたことのある店が、同サイトの柏市ベスト20軒のうちの半分以上を占めるほど。特に柏神社の脇に延びる柏銀座通り商店会とその周辺にはそうした店が集まっており、柏に住みたい食いしん坊はぜひ、訪ねてみてください。
そうそう、この通りではライブハウスも見かけました。きっと夜は楽しい街のはずです。
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駅前には各種行政施設の出張所も
もうひとつ、駅東口にある柏駅前第一ビル内の商店街、ファミリかしわ3階には市の行政情報はもちろん、地元の話題について案内するかしわインフォメーションセンターがあり、その近くには柏駅前行政サービスセンター、柏市妊娠子育て相談センター、同駅前すこやかプチルームなど、行政施設の出張所が集まっています。ここに住むことを考えている人なら一度立ち寄ってみて、どのような街なのか、情報をチェックしてみることをお勧めします。
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