高齢者向け住宅とは? 種類やサービス内容・契約形態の違いなどを解説

高齢者向け住宅にはいくつかの種類があり、入居条件や利用できるサービスがそれぞれ異なります。入居できるのは基本的に自立した生活が可能な人ですが、要介護者が入居できるところもあり、費用もさまざまです。今回は、高齢者向け住宅の概要、主な種類とそれぞれの違いについて解説します。

高齢者向け住宅とは

高齢者向け住宅とは、高齢者が安心して暮らせるよう配慮された住宅の総称です。代表的なものとしては、サービス付き高齢者向け住宅、シニア向け分譲マンション、老人ホームがあげられます。

年齢を重ねると身体機能が低下し、ちょっとしたことが大きな事故につながりがちです。安全なはずの家の中でも、「階段から転落した」「入浴中に溺れた」「食べ物をのどに詰まらせた」などの事故は珍しくありません。1人暮らしや高齢夫婦だけの世帯では対処が遅れ、生命にかかわるおそれもあります。こうした不安を払拭できるのが高齢者向け住宅です。

高齢者向け住宅の主な種類

ここでは、自立した生活が可能な人が入居できる高齢者向け住宅として、次の4つを紹介します。

・サービス付き高齢者向け住宅
・シニア向け分譲マンション
・住宅型有料老人ホーム
・介護付き有料老人ホーム

それぞれの特徴を見ていきましょう。

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者住宅(サ高住)は、原則として60歳から入居できる高齢者向けの賃貸住宅です。一般的なアパートやマンションと同じように生活できますが、建物内はバリアフリー化されており、安否確認や生活相談のサービスが受けられる点が異なります。また、別途費用はかかりますが食事の提供も受けられます。

ただし、介護サービスや医療ケアは提供していないため、介護が必要になった場合は外部の事業者と契約するか、別の施設への住み替えを検討しなくてはなりません。ちなみに「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた介護型のサ高住は、要介護・要支援の認定を受けている人が入居できます。

シニア向け分譲マンション

高齢者が生活しやすい環境が整っている分譲マンションで、50~60歳くらいから入居が可能です。購入には住宅ローンが利用でき、資産として売却や譲渡することもできます。身体機能維持を目的としたジムやプールなどの運動施設、カラオケルームやシアタールームなどの娯楽施設を備えたマンションもあり、老後もアクティブに暮らしたい人に選ばれています。

なお、自立生活が可能な人を対象としているため、原則として介護サービスはありません。物件によっては介護・医療ケアに対応していることもあるので、事前に確認しましょう。

住宅型有料老人ホーム

有料老人ホームには「健康型」「住宅型」「介護付」の3タイプがあり、このうち住宅型有料老人ホームは、自立生活が可能な人や要介護度が低い人を対象としています。見守りや家事のサポート、食事の提供といったサービスが受けられ、入居者が交流できるよう定期的にイベントを開催している施設もあります。

ただし、介護サービスはなく、常時介護が必要になった場合は外部の介護事業者と契約するか、住み替えが必要です。契約形態は利用権方式で、居室・共有部の利用料金とサポート料金がパッケージ化されています。あくまで利用権であり、シニア向け分譲マンションのように自分の資産になることはありません。

介護付き有料老人ホーム

介護が必要な人を対象にした老人ホームで、施設内に介護スタッフや看護師が常駐し、介護や見守り、生活支援を行います。契約形態は住宅型有料老人ホームと同じく利用権方式で、要介護度によって利用料金が変わります。自立しているときからでも入居できるので、健康に不安のある人や途中で住み替えるのは面倒といった人にも向いています。

高齢者向け住宅のそれぞれの違い

以上4種類の高齢者向け住宅について、それぞれの主な違いとメリット・デメリットをまとめました。参考にしてください。

【サービス付き高齢者向け住宅】

・契約形態:賃借権
・介護サービス:なし
・メリット:生活の自由度が高い/物件が多く選択肢が豊富
・デメリット:介護度が高くなると住み替えが必要

【シニア向け分譲マンション】

・契約形態:所有権
・介護サービス:なし
・メリット;生活の自由度が高い/自分の資産になる
・デメリット:維持費(修繕積立金、固定資産税、都市計画税)がかかる

【住宅型有料老人ホーム】

・契約形態:利用権
・介護サービス:なし
・メリット:オプションで食事の提供や日常生活のサポートが受けられる
・デメリット:食事や入浴の時間が決められている

【介護付有料老人ホーム】

・契約形態:利用権
・介護サービス:あり
・メリット:介護や医療のサービスが手厚い
・デメリット:住宅型よりも費用が高め

介護付き有料老人ホーム以外は、基本的に介護サービスはありませんが、介護が必要になったときにスムーズに移動できるよう、介護棟を併設している施設もあります。安心して生活するために、内容をしっかり確認して希望に合う施設を選ぶことが大切です。

公的機関が設置する高齢者向け施設

次に、公的機関が設置する高齢者向け施設を紹介します。代表的なものには、次の3つがあげられます。

・特別養護老人ホーム
・養護老人ホーム
・軽費老人ホーム

それぞれの特徴をみていきましょう。

特別養護老人ホーム

常に介護を必要とする高齢者を対象とした施設で、入浴・排せつ・食事、そのほか日常生活の全般をサポートします。公営施設なので費用は比較的安価です。看取りまで対応してもらえるので、終の棲家として申し分ありません。そのぶん入居希望者は多く、申し込んですぐに入居できる可能性は低めです。

養護老人ホーム

環境的・経済的に困窮した高齢者を受け入れ、自立した生活に復帰できるように支援することが目的の施設です。介護サービスはないため、身体的介助が必要な人は利用できません。食事の提供や健康管理、経済的なアドバイスといった自立支援サービスが受けられますが、社会復帰が目標なので入居できるのは短期間です。

軽費老人ホーム

身体機能の低下や経済状況により自立した生活ができない60歳以上の人に対し、無料または低額な料金で食事や居室を提供する施設です。提供されるサービスは見守りや外出時のサポートなど生活支援が中心で、基本的に介護サービスは受けられません。介護が必要な高齢者の受け皿にはならないため、2008年からはケアハウス(軽費老人ホームC型)に順次建て替えられることが決まりました。

ケアハウスには一般(自立)型と介護型があります。介護型には65歳以上かつ要介護度1以上の人が入居でき、生活支援サービスのほか介護サービスが受けられます。

高齢者向け住宅を選ぶ際の注意点

高齢者向け住宅にはさまざまな種類があり、受けられるサービスやかかる費用は施設によって異なります。いまは元気でも、介護が必要になったときのことをしっかり考えておくことが大切です。介護度によっては、月額利用料が高額になることもあります。年金や貯蓄で支払っていけるのか、子どもたちから援助してもらえるかなど、家族で話し合う必要もあるでしょう。立地や設備、サービスの内容、費用などを比較検討して、自分に合ったところを選ぶようにしてください。

まとめ

高齢者向け住宅は、バリアフリー対応で高齢者が暮らしやすいように配慮された住宅です。スタッフによる安否確認や見守りがあるので、安心して生活できるでしょう。「老後もアクティブに暮らしたい」「手厚い介護を受けたい」など、考え方は人それぞれです。入居時にまとまった資金が必要になる可能性もあるため、まずは高齢者向け住宅の種類や特徴を把握し、資金計画を立てておくとよいかもしれません。

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