としまえん跡地に映画「ハリー・ポッター」の世界が誕生! 変わりゆく豊島園駅周辺を歩く

東京都練馬区にあった遊園地としまえん跡地に2023年6月、「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 – メイキング・オブ・ハリー・ポッター(以下、スタジオツアー)」が誕生。災害時の避難所となる練馬城址公園も一部開園しました。変化する豊島園駅周辺を見てきました。

としまえんから練馬城址公園へ

豊島園駅
西武豊島線の豊島園駅。スタジオツアーなどの開業に伴い、駅が新しくなり、ずいぶんとスタイリッシュな雰囲気になりました(筆者撮影)

西武池袋線練馬駅から一駅、西武豊島線の豊島園駅の北側には1926(大正15)年開業の遊園地としまえんがありました。

都営大江戸線豊島園駅
豊島園エリアと練馬駅エリアを結ぶ豊島園通りに面した都営大江戸線豊島園駅。同線ができたことで2路線2駅が利用可能になり、新宿方面へのアクセスが便利になりました(筆者撮影)

当初、利用できる交通機関は西武豊島線だけでしたが、1991年に都営12号線(現在の東京メトロ大江戸線。全線開通は2000年)の光が丘駅~練馬駅間が開通、2路線が利用できるようになりました。

掲示
かつてのとしまえんの入口近くには土地の歴史、思い出を記した掲示がありました(筆者撮影)

としまえんという名称から豊島区にあるように思う人もいるようですが、この名称は室町時代にこの地にあった練馬城を築城した豊島氏に由来するもの。としまえんは石神井川を挟んで両側に広がっており、そのうち西武豊島線、大江戸線それぞれの豊島園駅がある石神井川の南側は一部に低地はあるものの高台。かつてはそこに城がありました。

東日本大震災を受けて広域防災拠点へ

敷地面積、歴史ともに首都圏有数で人気のある遊園地だったとしまえんですが、実は1957(昭和32)年の時点で都市計画「練馬城址公園」の指定を受けていました。

その後、2011年に東日本大震災が発災。これを受けて東京都は同年12月に「都市計画公園・緑地の整備方針」で「練馬城址公園」を2020年度(令和2年度)までに事業化を図る優先整備区域に指定しています。しばらく止まっていた整備計画が東日本大震災をきっかけに再び動き始めたというわけです。

スタジオツアーにも防災的な意味

そして、東京都が定めた期限である2020年6月にとしまえんの閉園が発表され、公園の段階的な整備のプロセスに合わせて未開園部分に「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 – メイキング・オブ・ハリー・ポッター」が30年間運営されることになりました。

スタジオツアー
豊島園通りに面した駐車場入り口付近。人気の施設の誕生とあっていろいろなメディアでも取り上げられています(筆者撮影)

この施設は2012年にロンドンにオープン、以来1700万人が訪れた「ワーナー ブラザース スタジオツアーロンドン-メイキング・オブ・ハリー・ポッター」をベースにしたもの。楽しさばかりが取り上げられていますが、実は防災的な観点もある施設でもあります。

スタジオツアー前の庭
スタジオツアー前の庭は一般公開されており、いざというときには庭、建屋ともに避難所ともなる想定です(筆者撮影)

東京都建設局の「都市計画練馬城址公園の整備計画」によると、スタジオツアー敷地は災害時に避難場所としての機能や、防災用の備蓄場所などとしても想定されており、いざというときには頼りになる場所になるというわけです。

ふれあいゾーン
2023年に開業した花のふれあいゾーン。防災設備も多く配されており、日常は遊びの場として、災害時には避難所として利用されることになります(筆者撮影)

その後、練馬城址公園の一部が2023年5月に、翌月の6月にはスタジオツアーが開業して話題になりました。

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時間をかけて公園、道路などを整備

練馬城址公園
練馬城址公園は5つのゾーンに分けられており、現在完成しているのは花のふれあいゾーン。エントランス交流ゾーン、川辺の散策エリアはそれぞれ一部の完成となっています。スタジオツアーがあるのはにぎわいアクティビティゾーンの一部です(出典:東京都建設局「都市計画練馬城址公園の整備について」)

しかし、変化はまだ始まったばかりです。練馬城址公園は花のふれあいゾーン、人々を繋げ歴史を伝える文化ゾーンなど5つのゾーンに分けられています。そのうち、現在、完成しているのは花のふれあいゾーン、エントランス交流ゾーンと川辺の散策ゾーンの一部とにぎわいアクティビティゾーン内のスタジオツアーです。

現在の計画は2029年度まで

練馬城址公園
練馬城址公園の整備計画。広大な土地だけに徐々に整備が進んでいくことになります(出典:練馬区「都市計画練馬城址公園の整備計画」)

計画では今後順次開園していく予定で、2029年度の時点では下記の状態が目指されています。

・人々を繋げ歴史を伝える文化ゾーンが順次開園し、災害時の避難場所としての機能が拡充
・避難・活動場所ともなるオープンスペースを拡大
・開放的な草地の広場と水遊びのできる空間を整備
・公園とスタジオツアー敷地が一体となって公園としての機能が充実

それでも2029年度で全面開園というわけではないことを考えると、まだまだ時間がかかる計画と言えそうです。

これに対して地元ではどのような公園があったらよいかを考え、提案しようという動きがあり、練馬区や周辺の町会などと一緒になってワークショップを開催するなどの活動が続けられています。

住んでいる人たちの声が生かされた公園なら使い勝手も良いはず。もし、このエリアに住むことになったら、参加してみたいところです。

西武鉄道が駅を改良

西武豊島線豊島園駅構内
西武豊島線豊島園駅構内。普通の駅とはまったく違うカラーリングで映画の世界を彷彿とさせます(筆者撮影)

それ以外にもスタジオツアーのオープンをきっかけにした動きがあります。西武鉄道では豊島園駅を映画の世界をイメージさせるものに改装していますし、ラッピングトレインも走っています。

豊島園駅だけでなく、西武鉄道池袋駅でも豊島園行きの電車が主に発着する1・2番ホームの壁面や駅サインなども改装しているそうですから、ファンならずとも、この2駅の変化はチェックしておきたいところです。

練馬区はシティプロモーションをスタート

また、練馬区ではスタジオツアーを契機に新たなまちのシンボルを広く知ってもらい、練馬を好きになってもらいたいと「ねりまシティ・ウィザード・プロジェクト」をスタートさせています。練馬区で働くその道のプロをウィザードとして紹介したり、魔法使いの格好で掃除をするイベントが開かれたりとさまざまな取り組みがあり、どれも楽しそう。

豊島園駅周辺から練馬駅へ向かう豊島園通りを取り上げた「豊島園通りの歩き方」なる冊子も作っています。周辺の飲食店では魔法にちなんだメニューを出していたりするそうです。

都市計画道路整備も進む

都市計画道路補助第133号の位置
都市計画道路補助第133号の位置。練馬城址公園の端を通る計画です(出典:東京都建設局「道路整備計画のあらまし 補助第133号線」)

また、旧としまえんの敷地近くでは都市計画道路補助第133号線の計画もあります。これは世田谷区桜三丁目から板橋区赤塚二丁目までの延長約16キロメートルの都市計画道路で、そのうち、練馬城址公園にかかる部分は向山四丁目から同区春日町三丁目までの区間。

この区間が整備されることで将来、広域防災拠点としての機能を備えることになる練馬城址公園へのより安全、安心なアクセスが確保され、防災性の向上が図られます。目白通りや環状八号線等とつながり、住んでいる人にとっては交通の利便性がアップします。

練馬から近い、由緒ある土地

西武豊島線豊島園駅
西武豊島線豊島園駅のホームから練馬駅方向を見たところ。中央に見えているのは目白通り沿いに建つタワーマンション。両駅は徒歩圏内にあります(筆者撮影)

さて、いろいろな動きがあるとしまえん跡地周辺ですが、そもそもどのような場所なのでしょう。まず、立地でいえば練馬区の区政の中心である練馬駅からわずか1駅、約2分という場所にあります。

練馬駅は徒歩、自転車圏

練馬駅
練馬駅。西武池袋線、同豊島線のほか、西武有楽町線、都営大江戸線が乗り入れています。西武有楽町線は東京メトロ有楽町線、同副都心線経由で東急東横線、みなとみらい線とも乗り入れているので、都心のみならず、多方面に向かうのに便利(筆者撮影)

前述の豊島園通りを利用すれば都営大江戸線豊島園駅と練馬駅は歩いて10分ちょっと。徒歩圏です。この区間は平らなので、自転車を利用すればもっと容易にアクセスできるはずです。

練馬文化センター
現在大規模修繕中の練馬文化センター。駅から近く、利用しやすいためさまざまなコンサート、落語会などが開かれています(筆者撮影)
Coconeri
ペデストリアンデッキで駅直結の複合施設Coconeri。1階部分はバスターミナルなどと隣接しています(筆者撮影)

練馬駅周辺の利便性は言うまでもありません。豊島園駅に近い北口駅前にはコンサートや落語会などが楽しめる練馬文化センター(現在大規模修繕中で2024年4月30日まで休止予定)があり、病院や区立区民・産業プラザ、スーパーなどの商業施設の入った複合施設Coconeriがあります。南口側には商店街、飲食店街があり、郵便局や区役所などの区の施設も集中しています。

生活に必要な施設に加えて遊びの場も

豊島園 庭の湯
石神井川沿いにある温浴施設「豊島園 庭の湯」。名称の通り、四季折々の季節が感じられる日本庭園があり、それを眺めながら入浴できます(筆者撮影)
ユナイテッド・シネマとしまえん
豊島園通りの都営大江戸線豊島園駅のすぐ近くにあるユナイテッド・シネマとしまえん。身近に映画館があるまちはそれほど多くはないはずです(筆者撮影)

豊島園駅周辺にもさまざまな施設があります。元々行楽地だったことから石神井川の近くには豊島園 庭の湯という温浴施設があり、2駅の間にはユナイテッド・シネマとしまえんも。

練馬総合運動公園
練馬総合運動公園への案内掲示。川沿いには桜並木もあります(筆者撮影)

豊島園通りにはスーパー、郵便局、飲食店、クリニックなどがあり、毎日の生活に必要なものはそろいます。石神井川沿いには練馬総合運動公園もあります。

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関東大震災後に移転してきた寺社

田島山十一ヶ寺
知らない人を案内すると必ず驚かれるのがこのエリア。両側に寺が並び、周辺とはまったく違う雰囲気の場所です(筆者撮影)

また、意外に寺社の多い場所でもあります。たとえば豊島園通りには田島山十一ヶ寺と呼ばれる浄土宗の寺が集まっている一画があります。これは浅草の田島山誓願寺にあった11の寺が関東大震災後に移転してできたエリア。

関東大震災では浅草などの下町エリアに被害が多く、練馬区などを含む武蔵野台地で被災が少なかったことから人口が首都圏の西側、武蔵野台地側に移動しています。この寺社群はその代表的な例というわけです。

春日神社
春日神社。左手にある神輿の蔵からも分かる通り、地元では歴史のある神社で祭りも盛大に行われています(筆者撮影)

また、練馬城址公園の花のふれあいゾーンの北側には春日神社がありますが、ここは練馬城と関係があったという説もあり、地元のさまざまな活動の場として利用されています。

知る人ぞ知る美しい住宅街

城南住宅エリア
城南住宅エリア。練馬はそもそも雑木林や畑などが残る緑の多いエリアですが、その練馬でも一画は特別な雰囲気があります(筆者撮影)
まちの歴史
まちの歴史を物語る掲示。組合のクラブハウスの前に建てられています(筆者撮影)

もうひとつ、この周辺には城南住宅組合が造った知る人ぞ知る住宅地があります。2012年には住まいのまちなみコンクールで国土交通大臣賞を受賞し、区内で初めて「みどりの保全モデル地区」に指定されるなど、緑の濃い美しい街並みが印象的な一画です。桜の木も多いので、季節には歩いているだけで花見が楽しめます。

向山庭園内
向山庭園内、高台に建つ建物からは眼下に池を見下ろすことができます。緑が多いためか、夏でも涼しさを感じる空間になっています(筆者撮影)

この住宅地エリアには1929年から1931年に鉄道大臣を務めた江木翼氏の邸宅だった場所を区が買い取って整備、公園として公開している向山庭園があります。高低差のある公園内には池があり、それを見下ろすように茶室、和室がある実に雰囲気のある空間で、近くに住んでここをわが家の庭代わりにするのは贅沢なことでしょう。

豊島園通り沿い
豊島園通り沿いにはマンションが並んでいます。比較的古いマンションが多い印象です(筆者撮影)
練馬城址公園
練馬城址公園の花のふれあいゾーン周辺まで来ると低層の建物が中心になります(筆者撮影)

通り沿いにはマンションがあるものの、それ以外は戸建てなど低層の住宅が多いエリアです。練馬駅から乗り換えがあるぶん、これまではあまり認知度の高い駅ではありませんでしたが、これからは変化があるかもしれません。実際、まちを歩いてみると、開発が予定されている土地などもありました。

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石神井川沿いでは低地に注意

ひとつ、注意したいのは広域防災拠点となるということで地震に対しては備えのある土地と考えられますが、石神井川沿いには低地もあります。水害に関しては違う観点で見る必要があるわけで、住んでみたいと考えた場合には現地を訪れるのはもちろん、区のハザードマップなどもチェックする必要があるでしょう。

今後の発展の期待に加え、住環境の充実、都心に比べると比較的手の届きやすい住宅価格、と住宅を買いたい人には気になる条件がそろう豊島園周辺エリア。遊びがてら足を運んでみてはいかがでしょう。

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