コロナ禍を経て街選びはどう変わった? 調査データをもとに最新動向を解説

コロナ禍を経て、ようやく日常の生活を取り戻しつつあります。一方で、リモートワークが浸透するなど、ワークスタイルは確実に変化しています。このタイミングに、アルヒ株式会社TownUは、「コロナ禍を経た街選びと家選びの実態調査」を実施し、その結果を発表しました。そこで今回は、街選びについて考えたいと思います。

コロナ禍を経て、働き方の変化で通勤時間への考え方も多様化

調査は、2023年3月に、3年以内に住宅購入を検討している全国の25~69歳の男女300人を対象として、住宅購入動機や職場までの通勤時間、住む街を選ぶ際に重視したい点などについて聞いたものです。

働いている人に在宅勤務の頻度を聞いてみると、おおむね週1回以上在宅勤務をしている人が約7割という結果に。そのうちの約2割は毎日(週5日以上)在宅勤務をしていました。在宅勤務が定着していることがうかがえる結果です。

その影響からでしょうか、働いている人に対して、検討している物件から職場までの通勤時間を聞くと、ばらつきが見られました。「30分以上~45分未満」(25.9%)と回答した人が最多ではあるものの、「1時間以上~1時間30分未満」(23.0%)と回答した人も多く、それ以外の選択もそれぞれ1割を超えるなど、希望する通勤時間については考え方が多様化していることがわかります。

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出典:アルヒ株式会社 TownU「コロナ禍を経た街選びと家選びの実態調査」

では、街選びで重視する点も変わったのでしょうか?

住む街を選ぶ際には、「街の口コミ・評判を検索する」

「住む街を選ぶ際に重視したいこと」では、上位3つに「日常の買い物の利便性」、「最寄り駅までの近さ」、「職場へのアクセスの良さ」が挙がるなど、やはり交通利便性が重視されていました。この点では、コロナ禍前と大きな違いはないようです。

一方で、「住む街を選ぶ際の情報収集方法」については、変化を感じる結果になりました。最も多いのが「街の口コミや評判などを検索する」(37.3%)で、次いで「地図で周辺施設・店舗を検索する」(34.7%)。いずれも、インターネットで検索したり地図を閲覧したりして、情報をいながらにして収集できるものです。

コロナ禍前と比較した調査結果はありませんが、「実際にその街に行く」(32.0%)や「不動産業者などに話を聞く」(31.3%)などが減っているかもしれません。代わりに、「市区町村のホームページ」や「ハザードマップなどの災害危険度」、「街の治安」、「補助・助成制度」「各種手当など」、自身で広範な情報を収集しようとしているのは注目したい点です。

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出典:アルヒ株式会社 TownU「コロナ禍を経た街選びと家選びの実態調査」

公的なサイトを上手に活用して幅広い情報収集を

後悔しないように「自分自身で気になる情報を徹底的に収集する」という姿勢はとてもよいものです。いまはネットで簡単に情報収集することができます。ほとんどの場合、購入すれば長く住むことになりますから、実際に住んでいる人の声を集めたり、災害や治安などのリスク情報を調べたり、助成金や手当などの特典を確認したりと、必要な情報を幅広く集めたうえで、判断する姿勢は大切です。

街選びの情報収集の際に役立つサイトは、たくさんあります。
今はどの自治体でも、自治体の公式サイトに多くの情報を公開しています。住宅に関する補助・助成制度や子育てに関する情報なども、慣れればスムーズに探せるようになりますので、ぜひ自治体の情報を活用しましょう。

ハザードマップは、各自治体で作成して公開するものですが、筆者がお勧めするのは国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」です。自治体が情報を公開していれば、ポータルサイトの「わがまちハザードマップ」で閲覧できますし、「重ねるハザードマップ」は同じ地図上で複数の災害情報を探せます。地図上で洪水浸水想定区域と事前通行規制区間などを同時に確認できるなど、自治体ごとの情報では得られない情報も入手できますし、住む街だけでなく、よく行く場所のリスクも分かるので、一度は目を通しておいてほしいサイトです。

また各地の警察などでは、ホームページ内に「事件事故発生マップ」や「犯罪統計情報」などを公開しています。こうした情報を事前に確認することもお勧めですが、住んでからも「防犯情報メール」が届くように登録するなど、治安に関する情報を入手して、安心して暮らせるようにしたいものです。

いつも利用しているサイトだけでなく、こうした公的なサイトを上手に活用するとよいでしょう。

実際に現地には必ず行ってほしい

問題だと感じたのは、「実際にその街に行く」がわずか32.0%だということ。3人に1人しか実際に街に行こうとしていないことになりますので、これにはリスクを感じます。もちろん、街を絞り込む段階では実際に行かない場合もあるけれど、街を決める段階では実際に行くということなら問題はありません。

実際に街に行くと、たとえば駅の混雑度やバリアフリーの状態もわかります。地図上ではわからない坂道の具合や騒音、臭いの有無、子どもにとって危険な場所、夜間の女性の独り歩きで危険な場所といったものも、実際に行くことで気づくことも多いでしょう。

なによりも同じ街の住人となるであろう、街にいる人たちの様子をうかがうことで、街の印象も変わるかもしれません。口コミなどの生の声も参考になりますが、自分の目で見たり、聞いたりして得られる情報も重要な判断材料になります。家を購入するなら、ぜひ実際に住む街に行って確認するようにしましょう。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)

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