海外移住にはいくら費用がかかる? 国別の目安や移住先の選び方などを解説

永住権やリタイアメントビザを取得して海外移住する日本人が増えています。欧米諸国の労働環境や社会の多様性に魅力を感じる、物価の安い国に生活拠点を移したいなど、人により理由はさまざまです。

今後もこうした「脱ニッポン」は増加する傾向にあると見られています。しかし、海外移住にはまとまった資金や慎重な準備が必要です。今回は、海外移住に向けた準備や費用の目安、移住先を選ぶ際のポイントなどを解説します。

海外移住が人気の理由とは

外務省が公表している「海外在留邦人数調査統計」によると、2022年の日本人の海外長期滞在者は75万1,481人、永住者は55万7,034人となっています。長期滞在とは、数ヶ月の長期にわたり海外で生活することを指し、国によって3ヶ月~1年間など滞在可能期間が異なります。つまり、海外で生活したあとは、日本に帰国することが前提です。

一方、永住はその土地に住み着くことを指すため、基本的に日本に再び住むことはありません。コロナ禍の影響により長期滞在者は2020年以降減少していますが、永住者はそれ以前と変わらず年々増えている傾向にあります。背景には、グローバル化により海外が身近な存在になったり、リタイアメントビザの制度化により長期滞在しやすくなったりしたことなどが挙げられます。

インターネットが普及して、海外移住に関する情報を得やすくなったのも要因の一つといえます。また、通信網が世界的に整備され、どこにいても仕事がしやすくなったのも移住を後押しした要因でしょう。

出典:海外在留邦人数調査統計|外務省

海外移住をするために必要な準備

海外移住に必要な主な準備は次のとおりです。

・パスポートの取得または更新
有効期限まで1年を切っている場合は、渡航前に更新しておいたほうがよいでしょう。

・ビザ
国ごとにビザの種類や取得の条件が異なります。自分がどの種類のビザを取得すべきかを確認しましょう。

・予防接種
移住先の国によっては予防接種の証明書を要求される場合があります。日本にはない病気の感染を防ぐためのものなので必ず受けましょう。

・海外転出届
海外に1年以上滞在する際は、現住所の自治体へ転出届を提出します。住民登録を抹消しておけば、国民健康保険料や翌年度からの住民税を納める必要がありません。

・海外旅行保険
短期の海外旅行ならクレジットカードの付帯保険などでカバーすることもできますが、移住となると現地での生活に備え、きちんとした海外旅行保険に加入しておくのがおすすめです。保険金額や補償範囲などを確認し、自分に合った保険に加入しましょう。

・運転免許証
海外滞在中に更新が必要になる場合は、特例として日本にいる間に前倒しで更新することができます。

・国際免許証
移住先での運転を考えている場合は、国際免許証を取得すれば海外でも運転が認められます。

・郵便物転送届
郵便局では郵便物の国外転送はできません。家族や知人に依頼して転送してもらうか、海外移住者のための民間の郵便物転送サービスを利用しましょう。

・クレジットカード
海外での生活には、クレジットカードが必要不可欠です。日本の銀行は原則として海外転出すると口座が解約となりますが、海外転出しても口座が維持できる銀行なら引き落とし口座としてそのまま使えます。

海外移住に必要な費用を国別に解説

海外移住に必要な費用は、移住先の国によって大きく変わってきます。ここでは、日本からの移住先として人気の国を挙げ、それぞれの移住に必要な費用の目安について解説します。

アメリカ
アメリカは日本人の移住が最も多く人気のある国です。ただし、住むエリアによっては家賃や生活費が日本よりも高くなる可能性があるため、移住にあたっての必要な費用を理解しておくことが大切です。

また、アメリカは医療費が非常に高額になることが知られています。救急車も有料なので、長期にわたり生活する以上は、医療費の負担を軽減するためにも医療保険の加入が必須です。

一人あたりの費用の目安は次のとおりです。

・航空券代:10万~20万円
・ビザ取得費用:185USD(商用・観光ビザ)、315USD(貿易家、投資家ビザ)
・医療保険料:月1万円以上
・家賃:月10万~30万円(地域により異なる)

中国
中国は人口が多く、経済成長率のめざましい国として世界に知られています。物価は年々上昇しており、特に都市部では生活費が高い傾向があります。日本企業が多数進出している上海や香港などは日本からの駐在員や家族が多く、利便性の良い場所です。

都市部では物価や家賃が高く、とりわけ香港は、家賃相場が世界で一番高いといわれています。ただし、中国全体で見れば食費や光熱費などは比較的安く、ぜいたくな暮らしをしなければ生活費を抑えられる可能性があるでしょう。

一人あたりの費用の目安は次のとおりです。

・航空券代:2万~10万円
・ビザ取得費用:シングル8,000円(普通申請、税別)
・医療保険料:月1万円以上
・家賃:月5~10万円(単身用マンション)

オーストラリア
オーストラリアは日本との時差がわずかで、四季もあり、自然も豊かなことからワーキングホリデーなどでも人気の国です。オーストラリアには、長期滞在に適したワーキングホリデービザ、学生ビザなどがあります。ただし永住権ビザは、条件によって異なりますが、一般的には高額な取得費用がかかる可能性があります。

オーストラリアは日本よりも物価が高いといわれており、家賃や生活費も高い傾向があるため、まとまった費用を用意しておく必要があるでしょう。

一人あたりの費用の目安は次のとおりです。

・航空券代:7万~15万円
・ビザ取得費用:20AUD(ETA(電子入国許可)・サブクラス601)、8,085AUD(パートナービザ・サブクラス309)、1,330AUDから(一時的技能不足ビザ短期・サブクラス482)など
・医療保険料:月1万円以上
・家賃:月5万~20万円程度

タイ
タイは日本から比較的近く、観光地として人気がある国です。料理もおいしく、人々も素朴で温かみがあり、物価も安いので移住先としても人気があります。特に、タイではリタイアメントビザがあり、50歳以上の退職者に人気の移住先です。

ただし、タイの銀行口座に80万バーツ(約320万円)以上の預金、または月に6万5,000バーツ(約26万円)以上の年金受給があるなど、リタイアメントビザには取得条件があります。不動産の売却や退職金などで、まとまった資金を用意する必要があります。

一人あたりの費用の目安は次のとおりです。

・航空券代:2万~8万円
・ビザ取得費用:リタイアメントビザ2,000バーツ(約8,000円)
・医療保険料:月1万円以上
・家賃:3万5,000円~8万円

カナダ
カナダは日本以外の国からも移住先として人気があり、人口の20%超を移民が占めるほどです。国家としても積極的に移民を受け入れ、60種類以上の移民プログラムが用意されていて、永住権を申請することもできます。

食費や生活費などの物価は日本よりも高めで、外食費が高い傾向にあります。カナダで手に入る日本の食材も日本国内より倍以上高いイメージですが、現地の食材を使って自炊すれば安く抑えられるでしょう。

一人あたりの費用の目安は次のとおりです。

・航空券代:6万~20万円
・ビザ取得費用:約100CAD(観光ビザ)、1,325CAD(永住権)など
・医療保険料:月1万円以上
・家賃:10万円以上

移住先選びのポイント

海外への移住は人生の大きな決断です。言語や文化、環境で選ぶのはもちろん、以下のポイントについてもよく考えてみましょう。

まず、治安はいいか、危険なエリアはないかを調べることが重要です。無用なトラブルを避けるためにも、現地の事情について事前にある程度把握しておきましょう。

次に、物価や家賃が高すぎると生活費がかさみます。日本円との為替レートによっては予想以上に費用がかかることもあります。災害や感染症が頻発している国や地域では、生命や健康に関わるため、渡航前に予防接種を受けなければなりません。医療体制は整っているかのチェックも忘れずに。英語や日本語が通じる医療機関があると心強いでしょう。

また、現地の食事になじめるかどうかも、長く住むには重要な問題になります。日本の食材が手に入りやすいエリアに住むと安心ですが、日本で購入するよりも高くつくのがほとんどです。場所によっては、英語が通じないこともあるため、現地の言葉を少しでも覚えていくことをおすすめします。言葉がある程度理解できれば、現地の人とコミュニケーションを取りやすく、受け入れてもらいやすくなるでしょう。

ビザの取得には時間がかかることもあります。ビザの種類や条件、手続きや取得費用などは変わることがあるため、最新の情報を確認しましょう。

まとめ

海外移住にかかる費用は国によって大きく異なります。また、政権交代や景気、気象などが影響して、インフレやデフレといった現象を引き起こさないともいえません。日本よりも物価や家賃が高い国もあるので、生活費が十分足りるのかを試算しておきましょう。

治安や災害、感染症、医療体制など、生活するうえで必要な情報はあらかじめ確認しておくことをおすすめします。移住先を選ぶには、お金にまつわるたくさんの要素を考慮しなければなりませんが、言語や文化に理解を深めるのも大切です。

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