【データで見る】 海外に出国する人は増加も、パック旅行が減少のカラクリとは

1月も下旬に入り、年末年始の感覚も抜け、いつも通りの日常生活を送っている人が多いと思います。でも、少しだけ振り返ってみましょう。年末年始はどのように過ごしましたか? 筆者が子どもの頃は、年末年始になると芸能人がハワイなど海外旅行に行くことが多かったため、ワイドショーなどでは成田空港で出国または帰国する様子が放送されていましたが、最近はどうなのでしょうか? 今回は海外旅行について、データで斬っていきます。

海外旅行ブームは過ぎ去った?

経済産業省が毎月発表している第3次産業活動指数という経済指標があります。この指標は非製造業や広義のサービス業などの第3次産業に属する業種の生産活動を総合的に捉えることを目的としています。売上高や取り扱い量からその産業の生産活動の動向を表す経済指標として注目されています。旅行業はサービス業、つまり第3次産業に該当しますので、この指標から旅行業のトレンドを読み解いてみましょう。

出所:経済産業省『第三次産業活動指数』のデータを基に株式会社マネネが作成
注:数値は現指数。2010年を100としている

旅行業全体で見ると指数は横ばいにですが、内訳を国内と海外で分けると、海外旅行が大きく下落していることが分かります。2017~2018年は下落に歯止めがかかったように見えますが、それでも非常に低い数値で停滞しています。それでは、海外旅行ブームは過ぎ去ってしまったのでしょうか? 他の経済指標も見てみましょう。

海外へ行く日本人は増えている

法務省が発表している出入国管理統計で日本人の出国数を見てみましょう。上図と同じ期間でグラフを作成したのが下図になりますが、年ごとに変動はあるものの、出国数は増えていることが分かります。

出所:法務省『出入国管理統計』のデータを基に株式会社マネネが作成

この2つのデータを見ると、日本人が海外旅行をしなくなったのに、海外へ出国する人は増えているという結論になり、矛盾が生じているように思えてしまいます。国が発表している指標にもかかわらず、どうしてこのようなことが起きるのでしょうか? さらに他の経済指標を見て分析していきましょう。

パック旅行の価格高騰が原因?

総務省が発表している消費者物価指数に、品目別価格指数というものがあります。そのなかに「外国パック旅行費」という費目がありますが、こちらも同じ期間をグラフにしてみると、右肩上がりになっていることが分かります。

出所:総務省『消費者物価指数』のデータを基に株式会社マネネが作成

このなかには海外のホテル代金や、燃油サーチャージなどが含まれると考えられますが、軒並みそれらの価格が上昇しているのでしょう。さらに為替相場の影響もあると考えられます。物価があまり上がらない日本に住んでいると、そんなにイメージは湧かないかもしれませんが、海外のなかでも特に新興国の物価の上昇は驚くほどのものです。筆者も過去には台湾やインドネシアに駐在をしていた経験もありますが、モノによっては1年間で50%以上も値上がりするケースもあります。それに合わせて、現地のホテル代も観光地に限らず高騰している国が増えています。
これだけ外国パック旅行費が値上がりしているわけですが、観光庁が発表している旅行取扱状況年度総計を見てみると、海外旅行の取扱額は減少しています。2010年から見ると、直近の2018年は3.6%の減少です。

出所:観光庁『旅行取扱状況年度総計』のデータを基に株式会社マネネが作成

取扱額は簡単に式で表すと単価と客数の掛け算で算出されますから、単価がこれだけ上昇しているにもかかわらず、取扱額は増えるどころか減っているということは、明らかに客数が減少していることが分かります。実際に下図はそれを表しています。

出所:観光庁『旅行取扱状況年度総計』のデータを基に株式会社マネネが作成

自分で海外旅行をアレンジする人が増えた

これまでのデータをまとめると、海外に出国する日本人は増えているものの、外国パック旅行を利用する人は大幅に減少しているということになります。ここから推察されるのは、パック旅行費が高騰しているため、海外旅行に行く日本人は自分で航空券もホテルも予約しているということです。


最近は様々なサイトが存在し、旅行する期間と行き先を入力するだけで、格安な航空券とホテルを提示してくれるため、たしかに旅行代理店を通す必要もなくなってきました。また、現地に住んでいる駐在員や、よく旅行に行く人たちがSNSやブログなどでオススメのお店や旅程を示してくれるため、ガイドを付ける必要もなくなりました。

今回は旅行について経済指標を基に読み解いてきましたが、世の中にはたくさんの業種が存在します。一見関係ないように思える経済指標からも、このようにトレンドを分析することができますので、みなさんも経済指標を分析する習慣を身に付けてみてください。

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