地盤改良工事とは? 住宅購入時に気になる疑問にお答えします

住宅を建てるとき、地盤の状態が気になる人も多いでしょう。地盤が弱い土地に家を建ててしまうと、家が傾いたり、地震や台風などの自然災害で甚大な被害が出たりする恐れがあります。そのため、場合によっては建物の建築工事に入る前に地盤改良の工事が必要になることもあります。この記事では地盤改良工事が必要なケースや工法の種類などを解説します。

地盤改良工事とは

地盤改良工事とは、軟弱な地盤を強固にするための工事のことをいいます。地面の上に大きな住宅を乗せるのですから、その荷重に耐えられる強度が必要です。一見すると頑丈そうな土地でも、地盤の強さまでは外見では判断できません。

もし、地盤の強度が足りず、住宅を支えきれなくなると、地盤沈下が起こるリスクがあります。建物の倒壊にもつながるため、家を建てる前には地盤調査を行い、必要に応じて地盤改良を行いましょう。

地盤調査とは

住宅を新築する際には、必ず地盤調査を行います。地盤調査とは、地盤の強度を調べるもので、この調査を元に地盤改良が必要かどうかを判断します。

地盤調査は阪神・淡路大震災後の2000年に法律により義務付けられるようになりました。また、2009年から履行された住宅瑕疵担保履行法も地盤調査に大きな影響を与えています。

住宅瑕疵担保履行法では、建築した家に瑕疵があった場合、建設後10年以内であれば住宅を建てた事業者がその修理を行うことが義務付けられています。

この修理や損害賠償に備えるために、事業者は瑕疵担保保険に加入するか、保証金を供託して資金を確保しなければなりません。瑕疵担保保険への加入には地盤調査報告書が必要です。

地盤調査の方法はSWS試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)やボーリング調査が一般的です。SWS試験は、半日ほどで済み費用も抑えられる点から住宅の地盤調査によく用いられます。

一方、ボーリング調査はマンションなどの大規模建築の地盤調査で採用されることの多い方法です。大型の機械を使用するので搬入できる土地の広さが必要で、費用も高額になります。

地盤改良工事をしなくてはならないとき

地盤改良には費用がかかるので、できればやりたくないという人もいるでしょう。地盤改良工事をしなくてはならないのは、一体どのようなときかについて解説します。

地盤調査の結果
地盤調査の結果、地盤が軟弱だと判断されれば地盤改良工事を行う必要があります。一般的な一戸建てでは土質が粘性土の場合ではN値が3以上、砂質土の場合では5以上あるのが理想的です。N値とは、地盤の強度を示す数値で、高ければ高いほど強固な地盤であることを意味します。そのため、N値が3未満の場合は地盤改良工事を実施したほうがよいでしょう。

周辺地域の土地の状況
N値が大きくても、周辺地域やその土地が埋立地や盛り土の場合、地盤改良が必要となる可能性が高いでしょう。なぜなら、新しく盛土をした土地は間隙(かんげき)が多いからです。盛土の間隙は、時間がたつにつれて徐々に減少して固く引き締まった地盤になりますが、また間隙の多い状態で建物を建ててしまうと不同沈下が起こる可能性があります。

ほかにも、地域で地盤沈下や液状化を起こした場合など、周辺の情報から地盤の軟弱さを判断できることもあります。液状化マップを作成している自治体もあるので、建築予定地の状態を確認してみましょう。

地盤改良のための工法3種類

地盤改良の工法は3種類あり、地盤の状況に合わせて適切な工法を選択しなければなりません。それぞれの工法の特徴や費用ついて解説します。

表層改良
表層改良は、軟弱な地盤全体をセメント系固化材で固める工法です。基礎の下の部分に当たる地面全体を掘り起こしセメント系固化材を混ぜて固め、地盤を強固にします。さまざまな土質に対応でき、バックホー(油圧ショベル)を使用するため、狭小地や高低差がある場所でも施工が可能です。

また、比較的簡単な方法なので工期が短く、費用も抑えられます。費用相場は、1階の床面積が20坪程度、深度1メートルぐらいの表層改良を行う場合で、約30万〜50万円です。しかし、対応できる深度は地下2メートルまでであるため、それより下の地盤まで強化しなければならない場合には採用できません。

柱状改良
柱状改良は、最も採用されている地盤改良の工法で、戸建て住宅からマンションまで幅広い建物に適応できます。ただし、大型重機の搬入が必要であるため、狭小地には向いていません。

柱状改良の仕組みは、建築地の土とセメント系固化材を混ぜ合わせたものを柱状の補強体として埋め込み、構造物を支えるというものです。そのため、表層改良よりも深い地盤を強固にできます。

柱状改良もシンプルな工法であるため、比較的費用は抑えられます。相場としては、1階の床面積が20坪程度、深度4〜5メートルぐらいの柱状改良を行う場合で、約70万〜100万円です。表層改良よりも高くなりますが、次の鋼管杭工法よりも安価な工法です。

鋼管杭工法
鋼管杭工法は、表層改良や柱状改良では対応できないようなより深い部分を補強できる工法で、深度30メートルほどまで施工できます。鋼管杭工法では、地中に鋼製の杭を垂直に打ち込み、建物を支えます。ただし、支持層と呼ばれる強固な地盤まで杭を挿入するため、深度約30メートル以内に支持層がないと施工できません。

なお、費用は高額になることが多く、1階の床面積が20坪程度、深度5〜6メートルぐらいの鋼管杭工法を行う場合で、約110万〜140万円です。鋼管杭工法は重量のあるマンションなど大規模建築向けの地盤改良方法ですが、軟弱な地盤が深い部分にわたる場合は、一般住宅にも使われることがあります。

地盤改良についてのQ&A

地盤改良はそう何度も経験するものではないため、知られていないこともたくさんあります。そこで、地盤改良のよくある疑問について解説していきます。

建て替えや中古住宅のときの地盤改良は?
地盤改良を行うのは新築に限ったことではありません。建て替えの場合も、先ほど紹介した住宅瑕疵担保履行法の関係で地盤調査が必要となります。地盤調査の結果によっては、新築と同じように地盤改良をしなければなりません。

中古住宅に関しては、建物を動かすわけにはいかないので、地盤調査や地盤改良はできません。心配であれば近隣の土地を調査してみましょう。液状化マップを活用するのも一つの手です。

地盤調査に有効期限はある?
地盤調査に有効期限はありません。そのため、過去に地盤調査をした報告書があれば再度行う必要はないといえます。

しかし、場合によっては地盤調査の判定が変わるため注意が必要です。たとえば周辺で造成工事や擁壁工事など、地盤に影響を与えるような工事をした場合などです。したがって、もし周辺でこのような工事に心当たりがあって心配というのであれば、再度地盤調査を実施してもよいでしょう。

地盤改良が必要ない土地を探すためには?
地盤改良にはお金がかかるので、地盤改良の必要がない土地を購入したいという人も多いでしょう。しかし、地盤の状況は実際に調査してみないとわかりません。周辺の土地の状況を調べる、液状化マップをチェックするなど、できるだけ地盤改良の可能性が低い土地を探しましょう。

まとめ

地盤改良工事とは、軟弱な地盤を強固にするための工事です。地盤改良が必要かどうかは、地盤の状態を確認する地盤調査によって判断されます。

初めから地盤改良の必要がまったくない土地を見つけるのは難しいため、安心して暮らせる住宅を建てるために、地盤改良のための工事費も予算に入れておくと安心です。

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