出入国在留管理庁の発表によると、令和4年6月末現在の在留外国人数は296万1,969人で、前年末に比べて20万人以上増えています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響はあるものの、在留外国人の数は近年増加傾向にあります。
今回は、日本の金融機関で住宅ローンを組んで日本国内の不動産を購入したいと考える外国籍の人に向け、外国籍の人が住宅ローンを組む際に求められる条件や、住宅ローンを利用するにあたっての注意点について解説しましょう。
外国籍で永住権がなくても住宅ローンは組めるのか?
結論からいうと、永住権のない人でも住宅ローンを組める可能性はあるものの、選択肢はかなり狭まります。
多くの金融機関では、日本国籍を有している、もしくは永住権を有している人を住宅ローン商品の対象としているため、永住権を持たない外国籍の人は一定の条件を満たしていないと住宅ローンを組めないのです。
たとえばフラット35の場合、「永住者」または「特別永住者」の資格がある人でないと借りられないと定められているため、永住権がない外国籍の人は原則利用できません。
外国籍の人が住宅ローンを組む際の条件とは?
先に紹介した永住権をはじめ、外国籍の人が住宅ローンを組む際にはどのような条件を求められるケースが多いのか紹介していきます。
なお、外国籍の人特有で求められる条件以前に、日本国籍の人が住宅ローンを組む際に求められる条件も当然に満たしていなければなりません。具体的な条件は、以下のようなものです。
●借入時・完済時の年齢制限
●団体信用保険に加入できる健康状態
●収入制限
●他の借入金の状況
●本人証明、収入証明をできる書類の有無
外国籍の人はこうした全員に求められる条件を満たしたうえで、外国籍の人特有の条件も満たす必要があるため、日本国籍を持っている人よりも住宅ローンを組むハードルが高いといえるのです。
永住許可
前述のとおり外国籍の人については、永住許可(永住権)を住宅ローン組成の必須条件としている金融機関が多くなっています。永住権を取得するにはどのような条件を満たす必要があるのか、紹介していきましょう。
外国籍の人が永住権を取得するには、大きく「素行が善良であること(素行善良要件)」「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)」「その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益適合要件)」の3要件を満たしていなければならないとされています。
●素行善良要件
法律を守り、日常生活において社会的に非難されない生活を送っていること。
●独立生計要件
本人の有する資産や技能から考えて、将来安定的に生活が送れることが見込まれ、公共の負担にならないこと。
●国益適合要件
原則として10年以上引き続いて日本に住んでいるなど、本人の永住が日本の利益になると認められること。
連帯保証人
永住許可を有していない外国籍の人が住宅ローンを組むにあたっては、日本国籍もしくは永住権を有している配偶者を連帯保証人にすることを求められるケースが多くなっています。
現状は夫婦ともに永住許可を有していない場合では、利用できる住宅ローンがかなり限られるといえます。また、利用できる商品があっても、通常より金利が高めに設定される傾向にある点には注意が必要です。
外国籍の人が住宅ローンを利用する際の注意点
続いては、外国籍の人(特に永住権を有していない場合)が住宅ローンを組む際に注意すべき4つのポイントを解説していきます。
口座開設ができない場合がある
住宅ローンを組むには、通常その金融機関で普通預金口座を持っていなければなりません。口座を持っていなければ新たに開設する必要がありますが、金融機関によっては外国籍であることを理由に、口座開設の段階で断られるケースもあるため要注意です。
そもそも外国為替及び外国貿易法(外為法)により、在留期間が6ヶ月未満の人(非居住者)は普通口座を作れないと定められています。普通口座を開設するには、ビジネスや観光目的の短期ビザなどでの来日ではなく、あくまでも仕事や留学を目的として6ヶ月以上日本に滞在していなければなりません。
融資期間が日本国籍の人よりも短くなる場合がある
永住権のない外国籍の人でも利用できる住宅ローン商品はありますが、融資期間が日本国籍の人よりも短く設定されている場合があるため注意が必要です。
たとえば、イオン銀行では「イオン銀行住宅ローン(永住権なし)」という住宅ローン商品を提供していますが、借入期間は1年以上15年以内に設定されています。日本国籍であれば最大35年まで借り入れられることを踏まえると、短めの設定になっていることがわかります。
本人確認書類が日本国籍の人と異なる
外国籍の人が住宅ローンを申し込む際には、必要となる本人確認書類が日本国籍の人と異なる点も注意しましょう。これは、短期滞在目的ではないことなどを証明する必要があるためです。
具体的には、本人確認書類として在留カード・特別永住者証明書・運転免許証(交付から6ヶ月以上経過しているもの)・外国人登録証明書のいずれかの準備が求められます。
一定以上の日本語能力が求められる場合が多い
日本の金融機関では、外国語でのローン申し込みに対応しているところは多くありません。
住宅ローンの申し込み時には、日本語で書かれた商品パンフレットの内容を理解し、担当者と日本語でやり取りしなければなりません。さらに、必要書類を日本語で記入できる程度の日本語能力を求められるケースがほとんどです。
金融商品の説明には専門的な内容も含まれるため、外国籍の人にとってはハードルが高いといえます。
永住権の取得が難しい場合は、母国の金融機関も比較検討してみよう
ここまで紹介してきたとおり、永住権を有していない外国籍の人が、日本の金融機関で住宅ローンを組むのはハードルが高いのが現状です。
場合によっては、永住権なしで融資してくれる日本の金融機関を探し出すよりも、母国の金融機関に日本国内の不動産を購入するための金銭を融資してもらうほうが、難易度が低い可能性もあります。
日本国内の不動産を対象とした融資の可否や条件については、それぞれの国や金融機関によって異なるため、あらかじめ内容を確認したうえで比較検討するとよいでしょう。
まとめ
永住権を有していない外国籍の人でも、住宅ローンを組める可能性はあります。ただし、永住権なしで利用できる住宅ローン商品を提供している日本の金融機関は多くありません。
日本の金融機関で住宅ローンを組むのであれば、やはり永住権を取得するか、日本国籍や永住権を有する配偶者に連帯保証人になってもらうのがよいでしょう。これらの方法により、外国籍の人であっても利用できる金融機関の選択肢が広がります。
永住権の取得や連帯保証人の確保が難しい場合には、母国の金融機関が利用できるか確認し、比較検討してみましょう。
(最終更新日:2023.05.18)