西武池袋線石神井公園駅近くの商店街で、再開発が予定されています。池と緑が美しい都立石神井公園に程近く、東京メトロ副都心、同有楽町線の直通電車も利用できる石神井公園駅は、駅周辺に商業施設も多く、利便性、自然が同時に身近にあるエリア。公園近くには公共施設も集まっています。
難読地名の古いまち、石神井
西武池袋線「石神井公園」駅はいわゆる難読地名。「石神井」は「しゃくじい」と読むのですが、一説によると昔、村人が井戸を掘った際にめでたい印のある石の棒が出てきて、それを霊石、石神様としてまつったことに由来するとか。都立石神井公園(以下、石神井公園)とは駅を挟んで反対側にあたる練馬区石神井町4丁目には、その石を御神体とする石神井神社があります。
地名の成立は非常に古く、南北朝前後の文献にはすでに登場していたと東京堂出版の「東京の地名由来辞典」に記載があります。石神井公園内には徳川幕府以前、室町時代後期に江戸城を築いた太田道灌が滅ぼした豊島氏の居城、石神井城跡が残されており、この一帯は古くから関東平野の中でも重要な場所だったようです。
鉄道開通以降に発展、最初は観光地だった
江戸時代には石神井公園内にある三宝寺池が景勝地として紹介されるようになり、農村だったこのあたりを訪れる人もいたそうですが、本格的に開発が始まったのは1915年の武蔵野鉄道(現西武池袋線)の開通以降です。
おもしろいことに初期の開発は宅地としてではなく、観光地としてでした。鉄道開発の前後には石神井村の収入役(会計を司る公務員。地方自治法の改正で現在は廃止)だった豊田銀右衛門によって2つの庭園が造られていますし、駅の開業を機に村長の栗原鉚三は三宝寺池逍遥路の整備、人工滝による滝壺遊び、水上自転車や手漕ぎボートの遊覧を行って観光客を迎えたとか。池畔の土地を東京府に提供、1920年には日本初の100メートルプールが誕生しました。
その後、1934年に三宝寺池の東側に石神井池が造成され、1935年に三宝寺池の沼沢植物群が国指定天然記念物になるなど、現在の姿が形作られていきます。
現在、石神井公園には2つの池がありますが、元々は三宝寺池があっただけ。三宝寺池周辺の湧水が池となり、川となって石神井川に流れていたのですが、それを堰き止めて新しく石神井池を造ったのです。
大切にしてきた自然が宅地としての評価に
当初は観光のためでしたが、地元は石神井公園の存在、自然をとても大事にしてきました。都市計画法では都市の風致(樹林池、水辺地などで構成された良好な自然景観のこと)を維持するために風致地区を定めることができますが、石神井エリアでは1930年に石神井風致地区として指定されており、建物を建設するにあたっては風致を守るために一定のルールが設けられています。
そして、それが石神井公園周辺の住宅地の高い評価に繋がっています。石神井公園エリアは自然豊かな住宅地として知られており、実際に訪れてみると緑が濃く、水辺の近い住宅街は美しく、絵になります。
池の周囲は比高差5~10メートルほどの高台になっており、池を見下ろす形。住戸内からの眺望も得られる土地というわけです。
スポーツ施設、図書館などが公園近くに集中
さらに石神井公園周辺には区のさまざまな施設が集まっています。公園内には野球場やテニスコート、プール、アスレチック広場などのスポーツ施設がありますし、練馬区の歴史などについて展示する練馬区立石神井公園ふるさと文化館も。これはかつて石神井村の役場がこのあたりにあったため。古くから地域の中心地だったのです。
公園から歩いて3~4分ほどのところには練馬区立石神井図書館もあり、公園を中心に生活を豊かにしてくれる施設には事欠かないわけです。
また、池沿い、公園内には桜の木も多く、桜咲く季節には歩いているだけで花見になります。このエリアでは近くを流れる石神井川沿いも花見の名所として知られており、春には豊かな気持ちになれることうけあいです。
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東京メトロ副都心線、有楽町線も利用可
続いて、石神井公園以外のまちの様子を紹介しましょう。西武池袋線石神井公園駅は西武池袋線の特急、通勤準急を除いた快速急行、急行、通勤急行、快速急行など急行系の列車が停車する駅で、しかも始発、終着も多いという利便性の高い駅です。
加えて当駅発着の列車のうちには東京メトロ副都心線、同有楽町線直通列車も多く、池袋だけでなく、新宿三丁目、渋谷、永田町、有楽町などの都心部へもダイレクトにアクセスできます。副都心線は東急東横線とも繋がっていますから、横浜や中華街に行くにも便利です。
逆に秩父方面に向かうとハイキング、ウォーキングコースがいろいろあり、なかには子ども連れでも楽しめる緩やかなコースも。温泉、鉱泉なども点在しています。
2012年の高架化で駅が安全、便利に
駅は2012年に高架化され、現在の姿になりました。それ以前の石神井公園駅周辺はバスの往来に誘導員がいないと危ないような状況。駅の南北の移動にはなかなか開かない踏切を我慢強く待つ必要もありました。
筆者は実家が石神井公園駅の隣、大泉学園だったため、子どもの頃からよく石神井公園駅を利用していましたが、当時の狭く、ごちゃごちゃした駅前と現在は大違い。安全で便利になりました。
駅周辺に商業施設が集積
駅の高架化に伴い、高架下、駅周辺には商業施設もできました。2013年から順次開発、開業し、2017年にグランドオープンを迎えたエミナード石神井公園(開発エリア名。駅ナカ商業施設名はエミオ石神井公園)です。
施設内にはスーパー、飲食店、ベーカリーなどさまざまな店舗が入っており、駅周辺をひと回りするだけで毎日に必要な品はほぼそろいます。
北口側には再開発タワーがそびえる
また、駅の北口広場に面しては2002年に竣工した石神井公園ピアレスがあります。石神井公園北口は、石神井公園のある南口に60年以上(!)遅れて1978年に開設されたものの、交通広場もなく、駅に通じる道も4メートルほどと狭い状態。駅前でありながら道路整備が進んでいないために、土地を有効活用することもできませんでした。
そのため、1985年に再開発準備組合が設立され、駅前のタワー棟、駐車場棟、スポーツ施設棟の3棟が誕生しました。
タワー棟の低層階にはスーパーや銀行、書店、美容院などに加え、練馬区の石神井公園区民交流センター、消費生活センター、ワークサポートねりまなども入っています。
駅の南北にはバスターミナルがあり、西武新宿線上井草駅、同下井草駅などを経由してJR中央線阿佐ヶ谷駅、荻窪駅、吉祥寺駅や東武東上線成増駅などに向かうバスが出ています。北口からは羽田空港行のバスも出ています。
商店街内で再開発、道路の拡幅も
駅南口交通広場から西に向かうとパークロード石神井という商店街があります。あまり広いとは言えない通りの両側に小規模な商店、飲食店が並ぶ昔ながらの商店街ですが、ここが2022年9月に再開発組合が設立された石神井公園駅南口西地区第一種市街地再開発事業の予定地です。
計画では道路を挟んで北街区、南街区の2棟が予定されており、中心となる北街区は地上26階建て、住宅は約210戸建設されることになっています。南街区は約20戸、地上9階建てという計画で、住宅のほかに商業施設、公共施設、事務所なども入ります。
また、狭小な区画をまとめて高層化することで現在の細い通りを拡幅します。この通りは戦前に決定されていた都市計画道路「細街路」を踏襲、1966年に計画決定された都市計画道路補助232号線で、区としては長らく拡幅を考えていたということでしょう。この道路自体は総延長4,380メートル、幅員16メートルとされており、現在の道幅からするとかなり広い道ができることになります。
ひとつ気になるのは現在の活気ある雰囲気がどうなるのかという点。計画では建物1階、2階には店舗が入ることになっていますが、各店はいずれも大きく、現状とはかなり違うものになると予測されます。
一方で、長く枝分かれしながら延びる同商店街は駅から離れるにつれ、シャッターの下りた店舗も目につくようになっており、駅に近い部分を除くと活気を失いつつある様子。新たな商業施設ができるのは楽しみですが、今後、商店街がどうなるか。気になるところもあります。
石神井川沿いの団地建替えも完成間近
また、石神井公園の南、石神井川沿いでは1967年に竣工した都内でも最大級の大型団地、総戸数490戸の石神井公園団地の建て替えが進んでいます。この団地は全9棟のRC造5階建て、日本住宅公団(現UR都市機構)が分譲したもの。
建替え後は8棟844戸のマンションになる予定で、2023年秋には完成予定。すでに建物の姿はほぼ見えており、販売も順調に進んでいる様子です。同物件の手前、石神井川沿いに区立さくらの辻公園もあり、気持ちの良い住環境と言えそうです。
農地も多く、新鮮な野菜が身近で買える
石神井公園駅周辺エリアの魅力、利便性、再開発について紹介してきましたが、練馬区は23区内でも農地が多く、新鮮な野菜、収穫体験などができる場所であることも付け加えておきましょう。石神井川近くにはJA東京あおば石神井支店があり、ここには地元産の農産物、花卉などが並ぶ「とれたて村石神井」があります。
また、街中にも農地が残されており、直売所があったり、ブルーベリーの摘み取りができたりします。安全、新鮮な食に関心のある人にはうれしい地域ではないでしょうか。
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個人的にお勧めしたいのは、駅前にある練馬区の石神井観光案内所。詳しい地図が用意されているので、石神井公園駅を訪れたらまずはこちらで地図を入手、それを見ながら歩いてみると良いでしょう。
自然の多い環境ながら利便性も高く、今後の変化も期待できる石神井公園。散策がてら訪ねてみてはどうでしょう。
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