2022年春の中小企業の平均昇給額は上昇! 大企業との比較や2023年の見通しを解説

物価の上昇により家計が苦しいと感じている人も多いのではないでしょうか。そのようななか、企業の賃上げが注目されています。特に、中小企業は昇給率が大企業よりも低い傾向があるため、今後の動向が気になる人も多いでしょう。今回は、中小企業の昇給率について解説します。

2022年春の中小企業の平均昇給額

日本経済団体連合会によりまとめられた「2022年春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果」では、中小企業の平均昇給額が公表されています。同調査によると、2022年春の中小企業の昇給は平均で5,036円(前年比660円増)、1.92%(前年比0.24ポイント増)の上昇という結果でした。

調査対象は従業員数500人未満、中小企業17業種754社を対象に実施されたものです。昇給額・昇給率ともに2000年以降で最高値となっており、賃金が少しずつ上昇していることがわかります。

2022年春の最終集計結果は次のとおりです。

出典:(一社)日本経済団体連合会│2022年春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果

そもそも昇給とは

昇給とは「給与が上がる」という意味です。ただし、ベースアップと定期昇給では意味が異なります。ここでは、ベースアップと定期昇給、昇給率の計算方法、定期昇給の時期についてそれぞれ解説していきます。

ベースアップと定期昇給
昇給にはベースアップと定期昇給の2種類があります。ベースアップとは、企業の業績や物価の上昇、景気などに応じて給与水準自体を増額するものです。一方で定期昇給とは、年次や勤続年数、仕事の成績により、毎年定期的に給与が上がる仕組みのことをいいます。

日本では定期昇給を実施している企業が多いものの、外資系企業やベンチャー企業などは成果主義を採用しているところも増えているのが実情です。そのため、定期昇給があるかどうかは、勤務している会社の規定によって異なります。

昇給率の計算方法
昇給率とは、昇給前の給与に対して昇給後の給与が何%上昇したかを示す割合です。基本的に基本給や月間給与が対象となるため、手当や賞与は含まれません。

たとえば、昇給前の給与が20万円、昇給後の給与が20万2,500円とすると、昇給率は「2,500円÷200,000円×100」で1.25%です。昇給前の給与が30万円、昇給後の給与が30万4,500円の場合の昇給率は「4,500円÷300,000円×100」で1.5%となります。

なお、昇給率は企業や業種によって変わりますが、一般的に大企業よりも中小企業のほうが低い傾向です。その理由として、中小企業は大企業に比べて資金力が弱いこと、労働組合の影響が小さいことなどが挙げられます。

定期昇給の時期
定期昇給の時期は毎年4月の年1回、または4月と10月の年2回としている企業が多いです。4月に定期昇給が多い理由は、事業年度の開始を4月としている企業が多く、決算や新入社員の入社時期に合わせられるためです。昇給を同時期にまとめて実施することで、労務管理がしやすくなるというメリットもあります。

定期昇給はあくまでも会社が自由に設定できる制度です。定期昇給以外にも資格取得のタイミングなどで臨時昇給を行う企業もあります。

大企業や公務員の昇給率は?

一方で、大企業や公務員の昇給率はどうなのでしょうか。ここでは、最初に大企業の昇給率について説明した後、公務員の昇給率を解説していきます。

大企業の昇給率
日本経済団体連合会のデータによると、2022年春の大手企業の昇給額は平均で7,430円、昇給率は2.27%という結果でした。そのうち製造業平均の昇給額は7,578円、昇給率は2.32%、非製造業平均の昇給額は6,735円、昇給率は2.05%です。

ただし、建設(アップ率3.76%)や鉄鋼(アップ率2.98%)など、昇給率に大幅な伸びを見せる業種がある一方、14業種中の6業種は1%台にとどまっています。また、貨物輸送(アップ率1.28%)と商業(アップ率1.70%)は前年よりも昇給率が低くなっており、業種によって結果に差があることがわかります。

全体的には大企業のほうが昇給率は高いものの、業種によっては大企業でも昇給率が伸び悩んでいるといえるでしょう。

出典:(一社)日本経済団体連合会│2022年春季労使交渉・大手企業業種別回答状況[了承・妥結含](加重平均)

公務員の昇給率
国家公務員の場合、給与水準は人事院規則という法律によって定められています。一般行政職は「行政職俸給表」により1級~10級までの階級ごとに俸給が決まる仕組みです。給与水準は民間企業との均衡を確保できるように調整されています。

地方公務員の場合は「給料表」によって支給額が決まり、国家公務員と同様に民間企業の給与水準を調査したうえで調整される仕組みとなっています。

2022年には民間企業の給与水準が上がったことから、国家公務員一般行政職の給与も月平均921円、0.23%の増加となりました。なお、ボーナスも増加しており、給与とボーナスがともに引き上げられたのは3年ぶりという結果が出ています。

2023年の春闘では昇給が見込める?

ここでは、2023年の昇給の見通しについて解説します。まずは春闘の意味について解説した後、組合側の賃上げ目標を紹介するので参考にしてください。

そもそも春闘とは
「春闘」とは、春季生活闘争を略した言葉です。毎年春ごろになると春闘が行われ、労働組合と経営側が労働条件の改善のために交渉をします。最初に大手製造業が交渉した後、非製造業が交渉に入ります。大手企業の春闘が終わると中小企業の交渉が始まり、毎年3月ごろに終了するという流れです。

春闘の交渉次第では昇給率がアップする可能性もあるので、ニュースなどを注目してみましょう。

組合側は5%の賃上げ目標
昨年から物価の上昇が続く一方で、賃金の上昇率は緩やかな傾向となっており、2023年は物価の上昇を考慮したベースアップが望まれています。2023年の春闘では、日本労働組合総連合会が例年より1%多い5%以上の賃上げを目標にしており、経営側も物価上昇をふまえたベースアップを検討する可能性があります。

人手不足が続くなか、人材の確保のため賃上げを進めようとする動きがある一方、燃料費や仕入価格の上昇などにより、一部の企業では賃上げは困難とする見方も顕著です。賃上げ率は2%台半ば、そのうちベースアップ分は1%弱という予測もみられます。特に「ベースアップ分は1%に届かないだろう」という見方が強いようです。

まとめ

2022年春の中小企業の昇給額は平均で5,036円、1.92%の上昇となり、2000年以降最高値となりました。大企業と比べると全体の上昇率は低いものの、業種によっては昇給率が高くなっています。2023年は物価の高騰や人手不足を背景に、さらなる昇給が求められています。春闘の交渉次第で昇給率がアップする可能性もあるので、結果に注目してみてください。

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