2022年12月15日に開催された「ARUHI presents 本当に住みやすい街大賞2023」。1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の中で「本当に住みやすい街」TOP10を発表するなか、千葉県流山市の流山おおたかの森駅(首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス)が第2位にランクインしました。そこで、流山市の井崎義治市長に、受賞した思いや流山おおたかの森の魅力、行政としての取り組みなどについてお話を聞きました。
(市長プロフィール)
流山市長 井崎 義治(いざき よしはる)さん
1954年生まれ。立正大学文学部地理学科、サンフランシスコ州立大学大学院修士課程修了(地理学専攻)。アメリカの民間企業で都市計画や地域計画に携わった後に帰国。2003年5月から現職で現在5期目。
※撮影時のみマスクを外しています
ブランディング戦略が実を結び、子育て世代の人口が増加
―まずは、今回の受賞に対する率直な感想をお聞かせください
近年、流山市はメディアに取り上げられることが多く、注目され始めた当初ほどの反応は得られないことが多いのですが、今回の受賞に関してはTwitterやFacebookの流山市公式アカウントに多くの書き込みや「いいね」をいただくなど、喜びの声が多く届いています。
―SNSで街の魅力を発信することに力を入れているのはなぜですか?
「母になるなら、流山市。」をキャッチフレーズに都内で広告展開を開始したのが2010年度のこと。昔は駅貼りのポスター広告を中心に展開していましたが、近年は我々がメインターゲットとしている共働きの子育て世代やその予備軍により強くメッセージが届きやすいSNSへシフトしています。
―そうしたブランディング戦略により、流山市は子育て世代の人口が増え続けているんですね
流山市の人口は約20.5万人(2022年4月1日現在)。ここ10年で約4万人増加しており、年齢別人口でみるとボリュームゾーンは30~40代の子育て世代となっています。子どもの人口も年々増加中です。
市民と一緒に面白く、楽しい街づくりを
―街づくりを進めるには市民のニーズを知ることが大切だと思いますが、どのような施策を行っているのでしょうか?
市民とリアルなやり取りをすることはやはり大切で、具体的には市民の声を直接聞くタウンミーティングを開催しています。私が市長に就任して以来、2023年3月の開催で215回目を迎えます。
タウンミーティングで出た苦情や要望のすべてに応えることはできませんが、実現が難しい案件に関してはその理由とともに今できることを提案するなど、真摯な対応をすることで市民の信頼を得ることができます。
流山市が毎年実施している「まちづくり達成度アンケート」で、行政について信頼している市民の割合を調査したところ、2009年は46.5%でしたが、2021年度には80.6%と倍近くまで増加しています。
―よりよい街づくりのために、市民と一緒に取り組むことも?
流山市には意識の高い方がたくさんいますので、知恵と力を借りています。例えば「流山市では数々の先進的な取り組みをしているのに、ホームページはダサイ」という市民の声があり、ホームページのリニューアルを行いました。市民に協力を呼び掛けたところたくさんの応募があり、時間も予算も限られた中でしたが、現在のホームページに一新することができました。※流山市のホームページはこちらをクリック。
また、「母になるなら、流山市。」のポスター出演者はかつて、マーケティング課の職員が駅でスカウトをしていました。ところが、数年前から市民グループが自主的にモデルコンテストのイベントを実施するようになり、その推薦を受けた家族を採用するようになりました。「市民と一緒に面白く楽しい街を作っていこう」という雰囲気が醸成されてきたのではないでしょうか。
送迎の負担と駅から遠い保育園。2つの課題を「送迎保育ステーション」が解消
―流山市では子育て環境に力を入れていますが、その経緯は?
2005年のつくばエクスプレス開業にあたり、宅鉄法に基づき鉄道整備と土地の区画整理をセットで一体的に進めることになりました。当時の調査で、流山市はつくばエクスプレス沿線の自治体の中で、つくば市や柏市などに比べて知名度がとても低いことが分かりました。そこで、市役所内にマーケティング課を作り、流山市の情報を発信して認知度アップと地域イメージの向上を目指すことにしました。
同時に、仕事をしながら子育てもできる環境を整え、利便性の高い子育て支援サービスを提供することで「流山市を選ぶ理由」を作ろうと思ったことが始まりです。
―具体的には、どのような子育て支援サービスを提供したのでしょうか?
園児の送迎と保育を行うため、流山おおたかの森駅と南流山駅の近くに「送迎保育ステーション」を導入しました。保護者の方々の「毎朝の送迎が大変」という声が多かったこと、流山市内でも駅から遠い場所にある保育園は定員割れしていたこと、2つの課題をマッチングさせようと考えました。送迎サービスがあることで、実際に使う・使わないに関わらず、いざというときの安心感に繋がり、流山市に引っ越すことを決める子育て世代がとても多いと聞いています。
また、最近は認可保育園の定員割れが全国的に話題になっていますが、流山市の場合は子育て世代の人口が増加するとともに出生率も上昇しています。そのため、早い段階から待機児童ゼロを目指し、保育園の整備と保育園をフル稼働するための保育士の確保に力を入れてきました。その結果、2021年度には待機児童数ゼロを達成しました(2022年度は待機児童数3名)。
―小学校以降の人口増加対策は?
2024年には「(仮称)市野谷小学校」と「(仮称)南流山第二小学校」2つの小学校と「南流山中学校」が移転して開校予定です。人口の増加に加え、流山市は出生率も高く、子どもの数は増え続けています。児童数がピークを迎える時期に合わせて、受け皿となる学校を増やしています。
駅に降り立てば「あぁ、帰ってきた」とホッとする街
―今後、さらなる住みやすさのアップするような計画はありますか?
流山市内全体を活性化するため、南流山・初石・江戸川台の3駅とその周辺の再整備を進めています。また、流山市では広告物条例に基づき景観を形成し、風致の維持に努めていますが、条例ができる前からある建物に関しては条例が適用されません。個別に協力を求め、同意をいただいた上で、広告物を1枚1枚取り除く作業を行っています
生活の利便性としては、人口増加に合わせて病床数も増やすべく、大きな病院を誘致しています。診療所も積極的に受け入れて、安心して暮らせるまちづくりを進めています。
流山おおたかの森駅周辺に関しては「流山おおたかの森S・C」の周辺に緑道を作る計画を進めています。街路樹は現在もあるのですが、完成すれば木漏れ日が美しい、より心地よい空間となる予定です。
―市民に人気の施設はありますか?
流山おおたかの森駅の南口にある「森のまち広場」と「ケヤキのプロムナード」ですね。流山おおたかの森駅に降り立ち、この景観を見た瞬間「ここに住みたい」と思う方が多いそうです。また、仕事を終えて夕方に流山おおたかの森駅へ戻って来たとき「あぁ、帰ってきた」と感じ、ホッとする空間でもあります。
私自身、イベント時やプライベートでも訪れることがありますが、本当にいい空間です。駅前というと急ぎ足で人々が行き交う殺伐としたイメージがありますが、「森のまち広場」は足を踏み入れた途端、家族も、老夫婦も、高校生のカップルも、みんながゆったりとしていて、平和な空気に満ちています。
私が市長になる前から、車が入ることのできない駅前広場を作ることが計画されていました。しかし、当初はおおたかの森駅南口公園のツツジの築山を見通せる空間とする計画だけで、木を植える予定はありませんでした。木陰がない公園は夏になるととても暑いため、人が自然と集まる空間とするために計画を大幅に変更。大きな木をたくさん植えることで景観が様変わりし、居心地の良い空間が生まれました。
流山おおたかの森駅と西初石近隣公園(おおたかの森駅南口公園)を結ぶケヤキのプロムナードは、ゆるやかな下り坂となっています。限られた予算で「緑のまち」としての景観を演出するため、駅から見て手前には大きな木を、駅から遠くなるにつれてだんだん小さな木を植えました。植えたケヤキのうち、駅から手前の大きな9本は都市開発に依頼をし、奥の9本は市が植えているのですが、遠近法の効果により緑のインパクトを高め、ケヤキのプロムナードが長く見えるよう工夫しています。新緑のシーズンには本当に美しく、心が癒されます。
―最後に、引っ越し先を探している人や検討中の人に向けてメッセージをお願いします
「緑豊かな良質な住環境」「快適な都市環境」の中でゆったりとした時間の流れを享受できる流山市に、是非一度足を運んでみてください。新緑の季節は特におすすめです。そして、こうした環境で家族と日々を過ごすことで、幸せを育むことができるのではないでしょうか。
流山市は「仕事をしながら子育てがしやすい」街づくりを進めるとともに「子どものそばで働ける」環境づくりも進めています。流山市内での雇用が増え、社内に保育所を設置し、職場に子どもを預けて働ける環境も整備しています。また、企業もサテライトオフィスやシェアオフィスも増加しています。保育園から連絡があればすぐに駆け付けることができます。市外で働きながら子育てをしたい人も、子どものそばで働きたい人も、是非流山市にお越しください。