安全な雪かき・雪下ろしの鉄則とは? 「安全な装備で」「無理をしない」「複数で作業する」が大切

北海道や東北の日本海側、特に新潟県などの豪雪地域では、2022年~2023年の冬は例年を上回る積雪を記録しています。積雪にともなう事故の報告も増えていますが、なかでも雪かきや雪下ろしに関する事故の報告が多くみられます。

そこで今回は、積雪の際に安全に雪下ろしをするための方法について解説します。

雪かき・雪下ろし作業中の事故が増えている

死亡事故の大半は雪下ろし作業中
消防庁の発表によると、2020年11月から2021年4月までの雪害による人的被害は、死者が110人にものぼっています。そのうち、屋根の雪下ろし中の死者数が95人と大半を占めています。

このことを受け、消防庁では2021年1月に関係機関と連携し、地方公共団体に対して、事務連絡を発出しました。これは、除雪作業中の事故防止に向けた取り組みとして、複数人で作業することや、除雪作業中は携帯電話を携行すること、さらには、命綱やヘルメットを正しく着用したうえでの作業、はしごの固定、除雪道具の点検や手入れなど、除雪作業中の事故防止に向けた注意喚起などを要請するものです。

出典:令和3年版 消防白書

除雪機の事故も増えている

除雪機の事故も増えている

豪雪地域では、人の力では到底除雪が間に合わないことから、除雪機を使用する家庭も少なくありません。除雪機は、積もった雪を本体前方の回転式オーガ部(集雪口)でかき集め、煙突型のシュート(投雪部)から吹き飛ばす仕組みです。

近年では、この除雪機による事故も増えており、2012年度から2021年度の10年間にけがを負った事故は36件、死亡事故は25件ありました。そして、死亡事故の約7割にあたる18件は、安全機能を無効化したり、足を滑らせて転倒したりするなど、使用者による誤使用や不注意が原因となっています。

そのため、除雪機を使用する際に気をつけるポイントとして、以下の点が挙げられています。

・安全機能を無効化しない。
・後進する際には、転倒したり挟まれたりしないよう、周囲に十分注意する。
・周囲に人がいないことを確認してから作業する。
・その場を離れるときは、除雪機のエンジンを切る。
・除雪機の雪詰まりを取り除く際は、エンジンおよび回転部の停止を確認したうえで、雪かき棒を使用する。
・除雪機は、始動および停止も含め、風通しの良い屋外で使用する。

出典:経済産業省 「除雪機の死亡事故」7割が誤使用・不注意

雪下ろし安全10箇条

国土交通省では、除雪作業中の事故の原因として最も多い屋根からの転落事故のほか、転倒事故や除雪機による事故、屋根からの落雪による事故、水路等への転落事故を防止するための注意事項を、「雪下ろし安全10箇条」として取りまとめています

1.安全な装備で行う
除雪作業を安全な装備で行うのが最重要案件とされており、具体的には以下の内容について注意喚起しています。

・腰全体を支えるハーネス型や、体全体を支えるフルハーネス型の安全帯を使用する。
・命綱はザイル(ロープ)など丈夫なものを使用し、屋根の上で止まる長さで正しく結ぶ。
・命綱の一端は、アンカーにしっかり固定する。アンカーがない場合は、雪下ろしをする屋根の反対側の柱や固定物に固定する。
・ヘルメットはあごひもを締めて着用し、長靴は滑りにくいものを選ぶなど、動きやすい服装で作業する。

2.はしごは固定する

はしごはしっかりと固定して使用する

はしごの転倒事故も多発しているため、はしごは必ずしっかりと固定するようにしましょう。そのほか、はしごを利用する際には以下のことを心掛けるようにしてください。

・足元をしっかり固め、ロープや器具を使用する。
・はしごを斜めに立てかけることはせず、屋根に対して決められた角度でまっすぐ立てる。
・はしごは軒先から少し高い長さにかける。
・はしごを昇り降りするときはもちろん、はしごから屋根に移動するときは特に注意をはらう。
・はしごの上で雪庇を落とすなどの作業は危険なため、絶対に行わない。

3.作業は2人以上で行う
1人で作業を行うと、事故が発生した際に発見が遅れ、重大事故につながる可能性があるため、作業は常に2人以上で行いましょう。

家族や親戚と一緒に作業したり、近所の人や地域コミュニティと協力したりといった共助による除雪活動も、重要な意味を持ちます。

4.足場の確認を行う
屋根の雪止めの位置を確認してから作業に入ったり、落雪に巻き込まれないよう、屋根の上から順番に雪を下ろしたりといった点に気をつけることが大切です。

ほかにも、晴れていて気温が高い日は滑りやすくなるため、特に用心するよう呼び掛けています。また、水路等に転落する事故も増えているため、合わせて注意が必要です。

5.周りに雪を残す
雪下ろしの際には、まわりに雪を残すことが大切だといわれています。なぜなら、屋根から転落した際に、地面やアスファルト、コンクリートなどに頭や身体を強打すると被害が大きくなるからです。落下した場所に積雪があるとクッションになるため、作業中雪を残しておくことが被害を最小限に食い止めるポイントになります。

また、屋根からの雪下ろしをしたあとに、住宅周りの除雪も忘れないようにしましょう。

6.屋根から雪が落ちてこないか注意する

つららが直撃すると大けがになることも

除雪中に屋根から雪が落ちてくる可能性があるため、軒下での作業には細心の注意をはらいましょう。特に、屋根に雪が積もって時間が経つと氷のように硬くなるため、直撃すると大けがを負う危険があります。

新雪や晴れて暖かい日のゆるくなった雪は滑り落ちやすく、また屋根の雪を人力によらず落下させる落雪式住宅の場合は特に注意が必要です。

7.除雪道具や安全対策用具の手入れ・点検を行う
除雪道具や安全対策用具は、古くなっていたり壊れたりしていないか定期的に点検し、安全を確認してから利用するようにしましょう。スコップやスノーダンプなどの除雪道具は、雪がつきにくくなるスプレーを使用すると安心です。

8.除雪機の雪詰まりはエンジンを切ってから棒などで取り除く
除雪機に雪が詰まったときは、必ずエンジンを切ってから取り除くようにしましょう。素手で取り除くのは非常に危険なため、必ず棒などを使用するようにしてください。

また、デッドマンクラッチ(安全装置)をひもで縛るなど、安全装置を無効化したことによる事故が増えています。このような使い方は絶対にやめましょう。

9.携帯電話を身につける
除雪作業も携帯電話を身につけていれば、緊急時でも家族や119番などに連絡ができます。事故が発生すると動けなくなることがあるので、そのようなときは携帯電話で助けを呼びましょう。

10.無理はしない
除雪作業は重労働なので、体調が悪いときには行わないようにしましょう。特に持病のある人は、寒い屋外での重労働による発作など発症の危険性があるので、注意が必要です。また、除雪作業中はこまめに休憩をとるよう心掛けましょう。

作業前に準備運動を行うのも、事故の防止に役立ちます。

出典:国土交通省 雪下ろし安全10箇条 ~除雪作業中の事故に注意しましょう~

まとめ

豪雪地域では、雪かきや雪下ろしの作業は避けられません。たとえ慣れていても、ちょっとした不注意や過信が重大な事故につながることもあります。ここに挙げた十箇条をしっかり守り、十分に注意しながら作業することが大切です。

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