現在住んでいるマンションや、親が住んでいて相続したマンションなど、マンションを売りたいと考えている人もいると思います。ただ、購入の時と同様に、マンションの売却についての経験がなく、どのような手順で話を進めていけばいいのかわからないのが本音ではないでしょうか。
今回は、マンション売却の基本的な流れと、ステップごとの注意点について解説します。
マンションを売却する大まかな流れを理解しよう
まずは、マンション売却の大まかな流れについて理解しましょう。基本的には以下のとおりです。
1.売却に必要な書類の準備
売却にあたり、マンションを査定してもらうために必要な書類を準備します。併せて、その後の媒介契約や売買契約に必要となる書類も準備しておきましょう。
2.マンションの査定を依頼
不動産会社にマンションの査定を依頼します。査定の結果は、申し込んでから約1週間ででます。
3.媒介契約を結ぶ不動産会社を決める
媒介契約とは、マンションを売却するための営業を依頼する契約のことです。査定を申し込んだ複数社のなかから相性のよい不動産会社を1~2社程度選びましょう。
4.不動産会社と媒介契約を結ぶ
不動産会社の選定は売却の結果を大きく左右します。妥協せず信用できる不動産会社を選び、媒介契約を結ぶことが大切です。
5.売り出しが開始される(内覧への対応)
媒介契約を結んだら、売り出しが開始されます。購入希望者は実際に部屋の中を見学(内覧)するので、部屋をきれいに片付け、掃除しておきましょう。
6.売買契約の締結および引渡し
マンションが売れたら、売買契約を締結します。そして、マンションを購入者に引き渡します。
マンション売却の5ステップとは?
上で紹介したマンション売却の流れを5つの項目に分けて解説します。それぞれに注意すべきポイントも紹介するので、併せて理解を深めていきましょう。
STEP1 必要書類を集める
マンションを売却するにあたり、どのくらいの価格で売れるのかを知るために査定を受けます。査定を受けるにあたっては、以下の書類が必要になります。
また、その後の媒介契約や売買契約に必要な書類も併せて準備しておきましょう。なかには取得に時間がかかるものもあるので、余裕を持って早めに準備するのがポイントです。
(査定に必要な書類)
・本人確認書類
・マンションの登記済証(権利証)もしくは登記識別情報
・分譲時にもらった、間取り図が載っているパンフレットなど
ちなみにこれらの書類はすべて自宅に保管されているはずのものなので、自宅の中を探してそろえておきましょう。
(媒介契約に必要な書類)
・固定資産税納付通知書
・マンションの管理規約・長期修繕計画・総会議事録など
固定資産税納付通知書も自宅に保管されているはずですが、見当たらない場合は市区町村の窓口で取得できます。マンションの管理規約などはマンションの管理組合や管理会社から取り寄せましょう。
(売買契約に必要となる書類)
・印鑑登録証明書
・口座情報がわかるもの
・管理に係る重要事項調査報告書
このほか抵当権抹消書類が必要になりますが、それらは金融機関が用意します。管理に係る重要事項調査報告書は、マンションの管理会社から入手できる書類です。媒介契約を結んだ不動産会社が代わりに管理会社に依頼して発行してもらうのが一般的なため、売主自身で書類を用意する必要はありません。
STEP2 査定を依頼し相場を知る
査定を依頼する際は、複数の不動産会社に一括で査定を依頼をすることができるので、手間や時間を削減することができる一括査定サイトを利用しましょう。そして、査定方法として「机上査定」(簡易査定とも呼ばれる方法で、所在地や面積、築年数などの大まかな情報を伝えることでマンションの査定金額を算出することが可能です。)か「訪問査定」(机上査定した情報に、さらに物件の現状の情報を加えて査定する方法になります。そのため、実際に物件を細かく確認し、査定します。
)を選びます。
机上査定とは、過去の例を参考にして査定額を算出する方法で、訪問査定は過去の例に加え、実際に現地を訪問してどのような状態なのかを加味して査定額を算出する方法です。
査定を行う目的は適正な売出価格を決めることです。そのため、一般的には訪問査定を選択するケースが多いですが、机上査定だけで済ませるケースもあります。また、査定は必要書類の準備と同時進行で行うのが、時間を短縮させるポイントです。
STEP3 不動産会社と媒介契約を結ぶ
査定を受けた会社のうち、相性のよさそうな会社を1~2社に絞って媒介契約を締結します。不動産会社を選ぶ際には、査定額だけで選ばないようにしましょう。なぜなら、査定額が高くても、その根拠が不明瞭な場合や、実績が不十分なケースもあるからです。
どの不動産会社と媒介契約を結ぶかは、その後の売却の成功を決めるといわれるくらい重要なポイントなので、しっかりと検討してから選ぶようにしましょう。
媒介契約には、
・一般媒介契約
・専任媒介契約
・専属専任媒介契約
の3種類があります。以下にこれらの違いを表にまとめたので、どの契約形態を選ぶか迷ったときの参考にしてください。
専任媒介契約および専属専任媒介契約は、1社としか締結できない反面、営業活動を真剣に行ってくれるというメリットがあります。そのぶん、買主が決まるまでのスピードも速く、売却活動がスムーズに運びやすくなります。ただし、「囲い込み」や「売り止め」といった不動産会社側がより利益を得るための行動を起こす場合があるのがデメリットです。
媒介契約を結ぶ際は、ここまでに紹介したメリットやデメリットも踏まえて、信頼できる優良な不動産会社を選ぶことが大切です。
STEP4 販売活動をする
不動産会社と媒介契約を結んだら、販売活動を開始します。具体的な販売活動としては、
・広告を出す
・内覧の準備を行う
・内覧の対応を行う
ことが挙げられます。
広告を出すにあたっては、付帯設備の有無や告知内容を不動産会社と共有することを忘れないようにしましょう。販売価格は相場の1割増を上限に設定し、物件写真の撮影を終えた後に、サイトやチラシに掲示し販売活動が開始します。
購入希望者は物件の現在の状況を確認するため、内覧といわれる物件の見学を希望します。その際によい印象を与えられるよう、家の中を片付け、きれいにしておくのがポイントです。特に水回りはチェックされる箇所なので、念入りに掃除を行い、必要に応じて修理をしておきましょう。
販売活動を行うにあたり、状況を見ながら臨機応変な条件変更が必要になったり、条件交渉が入ったりする可能性も視野に入れておいてください。
STEP5 売買契約を結びマンションを引き渡す
販売活動を行い、条件交渉などを経て正式に買主が決まったら、不動産売買契約を締結し、マンションを引き渡します。
売買契約締結時には、売主と買主、そして不動産会社の担当者が集まって、契約書の読み合わせや重要事項の説明を行います。内容に間違いがないことを確認したら、契約書に記名押印を行います。契約書への記名押印が終わったら、不動産会社は買主から手付金を受け取り、売主は不動産会社に仲介手数料を支払います。仲介手数料や手付金は売買契約時に全額一気に支払うのではなく、仲介手数料は売買契約時と引き渡し時に半額ずつを、手付金は売買契約時に売買価格の5~10%を支払い、残金は引渡しの際に支払うのが通例です。
契約締結から引き渡しの期間は2~3ヶ月程度が基本となっているので、その間に引っ越しや売買代金の受け取り、ローンがまだ残っているなら売買代金で一括返済を行いましょう。一括返済は引き渡し日に行うのが一般的なので、売買契約を締結したらすぐに金融機関に連絡しておくようにしましょう。そして、一括返済を行ったタイミングで抵当権の抹消登記を行います。
売買契約時に忘れてはならないのは、雨漏りなどの告知事項を必ず申告し、契約書にも記載することです。これを怠って後々発覚すると「契約不適合責任」を問われ、大きな問題に発展する可能性があります。
マンション売却に関するよくある質問
ここからは、マンションの売却に関してよくある質問を紹介するとともに、それぞれの質問に対して回答します。
マンション売却にかかるその他の費用は?
マンションの売却においては、売買価格の5~10%の手数料がかかります。その内訳は、主に
・不動産会社に支払う仲介手数料(取引物件価格が税抜きで400万円超の場合:売却価格(税抜)×3%+6万円+消費税)
・印紙税(売却価格によって異なる)
・登録免許税(抵当権抹消登記にかかる費用)
・司法書士への報酬
です。
場合によっては、証明書類取得にかかる費用や、ハウスクリーニング費用、ローン残金の一括返済にかかる費用が発生することもあります。
さらに、売却で利益が出ると譲渡所得税の負担が発生します。
マンションが売れたら確定申告は必須?
マンションを売却しても、利益が出なければ確定申告の必要はありません。
利益が出た場合には、譲渡所得として確定申告を行わなければなりません。
譲渡所得金額は、「譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)」で計算されます。さらに、土地建物を譲渡した場合の短期譲渡所得と長期譲渡所得は、譲渡した年の1月1日現在において、所有期間が5年以下なのか5年超なのかで税率が異なることも知っておきましょう。
保有期間が5年以下ならば、短期譲渡所得となり、所得税率は39.63%ですが、5年超なら長期譲渡所得となって所得税率は20.315%まで下がります。
マンションを売却して利益が出た際に、確定申告を怠ると、控除などが使えなくなり、納めるべき税金が増えてしまうケースがあるため、必ず確定申告を行いましょう。
マンション売却にかかる期間は?
マンションの売却には、最低でも4ヶ月、長ければ半年程度の期間がかかります。したがって、半年程度はかかると思って準備を進めるようにしましょう。
売却までの期間が短く、売り急いでしまうと、思っていたよりも安い値段でしか売れない可能性があるため注意が必要です。
住みながら売ることは可能?
売却時まで住み続けながら売却することは可能です。
その際、問題になるのは内覧時の対応です。第一印象をよくするために、玄関やリビングなどは靴などを片付けて広く見せる工夫をし、汚れが気になる水回りの掃除を徹底しましょう。もちろん、気持ちのよい挨拶を心掛けるのも大切ですし、住んでいる人ならではの情報を伝えることもプラスに働きます。
また、収納スペースの収納量を気にする人もいるので、収納スペースの中も整理整頓するようにしましょう。
売却前のリフォームは必要?
売却前のリフォームは基本的に不要といわれていますが、見た目の印象をよくしたり、買主が買ってすぐに住めるようにしたりするためにリフォームを行うケースもあります。
そのために安価でできるリフォーム(クロスの張替えなど)を実施したり、壊れている設備を修理・交換したりすることで、問い合わせが多くなる、高く売れやすくなるなどのメリットが考えられます。一方で、買ってから自分たちの趣味に合わせてリフォームをしたいと考える購入希望者も少なくありません。売却前のリフォームについては、売却活動の状況を見ながら、不動産会社と相談して決めるようにしましょう。
まとめ
マンションの売却に関しては、事前に大まかな流れを理解しておくことが大切です。
そして、売却において一番重要なのは、よい不動産会社と媒介契約を締結できるかどうかです。そのため、売却活動は査定を申し込む時点から始まっていると考えておくとよいでしょう。
また、マンションの売却には意外と時間がかかります。半年程度の余裕のあるスケジュールを持って、計画的に進めることが、失敗しない秘訣だと心得ておきましょう。