国の統計によれば、会社員で年収900万円を超えている人は、日本では全体の7.6%です。年収900万~1,000万円の人となると、約2%しかいません。一方、世帯年収900万円超の人は16~17%、世帯年収900万~1,000万円の人は約4%となります。
このことから世帯年収900万円の場合、共働きが多いことがわかります。そこで、世帯年収900万円の夫婦共働き世帯を前提として、住宅ローンで借りられる金額(借入可能額)と借りても問題なく返済できる額(借入適正額)について解説します。
住宅ローンを利用するうえで注意すべき点や失敗しないコツもあわせて解説するので、参考にしてみてくださいね。
世帯年収900万円の住宅ローン借入可能額と借入適正額
では、ここからは世帯年収900万円の家庭の住宅ローンについて、「借りられる金額(借入可能額)」と「借りても問題なく返済できる金額(借入適正額)」がそれぞれいくらなのか、両者はどう違うのか解説します。
世帯年収900万円の住宅ローン借入可能額は約9,000万円
いくらまで住宅ローンの借入可能額の基準の1つが年収倍率です。年収倍率とは年収と物件購入価格の割合を示す数値で、年収倍率が5倍であれば900万円×5倍で4500万円まで借入ができます。
住宅金融支援機構の調査によると、新築で物件を購入する場合の平均の年収倍率は約7.2倍です。これは、マンションや戸建によって変動があります。年収倍率が7.2倍で計算すると、世帯年収900万円の人が借りられる金額は900万円×7.2=6,480万円です。
参照:2022年度 フラット35利用者調査|住宅金融支援機構
ほかにも、返済負担率で借入可能額を考える方法もあります。返済比率とは、「年収に占める年間返済額の割合」です。
貸せる金額の上限として、「返済比率が30~35%まで(高くて40%)」を目安としている金融機関が多くあります。たとえば全国300以上の金融機関が取り扱う【フラット35】では、以下のような基準が明示されています。
上記の基準だと、住宅ローン以外の借り入れがない「世帯主500万円、配偶者400万円」の夫婦なら、年間返済額が315万円(世帯年収900万円×35%)まで、1ヶ月あたりの返済額に直すと315万円÷12ヶ月=26.25万円まで、借入金利が1%台前半と仮定すると、だいたい9,000万円程度までなら借りられる可能性があるということになります。
しかし、これはあくまで条件なので、実際の数値と異なることもあります。以下は2022年度の返済負担率の平均をまとめたものです。
1番多いのは、返済負担率20%~30%で、金利1.5%だとすると年収900万円の場合は5,000〜8,000万円程度の借入をしていることがわかります。
世帯年収900万円の余裕を持って返済できる目安は約4,300万円
家族構成やその他の借り入れ(自動車ローンや奨学金など)の有無などにもよりますが、住宅ローンを無理なく返済していくには、住宅ローンの返済額は世帯主の手取り月収の25%(住宅関連支出を含めて30%程度)までに抑えておくのが無難です。
年収900万円で手取り金額が約700万円の25%は年間175万円、月々約14万6,000円です。固定金利1.84%の場合、返済額を月14万円に抑えるためには、借入可能額は4,332万円までとなります。
ただ、同じ「世帯年収900万円」でも、夫婦それぞれの収入額に
よって手取り額は異なります。たとえば以下のとおりです。
この例では、世帯年収は同じですが、「世帯主700万円、配偶者200万円」のほうが、手取りが少なくなっています。
これは、年収が高くなるほど所得税率が高くなって税負担が増す累進課税が関係しています。基本的に、配偶者が扶養の範囲内で働いている場合を除き、夫婦間の所得差が大きいほど(1人に収入が偏っているほど)、世帯全体の手取りが目減りしてしまいます。
このほか、手取りは年齢、家族構成、職業、各種控除の有無などによっても変わってきます。また、自動車ローンや教育ローン、自身の奨学金などの返済がある場合、借り入れできる金額はさらに下がります。
【年収900万円】住宅ローンシミュレーション
適正な住宅ローンを組むには、事前のシミュレーションが欠かせません。ここでは、具体的なシミュレーション例を見てみましょう。
<条件>
ARUHIフラット35
金利:1.980%(2024年3月実行金利)
返済期間:35年
元利均等
団信加入
頭金なし
ボーナス返済なし
年収900万円の人が6,000万円の住宅ローンを組むと月々の支払額は19万8,142円です。ただし、ほかにもローンを組んでいたり、子どもの習い事の費用があったりするなど家庭によって余裕を持って支払いができる金額に違いがあります。月々の支払額から無理のない返済計画を立てることも重要です。
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世帯年収900万円の人が知っておきたい住宅ローンで失敗しないコツ3選
せっかく住宅ローンを組んでマイホームを手に入れても、途中で返済に行き詰まってしまっては大変です。世帯年収900万円の家庭が住宅ローンを組むときに意識しておきたい、3つのポイントについて見ていきましょう。
1人分の収入で返せる金額を目安に借りよう
夫婦共働きで世帯年収900万円の場合、夫婦の収入を合算して住宅ローンの申し込みをすることで、より大きい金額の借入が可能になります。ただ「借りられる金額」と「返せる金額」は別物なので、2人分の収入を見込んで目一杯借りてしまうのは避けたほうが無難です。
ローン返済中に出産や育児、介護などでどちらかが休業したり、大病や解雇などで仕事を継続できなくなったりする可能性もあります。本当にやりたいことが見つかって、収入が下がる転職をしたくなるかもしれません。
そのような事態に備えて、1人分の収入でも返せる金額を目安に借りるのがおすすめです。一般的には、借入額を世帯主の収入の5倍程度に抑えておくと返済に困りにくいといわれています。
住宅関連支出を加味した返済計画を立てよう
「今住んでいる賃貸物件の家賃」と「住宅ローン返済額」が同程度なら問題なく返せるだろうと考える人もいます。
ただ、住宅を購入すると、住宅ローンの返済以外にも税金などさまざまな費用がかかります。今後想定される住宅関連支出全体を加味して、資金計画を練っておきましょう。
【住宅購入時にかかる費用の例】
・仲介手数料
・税金(不動産取得税、登録免許税、印紙税など)
・住宅ローンを組むための費用(ローン事務手数料、保証料など)など
【住宅購入後にかかる費用の例】
・税金(固定資産税など)
・保険料(火災保険、地震保険)
・修繕費(修繕積立金を含む)など
住宅購入時には諸費用がかかり、購入後も維持費が発生します。いくら必要かは物件ごとに違いますが、物件価格に比例して高くなる傾向があるため、高額な物件を購入する場合は特に注意が必要です。
このほか、引っ越して家が広くなったことで、光熱費が上がってしまうケースなどもあります。これらの住宅関連支出を含めても、無理なく返済できるかを事前に確認しておくことが大切です。
あらゆるライフイベントを想定しよう
住宅ローンは長い間返済を行なっていくものなので、その途中で予期せぬ事態が起こることがあります。育児や介護などが必要になり、働き方を変えたり転職したりする可能性もゼロではありません。
また、子どもの教育費や老後資金の確保で家計が圧迫されることもあります。収入が減って返済不能になることがないように、今後収入が下がることも考慮しましょう。
また、ペアローンや夫婦合算で住宅ローンを申し込むときは、離婚したときにどうするのかまで考えておくことも必要です。話し合っておくことで、離婚後のトラブルを回避できます。
まとめ
人によって手取り額や毎月の支出額には違いがあります。ローンのシミュレーションから月々の返済額が無理のない金額かどうか確認することも重要です。
そして、将来ライフスタイルの変化によって出費が増えたり収入が減ったりすることもあります。また、夫婦で協力して住宅ローンを組む場合は、トラブルを避けるために離婚した後の返済について話し合うようにしましょう。
(最終更新日:2024.05.13)