トレーラーハウスと聞いてすぐにピンとくる人はまだ少ないかもしれません。移動可能な家で、近年では震災時の仮設住宅や感染症対策の臨時診療室などに使用され、日本でも認知度が徐々に高まっています。どこかで目にして気になっている人もいるかもしれませんね。そこで今回は、トレーラーハウスの特徴やメリット・デメリットなどを解説します。
トレーラーハウスとは?
トレーラーハウスは一般的にはタイヤがついて移動できる車両のことをいいますが、建築物に該当することもあります。ここでは、トレーラーハウスがどのようなものか、定義やキャンピングカーとの違いを詳しく解説します。
トレーラーハウスの定義
日本トレーラーハウス協会によるとトレーラーハウスとは、下記のような構造体を指します。
トラベルトレーラー・パークトレーラー・カーゴトレーラー・コンセッショントレーラー・オフィストレーラー等のトレーラーを一定の場所に定置し、土地側の給排水配管電気等の接続が工具を使用しないで脱着できる構造体であり、公道に至る通路が敷地内に確保されており、障害物がなく随時かつ任意に移動できる状態で設置したものをトレーラーハウスと呼ぶ。
引用元:日本トレーラーハウス協会「トレーラーハウスの定義」
例えば、タイヤがつけられたシャーシーと呼ばれるフレームの上に建物が乗っているなどの特徴があり、車両として扱われますがエンジンは搭載していません。自走できないため、移動の際にはけん引が必要です。
ある程度の期間、同じ場所に設置することを目的とし、ライフラインである電気・ガス・水道が備えられます。トイレや浴室なども設置でき、室内は一般的な住宅と変わりません。そのため住宅としてだけでなく、事務所や店舗、公共施設などにも利用されています。
建築物に該当するケース
トレーラーハウスは基本的には車両として扱われますが、設置方法によっては建築物とみなされて税制面での扱いが変わってきます。建築物に該当するのは以下のようなケースです。
・移動に支障がある階段やポーチなどが設置されているもの
・配線や配管が工具を使わなければ着脱できないようになっているもの
・車輪が取り外され、走行できない状態になっているもの
・設置場所から連続して公道に出られないもの
基本的に、すぐに移動できない状態のものは建築物として扱われる可能性が高いといえます。なお、一定期間、同じ場所に設置した場合、日本建築行政会議の「車両を利用した工作物」の設置方法を守らなければ違法建築物に該当します。
一定の場所に定置して、土地側の給排水電気等を接続し使用した場合、日本建築行政会議の「車両を利用した工作物」の設置方法を厳守しなければ、建築基準法第2条第1項による建築物に規定されますので、違反建築物に該当します。
引用元:日本トレーラーハウス協会「トレーラーハウスを設置し使用する場合」
キャンピングカーとの違い
キャンピングカーにもミニキッチンやトイレなどが備わっています。トレーラーハウスと似ているようですが、まったくの別物です。キャンピングカーはエンジンを搭載しているため、単独走行が可能です。一方、トレーラーハウスはほかの車両で牽引しなければ移動できません。また、トレーラーハウスでは給排水設備を設置できるのに対し、キャンピングカーでは水をタンクにためて処理しなくてはならないという違いがあります。
トレーラーハウスは移動先で一定期間定住することを目的につくられた建物です。週末キャンプなど気軽に移動したい場合は、キャンピングカーのほうが適しています。
トレーラーハウスのメリット
トレーラーハウスをマイホームにしたら、どのような生活になるのでしょうか。ここでは、トレーラーハウスの主なメリットを紹介します。
基本的にどこでも設置できる
トレーラーハウスは建築基準法上の建築物にあたらないため、基本的にどこにでも設置できます。通常は住宅が建てられない市街化調整区域や農地にも設置でき、建ぺい率や容積率などの規制を受けることもありません。基礎工事がいらないので建築費も節約できます。タイヤが地震の揺れを緩和してくれるおかげで、一般的な住宅に比べて地震に強いのも特長です。また、引っ越すときは丸ごと移動できるので、荷造りの手間がかからないこともメリットといえます。
ひとつ注意したいのは、かなりの重量があるということです。どこにでも設置できるといっても地盤が柔らかいところには不向きです。事前に設置を希望する土地の地盤の硬さを確認する必要があります。また、自治体によっては事前の許可が必要になることもあるので注意してください。
固定資産税などがかからない
不動産を取得したときは不動産取得税が、所有し続ける間は固定資産税や都市計画税が課税されます。その点、トレーラーハウスは基本的に車両扱いのため不動産にかかる税金の対象外です。
ただし、基準の大きさを下回る場合には車検が義務付けられると同時に、自動車税(種別割)などの納税義務も発生します。維持費を節約したい場合は、購入前にサイズを確認するようにしてください。
・全長12m、全幅2.5m、全高3.8m未満:車検が必要
・全長12m、全幅2.5m、全高3.8m以上:移動の際に「基準緩和認定書」「特殊車両通行許可証」が必要
参考元:日本トレーラーハウス協会「道路運送車両法でいうトレーラ・ハウスとは」
一般的な住宅と同じように生活できる
トレーラーハウスの内部は一般的な住宅とほとんど変わりません。電気・ガス・水道の供給ができるようになっているため、キッチンやトイレ、バスルームなど生活に必要な設備は完備されています。家具や家電も特殊なものではなく、市販のものを自由に選べます。
車両と考えると窮屈なイメージがありますが、ほとんどのトレーラーハウスでは一般的な住宅と変わらない天井高(2,400mm)が確保されています。断熱性や気密性も配慮されているので、快適に過ごせるでしょう。一般住宅に比べて工期が短く、本体価格が安めなこともメリットといえます。
トレーラーハウスのデメリット・注意点
トレーラーハウスは人によっては住みにくいと感じる可能性があります。また、不便な点があることも事実です。トレーラーハウスのデメリットや注意点にも目を向けてみましょう。
車高が高い
トレーラーハウスにはタイヤがついているため、入り口や床の位置が一般住宅よりも高くなっています。階段がなければ出入りができず、人によっては足腰に負担がかかる可能性があります。その場合、住み続けることをストレスに感じるかもしれません。
なお、階段を固定してしまうと建築物とみなされ、固定資産税などの課税対象になる可能性があります。その点も含めて慎重に検討する必要があるでしょう。
2階をつくれない
タイヤがついていることはトレーラーハウスの必須要件です。当然ながら2台重ねて使うことはできません。一般住宅のように2階建てにして敷地を有効利用できないのは、トレーラーハウスのデメリットといえるでしょう。
ただし、トレーラーハウスにはロフト付きのタイプもあります。寝室や収納スペースを確保したい場合におすすめです。
牽引に高額な費用がかかる
エンジンがなく自走できないトレーラーハウスを移動させるには、ほかの車両で牽引しなくてはなりません。重量750kgを超えるトレーラーハウスを運搬する場合、牽引免許が必要です。牽引免許がない場合は業者に依頼することになり、そのぶんの費用がかかります。トレーラーハウスの重さや移動距離にもよりますが、1回の運搬で50万円以上かかるケースもあります。移動にかかる費用には注意したほうがよさそうです。
通れない道がある場合は納車できない
トレーラーハウスの納車には、現地まで通行できる道が確保されていることが条件になります。どこにでも設置できるとはいえ、途中でトレーラーハウスが通れないような狭い道があるなど、納車が困難な場所には設置できません。そのため、設置場所を選ぶ前にルートを確認したり、トレーラーハウスの専門業者に相談したりする必要があります。
まとめ
トレーラーハウスに住んだ場合、車両とみなされる条件を満たせば、固定資産税や不動産取得税など不動産にかかる税金の対象外です。内部は一般的な住宅と変わりなく、電気・ガス・水道も問題なく使用できます。
一方で、高さがあって出入りに手間がかかることや、移動の際に牽引が必要になることなどはデメリットといえるでしょう。トレーラーハウスの購入を検討する際は、実際の生活を具体的に想像しながらメリット・デメリットを見比べてみてください。