シロアリ対策の基本とは? 予防と早期発見のためのチェックポイント

戸建て住宅の維持管理において大敵となるのがシロアリです。シロアリによる被害が深刻になると、家の基礎や土台、躯体が食い荒らされてしまい、最悪の場合建て替えを余儀なくされることもあります。

この記事では、戸建て住宅に被害をもたらすシロアリとはどのような虫で、被害を受けないためにどのような対策が必要なのか詳しく解説していきます。

シロアリはどんな虫か

まずは、シロアリとはどのような特徴のある虫で、戸建て住宅にどのような被害をもたらすのか見ていきましょう。

シロアリとは
シロアリはゴキブリ目シロアリ科の昆虫です。名称に「アリ」とついていますが、一般的なクロアリとはまったく別の虫であり、生物学的にはゴキブリに近い昆虫。

シロアリの仲間は日本に20種類以上いるといわれていますが、大半は自然界で土壌改良に重要な役割を果たす益虫です。家屋に被害を与えるのは、主にヤマトシロアリとイエシロアリの2種類に限定されます。

ヤマトシロアリ

ヤマトシロアリ

シロアリによる家屋被害のうち、実に8〜9割を占めると言われるのがヤマトシロアリ。北海道北部を除く日本全国に分布しており、日本に生活している限り、多くの人が被害に遭う可能性のある害虫です。体長は働きアリで4〜6mm、女王アリは大きいもので15mmほどになります。

ヤマトシロアリは湿気の多いところを好み、自然界では山林の湿った木材や土の中で生活しているのが特徴。そのため、戸建て住宅においても庭や床下の湿った木材などでよく見かけられます。食害は材木の腐朽と同時に起こるケースが多く、家の基礎に発生すると大きな被害をもたらします。

特別に加工した巣は作らない場合が多く、餌場をそのまま巣にするのがポイント。餌場の環境が悪化すると、新たな餌場と巣を求めて集団で移動します。

イエシロアリ
千葉県より南の沿岸部、特に西日本に多く分布するのがイエシロアリ。体長は働きアリで5〜7mm、女王アリは大きいもので40mmにもなり、全体的にヤマトシロアリよりもサイズが大きいシロアリです。

イエシロアリの特徴として、水を運ぶ能力が高いという点が挙げられます。そのため乾燥した木材であっても食害を起こすため、ヤマトシロアリに比べて被害の拡大するスピードが速く、より広い範囲に害をもたらす厄介者。おまけに、1つの群れの規模がヤマトシロアリの約10倍、最大100万匹単位になるため、一度住み着いてしまうと被害が大きくなりやすいというのも特徴です。

シロアリの発見方法

木材を食べて戸建て住宅に大きな被害をもたらすシロアリ。シロアリによる食害を最小限に抑えるためには、シロアリをいち早く発見しなければなりません。続いては、シロアリを発見する方法について紹介していきます。

羽アリの発見

ヤマトシロアリの羽アリ

春から夏(4〜7月ごろ)にかけて、家から羽アリが一斉に飛び立つようなことがあるなら、シロアリがいる可能性が高いといえるでしょう。こうした一斉に飛び立つ習性を「群飛(ぐんぴ)」と呼びます。

ヤマトシロアリの羽アリは黒く、4〜5月の昼間に群飛が見られます。一方、イエシロアリの羽アリは茶褐色。6〜7月の夜にかけて群飛が見られます。群飛の時間と羽アリの色の違いを確認できれば、家にいるシロアリの種類まで推測可能です。

蟻道(ぎどう)・蟻土(ぎど)がある
蟻道や蟻土といったものが見られる場合もシロアリがいる可能性が高いといえます。

シロアリは地中から家の中に入ってきますが、侵入時にトンネル状の通り道(蟻道)を作ります。家の周囲や基礎に土でできた筋のようなものが見られるなら、蟻道がある=シロアリがいると考えられるでしょう。

もう一つの蟻土とは、木材内部への直射日光を遮り湿気を保つため、シロアリが土や排泄物などを使って作る蓋のようなもの。天井、床下、柱の継ぎ目などに蟻土が見られる場合、シロアリによる食害が広がっている危険性があります。

叩くと空洞音がする
シロアリは光が苦手なため、明るい場所では木の表面を残して内側だけを食べます。そのためシロアリの食害が進むと、外観は異常がなくても、木の内部は空洞になっているケースがほとんど。木材の表面をハンマーなどで叩くと空洞音がします。

建物の変化
シロアリは木材の内部を食い荒らすため、シロアリの食害が進んだ木造の建物では、建物自体に変化が見られる場合があります。

たとえば、柱が下がったり、畳や床板がくぼんでいる感じを受けたり、ふすまや障子、雨戸といった建具の立て付けが悪くなったりといった具合。特に風呂場や玄関など、湿気が多くシロアリが外から侵入しやすい場所は要注意です。

シロアリを予防する方法

大切な自宅をシロアリの被害から守るためには、何よりもシロアリを寄せ付けない家にすることが大切です。シロアリ被害を予防するためにはどのようなところに気をつけるべきか、ポイントを解説していきます。

家の周りに木材を置かない

庭に木材などを置くとシロアリを呼び寄せることに

家にシロアリを寄せ付けないためには、家の周りに木材を置かないことが大切です。

シロアリは木材が豊富にある場所を発見すると、仲間たちにいい餌場があると知らせ、群れになって飛んできます。家の周りに木材がたくさん置いてある状態は、シロアリに餌場を提供しているようなものです。

廃材や木の杭、枕木、植木から落ちた枝などの木材だけでなく、木材を材料とする段ボールや雑誌なども要注意。これらのものが家の外に置いてあるなら、早めに片付けるようにしましょう。

基礎の風通しと日当たりの確保
シロアリは地中で暮らしているため、湿り気が多く直射日光の届かない環境を好みます。建物の基礎周辺の風通しと日当たりを確保すれば、家の中への侵入予防につながります。

家の基礎の周囲には通気口がありますが、その周辺に植木や物置、廃材などを置くと、風通しが遮られて床下に湿気が溜まりやすくなります。そのうえ日陰になってしまい、シロアリが好む環境を作り出すことになりかねません。通気口周りはできる限り何も置かないようにして、床下の通気性と日当たりを確保しましょう。

雨漏りなどがある場合は修理をする

雨漏り箇所を放置しておくとシロアリの餌食になることも

雨漏りや水漏れが発生した箇所を放置していると、そこが腐食して水の通り道や穴が開いてしまい、シロアリの侵入を許してしまうことになります。

また、シロアリは腐食している木材を好んで食べます。雨漏りや水漏れは、侵入経路・湿った環境・腐食している木材という、シロアリにとっての好条件を3つも提供することにつながるのです。雨漏りや水漏れがある場合、早急に修理を検討しましょう。

シロアリの被害にあってしまったら

どれだけ気をつけていても、シロアリが家に侵入してしまうことはあります。不幸にしてシロアリによる食害を受けてしまったら、どのように対処すればいいのか見ていきましょう。

まずは被害状況を把握する
前々章で紹介した方法でシロアリを発見した場合、まずはどこまで食害が及んでいるのか、被害状況を正確に把握する必要があります。

ただ、シロアリは木材の内部を食い荒らすため、外から見ただけでは判断がつかないこともあるでしょう。そもそも床下や基礎の点検は素人には難しいかもしれません。現地調査や見積もりだけであれば無料という会社もあり、シロアリによる被害が疑われるのであれば、早めにプロの駆除会社に依頼してみるのも有効です。

相見積もりをとる
シロアリによる食害を最小限に食い止めるためにも、対策は迅速に行う必要があります。しかし、駆除会社ごとに価格や得意分野などが異なる場合もあります。プロの駆除会社に依頼する際には、必ず複数社に見積もりを依頼して比較検討するようにしましょう。

費用の相場は
シロアリ駆除にかかるコストは、1坪あたり約1万円が相場。30坪の戸建て住宅であれば30万円程度で駆除を依頼できます。家の広さはもちろんのこと、駆除しなければならない面積が広いほど、当然コストも高くなります。

少しでも費用を抑えたいなら、先ほども紹介したとおり、複数社から相見積もりを取ることが大切です。

駆除後の保証期間は最大5年
現在いるシロアリを駆除した後、新たなシロアリの侵入を防ぐために防蟻処理が行われます。防蟻処理に使用される薬剤の大半は5年程度で効果が切れるとされ、保証期間は最大で5年。5年後には点検を行い、必要に応じて再度防蟻処理をしなければなりません。

効果が5年程度しか持続しないのは、住んでいる人やペットの健康に影響を与えない程度の薬剤が使用されているためです。

まとめ

戸建て住宅にとって、シロアリの被害は甚大です。1995年の阪神・淡路大震災では、シロアリの食害を受けた住宅において大きな被害が出たという研究結果があるなど、防災面にも影響を与える可能性があります。シロアリの被害を避けるためにも、日頃からシロアリ予防・対策は入念に行いましょう。

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