2021年の「家計調査」が総務省から2月8日に発表されました。2020年に続き、新型コロナウイルス対策のための外出自粛などの影響で、消費の低迷や貯蓄率の増加が目に付く結果となったようです。家計に関する話題にたびたび登場する「家計調査」について、その調査結果と合わせてチェックしてみましょう。
約9,000世帯を調査した「家計調査」
総務省が発表する「家計調査」とは、一定の統計上の抽出方法に基づき選ばれた全国約9,000世帯を対象として、家計の収入や支出,貯蓄・負債などについて、毎月調査されているものです。調査結果は、月・四半期・年・年度ごとにまとめられ、時系列データをみることもできます。
家計調査の結果は、国の景気動向の把握,生活保護基準の検討,消費者物価指数の品目選定及びウエイト作成などの基礎資料として利用されているほか、地方公共団体、民間の会社、研究所あるいは労働組合などでも幅広く活用されています。家計やライフプランに関する解説やコラムなどにも引用されることの多いデータです。
以前(2019年)、金融審議会の報告書をきっかけに「老後資金2,000万円」が話題になりましたが、報告書中で退職後の生活費の試算に用いられたのも「家計調査」のデータ※でした。
※金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
家計調査から振り返る2021年
2022年2月8日に公表された、2021年分の家計調査の結果によると、2人以上の世帯の消費支出は実質0.7%増。新型コロナウイルス感染症拡大が始まった2020年には実質5.3%のマイナスだったので、回復してきてはいますが、コロナ禍以前の2019年の消費支出レベルまでにはまだまだ回復していないことがわかります。
同日発表された、「新型コロナウイルス感染症による消費行動に大きな影響が見られた品目など」をみても、在宅勤務による巣ごもり需要や、外出自粛によって「おうち時間」が増えたことなどの影響が大きいことがわかります。外出を自粛し、チューハイやカクテルを買って、おうちで飲む人が増えたことが見て取れますね。
一方で、家計の平均貯蓄率(二人以上の勤労者世帯)は、34.2%と高い割合となっています。2019年が31.4%だったのに対し、2020年に35.2%に急伸。2021年も高水準なままとなっています。
世の中にまわるお金が増えたほうが日本の景気はよくなるでしょうが、家計管理という点から見ると、今使わなくて済むお金を無駄遣いせず、貯めておいて「使うべき時」に備えるのは堅実な行動です。急な営業時間短縮等による収入減に備えて、貯蓄を増やしていた方もおられることでしょう。コロナ禍が解消した後の「使うべき時」に備えて、お金の使い方も考えておきたいですね。
知りたいことに合わせて、家計調査を見てみると
このように、家計調査の結果をみると、調査対象となる時期の多くの家庭(家計)の動きをつかむことができます。総務省のホームぺージで調査結果の詳細を見てみると、年齢ごと、収入ごと、地方ごとといった調査対象の属性に合わせたデータも公開されているので、自分の知りたいことにより沿ったデータを探すこともできます。
たとえば、「老後資金がどれくらい必要なのか考えたい」ならば、「高齢者のいる世帯」のデータを見るとよいでしょう。無職世帯の場合、「収入の大半は公的年金からなのだな」とか、「黒字がマイナスということは金融資産を切り崩して生活しているということだな」「収入の差があっても、食料の差は大きくない。収入が少ないほど金融資産がないと生活が大変になりそうだな」とか、考える資料にすることができます。
ただし「我が家と同じ」データはありませんから、さらに、「うちの将来の年金額は少ないから」「長く働き続ける予定だから」「食べ歩きが趣味だから食費は確保できるようにしておきたい」など、我が家の家計、我が家の事情に合わせて考えを進めることで、「老後資金準備をどうするか」を具体的に考えることができるようになります。
このように、家計調査の結果は「みなさんはどうかしら」といった一般的な動向を知るために大いに参考になりますが、限られた9,000世帯を対象とした調査結果です。「我が家の事情」とは異なる点もあるはずなので、あくまで参考と考えた上で、ライフプランやリタイアメントプラン、家計の見直しなどに活用されるとよいでしょう。