2022年4月1日から、住宅ローンの【フラット35】が改正されます。維持保全などに配慮した質の高い住宅を購入する場合に、【フラット35】の借入金利が一定期間引き下げとなる【フラット35】維持保全型がはじまります。また、子育て世帯を支援する【フラット35】地域連携型(子育て支援)の金利引き下げ期間も拡大されます。どのような場合にどれくらい金利引き下げとなるのか、具体的な改正内容や利用する時のメリット、注意点について解説します。
これまでの制度に比べてどう改正される?
【フラット35】は、利用者本人または親族が入居する住宅を取得するとき、住宅金融支援機構(以下、機構)と提携する全国の金融機関で扱う、全期間固定金利の住宅ローンのことです。融資を受けるためには、取得する建物について機構が定める一定の技術基準を満たす適合証明書の取得が必要です。
4月の改正ではじまる【フラット35】維持保全型は、建物の維持保全や維持管理に配慮すると認められた新築住宅や中古住宅を取得する場合に、【フラット35】の金利が当初5年間0.25%引き下げとなる制度です。2022年4月以降に適合証明書が交付され、2023年3月31日までに【フラット35】に申し込んだ人が対象です。
【フラット35】維持保全型の対象となる住宅は、新築または中古の戸建てやマンションで、以下のいずれかにあてはまる住宅です。
新築の戸建ては長期優良住宅に認定されていること、新築マンションは適切な管理が期待される長期修繕計画案等の予備認定を受けることが要件です。中古住宅については、リフォームなどによって一定の耐久性や設備の交換等可変性が維持できることや、今後の修繕計画などについての情報提供がなされている物件などが対象となります。
また、【フラット35】地域連携型(子育て支援)は、子育て世帯に補助金交付などの支援を積極的に取り組む地方公共団体と住宅金融支援機構が連携して、【フラット35】の金利を一定期間0.25%引き下げる制度です。2022年4月の改正で、金利引き下げ期間が当初5年間から10年間に拡大されます。金利引き下げを受けるためには、地方公共団体から【フラット35】地域連携型利用対象証明書の交付を受け、子育て支援の対象となる補助事業と確認できることが必要です。
【フラット35】Sとの併用でさらに金利引下げ拡大
【フラット35】維持保全型と【フラット35】地域連携型(子育て支援)は、【フラット35】Sと併用できます。
【フラット35】Sには【フラット35】よりさらに性能が高い住宅について、当初10年間0.25%金利が引き下げられる【フラット35】S(金利Aプラン)と、当初5年間0.25%金利が引き下げられる【フラット35】S(金利Bプラン)があります。【フラット35】Sが利用できる住宅は、「省エネルギー性」「耐震性」「バリアフリー性」「耐久性・可変性」の4点のいずれかについて一定基準を満たす住宅です。住宅性能評価書などの証明書がなくても、所定の検査に合格すれば利用することができます。
【フラット35】維持保全型は、【フラット35】S(金利Aプラン)と併用することで、当初5年間は0.5%、6年目から10年目は0.25%の金利引き下げとなります。【フラット35】S(金利Bプラン)との併用では当初10年間0.25%の金利引き下げとなります。
【フラット35】地域連携型(子育て支援)は、【フラット35】S(金利Aプラン)との併用で当初10年間0.5%の金利引き下げ、【フラット35】S(金利Bプラン)と併用すると、当初5年間0.5%、6~10年目は0.25%金利引き下げとなります。
さらに、【フラット35】S(金利Aプラン)または【フラット35】S(金利Bプラン)と維持保全型、地域連携型(子育て支援)の併用で当初10年間0.5%の金利引き下げとなります。
どういう人にとってメリット・デメリットがある?
金利引き下げはうれしい制度ですが、長期にわたって維持管理をしっかりと行えばそれだけ手間や費用がかかります。具体的にどういう人がメリット、デメリットを感じるか整理してみましょう。
たとえば、人生100年時代となり寿命が長くなる分、家も長期間快適に過ごせ、長持ちさせたいと思う人にとってはメリットを感じやすい制度です。長期間使用できる構造や設備の整った家で、子育て期、子どもが巣立ってからの老後を迎えるまでの生活、介護を見据えた高齢期など、家族や身体の状態に合わせた間取りや設備の変更を行いながら快適に暮らしたい人に向いています。
逆に住まいにお金をかけず、維持管理にもお金をかけたくない、または資金計画上住宅ローンの返済で目いっぱいで維持管理にかけるお金がないという人にとっては、メリットを感じにくいでしょう。
また、10年や20年などとりあえず暮らせる家を購入する人にとっては、維持管理の手間や費用を負担に感じるかもしれません。しかし、一定期間しか住まなくても、将来自宅を売却、または賃貸に出して住み替えを考える場合、維持保全型の対象となる住宅は、長期使用できる構造であることが認められ、長期間の維持保全の計画や計画に基づく点検や修繕の記録が残る住宅です。将来中古住宅としても賃貸住宅としても、買主や借主にとって安心な住宅であり、その結果流通しやすい住宅と言えるでしょう。
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改正を踏まえ【フラット35】の利用を検討している人へのアドバイス・注意点
地球規模の温暖化が進む現在、省エネ性能が高い住宅を取得するだけでなく、住宅資材となる木材や金属など天然資源を大事に利用することが急務です。こうした状況から、今後は建てては壊すスクラップ&ビルドではなく、性能の高い住宅を計画的に維持保全しながら、長期間利用していくことがますます大切になってきます。
実際、2022年4月に続いて予定されている10月の【フラット35】改正では、住宅性能や長く住み続けるための管理・修繕への配慮などに応じたポイントの合計が多いほど、金利の引き下げ幅や引き下げ期間が拡大する内容となっています。
こうした中で、4月以降【フラット35】維持保全型を利用する人は、高性能の家を適正に維持管理していることを証明できるため、安心して住み続けられるだけでなく、将来中古住宅としても評価が下がりにくく、売りやすい家を取得できると言えます。また、一定の減税や補助金、金利優遇を受けられるのもメリットです。
しかし、その分計画通りに修繕やリフォームを行わなければなりません。長期優良住宅の場合、30年以上の維持保全計画と10年以内の一定の点検、点検を踏まえた調査や修繕を行い、劣化に応じた計画内容の見直しと記録の作成と保存なども必要になります。
そのため、購入時には住宅ローンの返済計画だけでなく、修繕やリフォーム費用も考慮した資金計画が大切になります。せっかく質の高い住宅を購入したのに、将来予算が取れず修繕できなかったということがないように、購入前にしっかりと資金計画を立てましょう。