1年間に受け取った給与や支払った税金の情報が記載された「給与所得の源泉徴収票」。確定申告にも欠かせないものですが、だんだん利用しやすくなってきています。何が便利になったのか、そもそも源泉徴収票はどんなものなのか、確認しておきましょう。
給与所得の源泉徴収票とは
「源泉徴収票」をじっくり見たことがなく、何が記載されているのかよくわからない人もいるかもしれませんね。まずは、「給与所得の源泉徴収票」とは何かを確認しておきましょう。
従業員ごとに作成される「給与所得の源泉徴収票」には、1年間(1月1日~12月31日・退職の際には退職時まで)に得られた給与収入と、源泉徴収された所得税などの金額が記載されています。社会保険料控除や生命保険料控除、配偶者控除等の所得控除についての情報や金額も記載されています。
給与所得の源泉徴収票は、年末調整の計算後に発行されるほか、従業員の退職時には1月1日〜退職時点までの給与に基づいた源泉徴収票が発行されます。また、従業員が収入証明書として源泉徴収票を必要とした場合(ローンの借入申し込み、保育所等の入園申し込みなど)にも発行されます。
源泉徴収票は従業員が受け取る分だけでなく、税務署にも1部提出されます。市区町村宛てには源泉徴収票とほぼ同内容の「給与支払報告書」が2部提出されます。
スマートフォンで源泉徴収票を撮影すると自動入力されるように
このように、給与所得の源泉徴収票には、1年間の収入や差し引かれた税金(源泉所得税や復興特別所得税)、所得控除の合計額などが書かれています。年末調整を受けた会社員は所得税の確定申告をする必要はありませんが、確定申告をしなければ受けられない所得控除(医療費控除や住宅ローン控除を受ける場合の1年目など)もあり、そのために確定申告をする際には、源泉徴収票に書かれた情報が必要になります。
したがって、確定申告の際には、源泉徴収票記載の数字を該当欄に書き込み、さらに源泉徴収票のそのもの(紙)を申告書に添えて提出することが従来必要とされてきたのですが、最近は源泉徴収票をだんだん取り扱いやすくなってきています。
まず、源泉徴収票を紙でなく、電磁的方法(電子メールや社内LAN等を活用した方法)で提供されることも認められるようになりました。2006年度税制改正により、給与所得の源泉徴収票の交付に関する規定が改正され、2007年1月1日以後に交付する給与所得の源泉徴収票等については、一定の要件の下で、書面による交付に代えて、電磁的方法により提供(電子交付)することができるとされたのです。
その後2019年4月以降の確定申告では、納税者の利便性向上を図る観点から、源泉徴収票の確定申告書への添付が不要になりました。
ただし、源泉徴収票等の内容を確定申告書に記載することには変わりないので、紙で、あるいは画面上で源泉徴収票を確認する必要はあります。
さらに、2021年分の確定申告(2022年1月~)からは、スマートフォンのカメラで「給与所得の源泉徴収票」を撮影することで、その記載内容を直接入力しなくても、確定申告書等作成コーナーの該当項目に自動入力することができるようになりました(スマホ申告の場合)。
源泉徴収票から該当項目の数字を拾いあげて転記する手間がなく、入力ミスも防げるので便利な機能ですね。きちんと読み取れるのかが、不安な人もいると思いますが、読み取り後、スマートフォンの画面上で入力した内容が確認でき、もし間違いがあれば修正できます。
詳しい利用方法は、YouTubeの国税庁動画チャンネルで確認することができます。
このように、確定申告における源泉徴収票の取り扱いの変更で、納税者の負担はだんだん軽くなってきています。
とはいえ、たとえば、スマートフォンのカメラを利用した自動入力は、スマホ申告の場合に限られます。手書きで、あるいはパソコンで申告書を作成する場合には自動入力は利用できないので、源泉徴収票に書かれた数字がどんなものか、読み取れるようになっておくと、申告書作成もスムーズに。また、スマートフォンのカメラを利用して自動入力した場合でも、正しい数値が入力されているかを確認するために、源泉徴収票を読み取る作業は必要になります。
ここで最後に、源泉徴収票に書かれている項目の見方や内容を簡単にチェックしておきましょう。
源泉徴収票の見方
給与所得の源泉徴収票は以下のようなものです。最上段には支払者(会社)や源泉徴収票の交付を受ける従業員の情報が書かれており、次の段に、収入や税金、所得控除に関する情報などが記載されています。
(1)支払金額
支払金額は、給与、残業代、ボーナス(賞与)、各種手当を含めた額面の給料の総額、いわゆる税込みの年収です。
(2)給与所得控除後の金額
給与収入から、給与所得控除額を差し引いた金額(=給与所得)が記載されています。給与所得控除とは、給与収入に対する必要経費とみなされるもので、給与収入の額に応じて決められています。
収入が給与だけの場合には、この「給与所得控除後の金額」から下記(3)の所得控除の合計額を差し引いた金額に税率を掛けて、所得税が計算されます。
(3)所得控除の額の合計額
所得税を計算する際には、税率を掛ける前に、社会保険料控除や配偶者控除、扶養控除などの「所得控除」を所得から差し引くことができます。この欄には、毎月の給与から差し引かれてきた厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料等の金額、基礎控除や配偶者控除、生命保険料控除などの合計額が記載されています。
源泉徴収票の中ほどより下部には、配偶者の有無や扶養家族の人数、社会保険料等の金額や生命保険料控除の額など、その内訳が記載されています。
(4)源泉徴収税額
毎月の給与から源泉徴収されてきた、1年分の所得税と復興特別所得税の合計額が記載されています。
たとえば、確定申告をして医療費控除の適用を受けると、所得控除の額が増えて所得額が少なくなり、計算される所得税額が少なくなります。すると、ここに記載されている源泉徴収税額と確定申告で計算された所得税額の差額が、還付されることになるわけです。
まとめ
源泉徴収票は、大概、年に1度しか目にしない書類なので見慣れないかもしれませんが、どんなものが書かれているのか理解していれば、数字のチェックもそれほど難しいものではないでしょう。
確定申告が必要な年、収入証明が必要なときなどに、源泉徴収票の内容を確かめ、そのとき利用できる便利な「取り扱い」についてもチェックされるとよいでしょう。