この先、出産や、子どもが保育園への入園を控えている人にとって、今住んでいる街や、住みたいと思っている市町村の待機児童数は気になるものですよね。子育て世代に人気の神奈川県では、待機児童の状況はどうなっているのでしょうか。神奈川県の保育環境の実態を、保留児童の数や市町村別の待機児童数などにも着目しながら解説します。
待機児童数が過去最少を更新
神奈川県では、2010年から毎年保育所等の利用申し込み数が増加し続けていることから、多くの児童を受け入れられるよう保育所などの数を増やしています。神奈川県の発表資料によると、2021年4月1日現在の待機児童数は306人で、前年に比べて190人減少しました。
2010年には1,003カ所だった県内の保育所等の数は、2015年から認可保育所以外の施設(認定こども園・地域型保育事業など)を統計に入れるようになったこともあり、2021年には2,633カ所に増加。定員数も17万3,716人と、2010年の9万3,686人から大幅に増えました。ただ、これだけ保育所等の整備を続けていても、まだ利用者の需要のほうが上回っている状況です。
減少傾向にあるものの、待機児童よりもはるかに多い「保留児童」
神奈川県の待機児童の306人中、3歳未満は271人で、90%近くという高い割合を占めています(※)。その背景として、低年齢児の利用申し込み率が上昇していることが挙げられます。3歳未満の児童の受け入れ体制が整っていない状況が、待機児童の解消を妨げる要因となっていると考えられるのです。
※「保育所等利用申込・入所待機状況」:令和3年4月1日現在
なお、神奈川県の平均年齢は、全国の平均年齢に比べて若い46.17歳。65歳以上の人口比率も全国の28.5%に比べて低い25.4%(※)。これらの数字から、神奈川県は全国と比較して若い世帯が多い傾向があることがわかり、それに伴い3歳未満の児童の預かりに対するニーズも他県より高くなっていると推測できます。
※「神奈川県年齢別人口統計調査結果」:2020年1月1日現在
では、神奈川県の3歳未満の児童数はどれだけ多いのでしょうか? 「令和2年(2020年)人口動態統計(確定数)」によると、神奈川県の出生数は全国で3番目に多く、東京都、大阪府に次いで6万865人。区市町村別に見ても、横浜市が全国で2番目、川崎市が全国で6番目に多い数字でした。
また、待機児童数と併せて知っておきたいのが「保留児童数」です。保留児童数とは、保育所等への利用申し込みをしているものの利用できていない児童の数のことで、待機児童に加えて、幼稚園の預かり保育や認可外保育施設、ベビーシッターなどの利用者、親が休職中や育休取得中の子どもなどの数を合計したものです。たとえば、認可保育園に落ちてしまい、やむなくベビーシッターを雇って働く家庭や、育休を延長している家庭などの場合は、待機児童には含まれていません。そのため、保育園への入りやすさを考えるときには、保留児童数も確認しておくと良いでしょう。2021年4月1日現在、保留児童数は7,687人で、前年の9,184人から1,500人近く減少しているものの、待機児童数よりはるかに多い数字となっています。
神奈川県内で待機児童数が多い市区町村は?
では、神奈川県内の市やエリアごとの待機児童数にはどういった傾向があるのでしょうか? 待機児童数が多い市をランキング形式で見てみましょう。
待機児童者数最多は座間市、保留児童数最多は横浜市
神奈川県で最も待機児童が多いのは座間市、次いで鎌倉市、伊勢原市でした。
また、保留児童が多かった市町村は、次の通りです。
表を見ると、保留児童が圧倒的に多いのは2,842人の横浜市です。次いで川崎市も1,846人と多く、県内のほかの市町村と比べると、この2つの市では希望しても子どもを認可保育園に通わせられない可能性が高いかもしれません。
待機児童ゼロの市町村は15市町村に増加。大和市は6年間待機児童ゼロを達成
神奈川県内でも待機児童ゼロの市町村は15市町村あり、三浦市や大和市、南足柄市などがこれに当たります。ただ、これらの中には、人口減少や高齢者層の増加が見られる地域と重なっているところが多くあります。子育て世帯が少ないために、待機児童ゼロを実現しやすい環境にあるという可能性も考えられます。
そんな中、長年待機児童ゼロを誇りながら、若い世帯の人口が少なくない市があります。他エリアと比較して出生率が高い(※)という特徴を持つ大和市です。県内で子育てをしやすい市町村を探す際には、注目してみてもよいでしょう。
※平成31年(令和元)神奈川県衛生統計年報
横浜市に集中する未就学児数が、待機児童数に影響?
0~2歳の人口を神奈川県内のエリアで比較したとき、下記のような差が見られます。
このデータからもわかるように、神奈川県内の待機児童の9割近くを占める3歳未満の幼児が横浜市に集中していることが、待機児童数や保留児童数に影響している一因と考えられます。
待機児童の多さにも関わらず横浜市が人気! 神奈川県の子育ての実態とは
働きながら子育てをするなら、待機児童の多い市はなるべく避けたいと思う人は多いでしょう。しかし、子育てがしやすい場所の条件として求められることは、「子どもの預けやすさ」だけではありません。実際に子育て世代に選ばれているエリアには、どういった特徴があるのでしょうか?
人気エリアが集中する横浜市。子育てしやすい環境として評価されるポイントとは?
保留児童数が圧倒的に多いにも関わらず、神奈川県内では子育てに適したエリアとして評価が高い横浜市。人気の理由として考えられるのは、質の高い教育環境が期待できる点です。
特に青葉区は、私立中学校への進学率が最も高いエリア(※)として注目されています。進学塾が多いだけでなく、スポーツや音楽などの習い事をするための教室の選択肢も多彩なので、子どもの将来をさまざまな形でサポートしやすい環境にあると言えるでしょう。
※「平成27年度市立小学校等卒業予定者の進路状況調査」
なお、青葉区の「たまプラーザ」は、2021年に引き続き、「ARUHI presents 本当に住みやすい街大賞2022」で第6位を受賞しています。子育てに限らない「住みやすさ」にも期待できる街として注目されています。
また、大規模な公園をはじめ、のびのびとした子育てを実現できる環境が整った都筑区も若い世帯から人気です。ベビーカーの通りやすい街づくりなど、設計に対する高い評価を得ている点も、このエリアの特徴と言えるでしょう。
待機児童数は多くても、子育てがしやすい条件に恵まれている―。こういった環境が、横浜市に3歳未満の子どもがいる世帯が集中しやすい理由の1つとして考えられます。
さらに、子育て世帯が集中するエリアに共通した特徴として、東京へのアクセスがよいという点が挙げられます。都内に通勤しやすい場所にありながら、都心より家賃を抑えられ、理想的な環境での子育ても期待できるエリアとして、魅力を感じる人は少なくないのでしょう。
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コロナ禍での移住に伴い児童数が増える可能性も?
なお、財務省関東財務局が2021年5月に発表した報告書によると、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年に東京都から神奈川県へ転入した人の数は、前年度に比べて7%増加しています。同局が、コロナ禍における管内の人口移動の状況を分析したところ、コロナ禍を契機に東京都心へのアクセスを重視した「職住近接」の考え方から、広い住居や部屋などを備えた郊外に住む「余裕を持った生活」といった考え方への変化が見られたそうです。葉山町や真鶴町、湯河原町など、移住促進に向けた独自の取り組みを進める自治体への注目度が高まっていることからも、今後神奈川県に移住するファミリー層が増え、それに伴い児童数がさらに増えることも考えられます。
魅力的な環境とともに高まる保育ニーズへの県の対応
子育てしやすいさまざまな環境が整い、東京へアクセスしやすいことでも人気の神奈川県。待機児童数が多い状態が続いてはいますが、県ではこうした現状に対して、保育所などの整備をさらに進めることでの定員の拡充や、幼稚園での預かり保育の支援、保育士育成環境の強化といった取り組みを通じて、保育ニーズの受け皿のより一層の確保に努めています。こうした動きが実を結び、保育所などの整備が拡充されれば、神奈川県は子育て世代にとってさらに魅力ある県となるでしょう。
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(最終更新日:2024.04.19)